第5話Part2 『名探偵の妹は手先の器用さも完璧』

網浜:網浜の実家、リビング


アミリンでっす。さっそく今日は妹に頼みごとをしに来ました。

その頼みごととは他でもない牧野さんのバレッタの修繕です。

凜の妹は趣味で探偵をやっています。まだ17歳ですがそこそこ腕がたつ娘です。

「お姉ちゃん、お帰りっ」

凜の背後から妹の蘭が抱きついてきました。凜は振り返り、妹の喉を撫でてあげました。

妹は嬉しそうにしています。今日は機嫌がいいみたい。

「ねえお姉ちゃん、今年のハロウィンは二人で仮装して渋谷をねり歩こうよ」

「ああ、いいね。それ」

「はい、決まり。じゃあメモ帳の予定に書いておくね」

「あの、蘭。今日はお願いがあるんだけど、聞いてくれない?」

「いいよ、何?」


 凜は蘭に装飾の欠けたバレッタをみせました。


「うわ、キモ。こんなのつけてる人のセンスが知れないね」

「これ、お姉ちゃんのお友達の物なんだ」

「友達? お姉ちゃん。誰でも彼でも友達になっちゃ駄目だよ」

「はは、それより、これ、直せないかな」


 凜がそう言うと、蘭はルーペを取り出し髪留めを眺め始めました。


「うーん・・・大丈夫、直せるよ」

「ホント、良かった」

「でもこれ直して本人は喜ぶの? すっごく悪趣味だよ、これ」

「それはね、持ち主のお母さんが作ってくれた形見なんだ」

「形見か・・。随分な物を残していったね、その人のお母さん」

「まあ、ね。どれぐらいで出来そう?」

「似たような部品を用意しないといけないけど、一週間もあれば修繕できるよ」

「本当、じゃあ頼むね、蘭」

「うん。それよりその友達ってどんな人?」


 来た。蘭の嫉妬攻撃。蘭は凜のことが好きすぎて、凜の人間関係を余すことなく管理したがるんです。


「牧野さんっていって、株式会社レインバスで働いてるんだ。まだ18歳なんだよ」

「18歳、私と一つしか違わないじゃん」

「そうなんだ。偉いよね。その年で働くなんて」

「家が貧乏で大学に行けなかったんだね、可愛そうに」

「彼女の実家は寿司屋だよ。貧乏じゃないし、大学行かないのは本人の意思」

「ふーん。ま、このバレッタは預かっておくよ」

「宜しくねー」

「うい」


 蘭はバレッタを持ってリビングを去っていきました。

 無事に直るといいんだけど・・・。


蘭:自室


 蘭です。ただ今自室の机に座り、バレッタをどう修繕しようか考えています。

 それにしても牧野さんという女、こんなけったいなバレッタを身に付けているのですから、

 きっと碌な人間じゃないでしょう。こんなのと関わってトラブルに巻き込まれやしないか。

 お姉ちゃんが心配です。

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