第二部第三話part8『干しアワビ』

日下:レインバス本社ビル2F パスタ屋(お昼)


どうも。

安心と信頼と実績のS、日下ルリです。

今、我らがGAM副代表、秘書課の指野美咲さんと二人で、

いつものパスタ屋でランチしています。


指野さん、何だかやつれてるみたい。相当ライブの人集めに難儀してるみたいね。

こんな年の瀬にセミプロのライブに来てくれる酔狂な人なんているわけない。

只でさえ物入りなのに。網浜蘭、全くとんでもない大馬鹿女子高生ね。


「指野さん、あたしも微力ながら手伝いますよ」

「ホント、ありがとう。日下ちゃん、助かるわ。」

「GAMの知り合い達やフットサルチームの選手達を恫喝して、強引に参加させてみせます」

「恫喝なんて、馬鹿な真似は止めなさい。そんな方法で連れてきたって、為にならないでしょう。あの娘のところには信頼できる人を送り込まないといけないんだから」

「心配しなくても、3Uに送り込む人員です。それならいいでしょう」

「まあ・・・でも、誘い方にはくれぐれも優しくね。恫喝も脅迫も駄目よ? わかった?」

「わかりました。お願いしてみます」


 あたし達が話しているところに、店内に話題の牧野玉藻がやってきた。やれやれ。


「美咲ちゃ~~~~~~~~~~ん」


 牧野さんは駆け込んできて、指野さんに抱きつく。ったく、イチャイチャしやがって・・・。


「美咲ちゃん、ありがとう。ほんとに助かるよ~~~」

「いいのよ、玉藻。あなたの為だもの。ご飯食べなさい、奢るから」

「有難う、最近金欠で、困ってたんだよ~~」


 牧野さんが遠慮なく高めのパスタを店員に注文した。


「マリモ、あんた少しは遠慮ってものをしなさいよね」

「マリモじゃありません、玉藻ですっ」

「そう、リンゴ」

「だから玉藻ですって。なんなんですかっまりもりんごって、しりとりにすらなってないじゃないですか!」

「どうでもいいでしょっそんなこと。そんなことより、あんた、指野さんに感謝しなさいよ。ただ今絶賛干しアワビ状態だっていうのに、あんたの為に奔走してくれてるんだからね!」

「(干しアワビって・・・どういう意味?と聞きたいが、必死に堪える指野)」

「大体あんた指野さんを甘く見すぎよ! 指野さんはホントに凄いんだから、森羅さんばっかり言ってないで、少しは指野さんを尊敬しなさいよねっ!!」

「わっわかってますよ、そんなこと・・・でも、私にとって、森羅さんは命の次に大切な人だから・・・」

「指野さんだって今は同じでしょうがっこの馬鹿チン!!」

「ま、まあまあルリちゃん。あんまり玉藻を怒らないであげて。彼女が可愛そうじゃない。この子にとって、森羅さんは本当に特別な存在なのよ。それを判ってあげないと」

「そうは言いますけど指野さん、あたしだって我慢の限界ですよ。森羅さんに会いた~い、森羅さんに会いた~い(牧野の口マネ)、口を開けばそればっかり、流石に腹が立ってきますねっ」

「うう・・・」

「玉藻、気にしないで。いいのよ。私は大丈夫だから。早く森羅さん、見つかるといいわね」

「うんっありがとう、美咲ちゃん」

「全く、そうやって甘やかすから、付け上がるんですよ~」


 あたしは腕組みをして、指野さんに抗議したけど、既に二人の世界に入っている。

 何よ、もう。これがあたしがお邪魔虫じゃないっ不快だわっ。


蘭:晴嵐学園高等学校高等部 理事長室 昼


 蘭です。ただ今お爺ちゃんのところに来ています。以前言っていた仕事の件です。

 話は晴嵐学園高等学校の引きこもり、上杉純夜さんの事でした。


「御曹司?!」

「そう、彼は、レインバスの親会社、上杉商事の会長の孫で、現社長の息子なんだよ」

「へーーーそうだったんだーーーっ」

「とにかく凄い金持ちだからな。ウチとしては学校を辞めさせないように言われているんだよ」

「ふ~ん、お爺ちゃんも大変だね~」

「お前、あんまり驚いてないな・・・」

「お金ならウチだってあるしね。それに上杉純夜君なら、この前会ったよ」

「なんだと?!」

「というか、今、外に出歩いて、今度やるライブに出演する」

「なんと!!」

「それで、仕事ってのは?」

「いや、もういい。半分は片付いたようなものだ」

「ん?」

「上杉純夜を引きこもりから解消させたい、というものだ」

「それなら仕事完了だね」

「まだだぞ! 学校に来させるという大目標がある。蘭よ、頼む。お前の力で何とか彼を学校に通わせてくれ」

「わかったよ、おじいちゃん。やってみる」

「頼んだぞ、蘭」

「うん、任せてっ」


 ふむ・・・上杉純夜か・・・あの引きこもり、ミュージシャン志望みたいですね。しかし御曹司とは・・・。


蘭:教室内 昼


 蘭です。ちょっと遅くなりましたが、お昼ご飯を食べることにします。

 いつものように久原、とくっぺ、夢乃の四人でご飯を食べていました。


「蘭様、ライブの人集め、順調ですわよ」

「本当ですか、とくっぺさん。感謝します」

「まあ、ぽっ。ジュリエッタのライブの設営準備も私に任せてくださいませ。私には地下アイドルとしての経験がありますからね」

「うむ、頼みましたよ、とくっぺ」

「ああ・・・これでおタマ様に感謝されて、そして二人は恋に落ちて・・・ぐふふ」


 このストーカー・・・、よからぬ事を考えなければいいんですけど。

 まあ、今は私も忙しいです。利用できる物は何でも利用しましょう。


「ライブって、何だ?」

「久原には関係のない話です」

「何だよそれ、教えろよ~」

「教えません」

「私にも教えて、教えて、先輩~~」


 久原と夢乃が食事中の私の体を掴んで揺すってきます。全くうっとうしい・・・・。


 と、そこに私のスマホにLINEの通知が来ました。犬伏さんからです。

 二人を押しのけて見て見ると、どうやら今日、東矢は内勤だそうです。


 ようし・・・善は急げ。動くなら今日しか無い。


 東矢宗継、追跡開始!

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