第二部第三話part5『虚偽報告』

牧野:音楽スタジオ内 夜 


 牧野です。今、上杉君達とライブの特訓をしています。

 そこに蘭がやって来ました。

 ひょっとして、吉報かな?


「蘭、おかえり!! 和歌山、どうだった? 何か森羅さんに関する情報は手に入った??」

「いえ・・それが、全くの無駄足で、収穫は一切ありませんでした。」

「そんな・・・そっか・・・」

「今回の調査費用はこちらで負担いたしますので、請求はしません。それでいいでしょうか?」


 なんだか蘭、少し落ち込んだ表情をしている。


「それは駄目、お金はちゃんと払うよ、ホラ。」


 私はお財布から下ろしてきたお金を蘭の掌に握らせました。


「牧野さん・・・・」

「ありがとう、蘭。助かったよ。今後も調査よろしくね」

「実は、それが、今後は私の代わりに姉が全面的に調査することになりました・・・・」

「え~~~ホント?! やったーー蘭なんかよりもアミリンの方が頼りになるもんね~~~」

「(悔しそうに歯軋りする蘭)」


 それだけ言って、蘭は再びスタジオを出て行こうとしました。

 ところが振り返ってきて、一つだけ私に尋ねてきたのです。


「ところで牧野さん。光定とかいう苗字はどこで閃いたんですか?」

「閃いたんじゃない。教えてもらったんだ」

「教えてもらった? 誰にです?」

「東矢さん」

「・・・・はい?」


犬伏:長畑の家321号室 犬伏の部屋内 夜


 犬伏です。

 ようやく仕事が終わって自室に帰ってくると、蘭ちゃんがテーブルで勉強をしていました。


「あっ犬伏さん。お帰りなさいませ」

「ただいま、蘭ちゃん。勉強してるの? 偉いね~」

「まあこれでも来年は私も受験生ですからね。」

「偉いね~仕事の方は順調?」

「それが・・・」


 蘭ちゃんが珍しく落ち込んだ表情を見せました。どうしたんだろう?


「蘭ちゃん。どしたの? 何かあった?」

「いえ、実は・・・お姉ちゃんに仕事を取り上げられてしまって・・・」

「うぇ~~なんで~~~!?」

「分かりません。私にはもう関わるなと、その一点張りで」

「酷いよそんなの! 地方までわざわざ行ってきたんでしょう?!。蘭ちゃんの努力が、全部無駄になっちゃうじゃんかっ」 

「仕方がありません。お姉ちゃんの言う事は絶対ですから・・・」

「許せない! あたしだったら歯向かっちゃうよっ」

「犬伏さん・・・」

「依頼人から請け負った大事な仕事でしょう? 自分が受けた仕事は、もう自分の物なんだから、責任持って最後まで追いなよっ」

「そうしたいのは山々ですが・・・」

「何よ、蘭ちゃんっ。らしくないぞ!」

「・・・お姉ちゃんは、いつもそうです。私はお姉ちゃんの為にこんなに頑張ってるのに、

 褒めてくれたことなんて、一度もありません。所詮私はお姉ちゃんにとっては只の都合のいい存在なんです・・・」

「蘭ちゃん・・・」


 あたしはたまらず蘭ちゃんを抱きしめた。


「ちょっ犬伏さん」

「蘭ちゃん、悲しいね。いいよ、泣きたいでしょ? 今はあたしに甘えなよ! 

 あたしがアミリンの分も蘭ちゃんを褒めてあげるから、気にせず仕事を続けなよ」

「犬伏さん・・・」


 と、そこへアミリンがあたしの部屋に怖い顔して入ってきました。


「どうも、犬伏さん。愚昧がまたまたお世話になりました。さあ、蘭。帰るよ」

「ちょっと、アミリン! どういうことなの?」

「何がですか?」

「蘭ちゃんから、仕事を奪ったことだよっ」

「申し訳ないですが、それは犬伏さんには関係のないことです」 

「アミリンは、蘭ちゃんが、可愛くないの?!」

「甘やかすと付けあがるから厳しく育ててるんですっ家族の教育に口を挟まないで下さいっ」

「アミリン今忙しいんでしょ? 森羅さんとかいう人の捜索ぐらい、蘭ちゃんに任せてあげてもいいじゃんか~」

「凜がやると決めたから、凜がやるんです!!」


 アミリンが語気を強めてあたしに言って来た。


「なっなによ、そんなに怒鳴って・・どしたの、アミリン、らしくないよ?」

「すみません、ちょっと最近、色々ありまして・・・」

「色々って何? あたしでよかったら話、聞くよ?」

「いいえ、結構です。愚昧は連れて帰ります。お世話になりました」

「お姉ちゃん・・・」

「ほら行くよ、蘭。0.1秒で支度しなっ!」

「無茶言わないでよ~」


 アミリンは蘭ちゃんの腕を引っ張って部屋を出て行ってしまいました・・・。


「蘭ちゃん・・・可愛そう・・・」

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