三
こじんまりとしたアパートの一室が見える。置いてある家具や小物の色合いから、女性の部屋であろうことが分かる。
――なぁ、今月ピンチやねん。
男の声が聞こえる。金髪に近い色の髪を綺麗にセットしたスーツ姿の男だ。
――でも、一昨日お金渡したところやん。
今度は女の声だ。下着の上から薄手のキャミソールを羽織っているだけのセクシーな姿だ。
――しゃーないやろ。ええもん身に付けんとバカにされる世界やねんから。
そう言って男は女を抱き寄せる。
――おれがナンバーワンになったら、お前も鼻が高いやろ。
男が女の頬にキスをする。
――もう、しゃーないなぁ。
そう言って女はブランド物のバッグから財布を取り出し、札を数枚男に手渡す。
――ありがとう! やっぱりおれにはアカネしかおらんわ。
そう言って男は再度口づけをし、笑顔で部屋を後にした。
場面が切り替わる。
――アカネちゃん、いくつになったんやった?
オールバックに口髭を付けた
――来月で二十八ですね。
綺麗に着飾った女が答える。開店前なのだろうか、周りに客の姿はなかった。
――そうかぁ。もうそんなになるか。……そろそろ、次の道でも探したらどうや?
男が女に顔も向けずに、口髭をさすりながらそう言った。
――それって……。どういう意味ですか?
女の声は少し震えている。その答えを知りつつも、受け入れられないといった様子だ。
――若くていい子も最近ようさん入ってきたしなぁ。アカネちゃん、売上も落ちてるやろ?
女は俯き、唇を噛みしめている。
また、場面が切り替わる。
――ほんなら、もう今までみたいに金は出せんってこと?
金髪の男がしゃべっている。その顔は険しい。
――だ、大丈夫。別のお店紹介してもらってちゃんとするから。
女が取り繕うように答える。
――そや。ゲンジさんとこの店が人足らんって言うてたんやった。アカネ、行ってくれん?
――え、でも。ゲンジさんのお店って……。
――今までよりちょっとだけ大変かもしれへんけど、今まで以上に稼ぐことは出来
るやろ。……おれがナンバーワン取るまでの辛抱や。そうなったら、アカネにもいい思いさせたるから。な?
――う、うん。
水の音が聞こえる。小さなバスタブの中に水が溜まっている。
女は湯船に
――あ、あかん!
明人は心の中でそう叫ぶが、女の耳には届くはずもない。この先に起こる不穏な予感により明人の鼓動が早くなる。
女はゆっくりとした動作でカミソリを自身の左手首に当てた。そこで一瞬の間が空いたかと思うと、女は下唇を噛みしめ右手を一気に引き抜いた。
赤というよりは紅といったほうが正しいような鮮血が吹き出し、バスタブ内に落ちたそれらは、揺らめきながら水の色を染め上げた。
未だに血の吹き出す左手を女はバスタブに
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