第六話Part3『名探偵の妹はバタフライっぷりも完璧』

網浜蘭:私立晴嵐学園高等学校 2-A組 教室内(夕刻)


どうも、網浜蘭です。ただ今、私は久原流と笠鷺夢乃と一緒にとくっぺのオタクトークに付き合わされています。

「それで、それでそのときのおタマ様が本当にかっこよかったんですよ」

「ほうほう、それでオチは?」

「ありませんっ」

私はとくっぺの右頬を軽く叩きました。

「いやん、痛い」

「いやん、痛いじゃありませんよ。中身もオチも無い会話に付き合うほど私は暇・・・」


 今日は探偵の仕事はまだ来ていません。

「蘭は暇だろ」

「うるさいですよ、久原さん」

「暇なら今から近くの温水プールに行きましょうよ」


唐突に夢乃がとんでもない発言をしてきました。

私の学校のある場所の近くには年中泳げる温水プール場があるのです。



「お、いいね、それ。4人で行こう」

「ちょっと、久原さん」

「わあ素敵です。楽しみですね」

「水着なんてありませんよ」

「貸してくれますよ」

「なんですって、それなら手ぶらで行けますよ、行きましょうよ、蘭様」

「うぬぬ、しかし・・・」

「決まり、行こうぜ」


久原の鶴の一声で温水プール行きが決定しました。ああ、面倒くさい。


網浜蘭:温水プール屋内 (夕刻)


蘭です。受付で水着を借り、4人とも着替えが完了しました。

とくっぺと夢乃はビキニ、私と久原はタンキニビキニをチョイスしました。

室内は人で溢れています。繁盛してますね。


そして温水プール場に入ると、

「夢乃、いっきまーす!」

浮き輪を持った夢乃が全力でプールに飛び込んでいきました。

「私も、いっきまーす、ですわーー!」


とくっぺも豪快にプールに飛び込んでいきます。

私と久原の二人は少し身構えていました。


「ったく、あの二人はよくはしゃぐな」

「そうですね、恥ずかしいかぎりです」

「じゃ、俺達も入ろうぜ」

「そうですね」


と、久原が私の手を取って、引っ張るようにして走り始めました。

「あわわ、ちょっと、久原、手を引っ張らないで」

「いいじゃねーか、そーれ」

「うわーっ」


私は温水プール内に久原の手によって豪快にぶち込まれました。

もうこうなったら泳ぐしかない。


私は全力でバタフライをしました。


「きゃー蘭様、素敵っ!」

「いいなあ、あたしは泳げないからな~」

「それなら今日は俺が泳げるように特訓してやるよ」

「本当ですか、嬉しい!」


とくっぺ達は夢乃が泳げるようにクロールの訓練を始めました。


私はひとしきりバタフライで泳ぐと、プールから出ました。

ひさしぶりに全力で泳いだので、ちょっと疲れが出てしまいました。


近くにあるビーチチェアに座ると、気持ちよくなって眠ってしまいました。

たまにはこういう日があってもいいですよね・・・。


目を覚ますと、久原達三人が私を指差して笑っています。

一体どういうことでしょう。


まさか。


私はビーチチェアから跳ね起きるとプールの水面越しに顔を覗き込みました。

なんと顔に大量の落書きをされてるではありました。


「こらーーーー! あなた達!!」


「うわあ~来たぞ、逃げろ~~」


私はプールに飛び込んだ三人をバタフライで全力で追い立てました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る