第五話『ハロウィンなんて大嫌い!』Part1『東矢発狂』

牧野:溝の口駅近辺 (夜)


牧野です。

第5話が始まったみたいですが・・・


 いきなりすいません。


 私、今、怒ってるんです!


駅の方をじーっと見つめていますが、

長畑さんは今日もやってこないからです!


私はタマロックスケジュール完全版のカレンダーを取り出して、

赤ペンで日付に×を付けました。

脇に「煉→後日屋上」と書き足しておきました。


 ]「もう! 一体何なの! 

ぜひ行くから~~

スケジュール~教えてよ~(長畑の声マネ)とか、

自分から言ってきたくせに!!

この9月一回も、一回も、あの人は来なかった! 

もう!! ちょっと期待した私、バカみたいじゃない!」



私はすぐ近くのペットボトルを蹴っ飛ばしました。


「あぃやどよ!」


 

ペットボトルは、怖い感じのお兄さん2名の内の

金髪の人に当たってしまいました。


 

「いって~(頭を押えて顔をしかめる)」

「てめえ何しやがる!」

「すいません。大丈夫ですか」

「お、何この子、可愛い。髪長いね~、伸ばしてるの?」


わあー大変だあーどーしよータマ、ピンチー。


・・・。


「失礼しました! ごめんなさーーーい!!」



私は荷物を持って、全力でその場から立ち去りました。

ああ、もう、あれもこれも、全部長畑煉次朗のせいだ。


 

・・・呪ってやる・・・まずは、ワラ人形を用意して・・・。


・・・はっいけない。

私としたことが、なんて酷いことを考えてるんだろう。

学生時代のやんちゃなあの頃に戻ってしまった感じでした。



10代の、特に高校1年生時代の私は、大変な荒くれ者でしたから。

学校でも、悪い意味で知らぬ者無しの人間でした。

色々な過ちを犯してしまいました。主に音楽室で。 

私は放送部に入ったのですが、1週間で事実上の出入り禁止になりました。

酷いですよね? 私はただ、自分の好きな音楽をかけたかった、

そして学校中の皆と感動を共有したかった。ただそれだけだったのに・・・。


東京に来てからは、昔のことばかり思い出してしまいます。

楽しかったことも、悲しかったこと、森羅さんのこと、


そして、あの人のこと・・。


・・・本当は、わかってるのに。長畑さんがここに来られない理由。

全力で逃げながらですが、今は必死に反省しています



犬伏:長畑の家321号室 通路 (夜)


犬伏でっす。

第5話が始まったみたいですね。

さっそく今回はサービスカットですよ! あたしの・・・湯上り姿を見せちゃいます!

(お風呂のシーンはカットされました。残念。)


「・・・ふう、お風呂気持ちよかった~」 


やっぱり湯船が一番落ち着くっちゃね。

背伸びをしたらお腹の音が鳴りました。

「やだあたしったら、恥ずかしい。

・・・ちょっとだけ、軽いものでも食べようかな~」


犬伏:長畑の家321号室 キッチン (夜)


再び犬伏です。


 冷蔵庫を漁ってます。


 おっヨーグルトかな?


 カップにヒガシヤって書いてあるぞ。


 

おそらく東矢(トウヤ)君のだろう。

でも、まあいいや。食べちゃえ、食べちゃえ。



犬伏:長畑の家321号室 リビング(夜)



三度犬伏です。

ソファーで体育座りをしながら、ヨーグルトを食べてます。


「やだこれ・・・超美味しい!!」


いっきに全部食べちゃいました。

だって美味しかったんだもん。


ん?


おやおや?

ランニングから帰ってきた東矢君が顔を青くして、

あたしを指さしてる。どうしたんだろう?


「なあに? 何かあったの?」


「お嬢さん・・・そのヨーグルト、

 まさか、全部食べてしまわれたんですか(震え声)」


「うん(食べ終わった容器を見せ付ける)」

「それ、その、あの・・・」


「美味しかったよ(幸せそうな笑みを浮かべて)」

「感想なんて聞いてねえよ(怒声)!」

「いきなりなによっ(驚く)」

「その、ヨーグルトはあ~そのヨーグルトはあ~」

「ああ、ごめんね。勝手に食べちゃって。


 「でもコンビニに行けば似たようなのいくらでも売ってるでしょ。買ってきてあげるから、それで我慢して(笑顔)」



「犬伏さぁん、それは違いまっすよ。

このヨーグルトはオンリーワンなのでございますよ。」


「オンリーワン?」


「ギリシャヨーグルトと言って、

街で売ってる奴とかとは、入ってる成分とか、

質とかが全然違うんですから。

これ食べると体、超元気になるの!

元気のなり方とか、もうミラクルよ!

俺の中ではノーベル賞もの! 世紀の大発明って」


「あ~~~っしまった。ドラマ予約し忘れちゃったぁ(悔しそうに頭を抱える)」

「人の話を途中で切るなよっこのアホンダラ!」

「聞いてるよ~」

「じゃあ俺が今何て言ったか、言ってみろよお」

「ヨーグルトは、美味い」

「そんなこと一言も言ってねえよ!」

「じゃあ何て言ってたのよ」


あっ。東矢君があたしからヨーグルトのカップを奪った。

すごいスピード。忍者? シュタッて音が聞こえた。



「(犬伏に背を向けて空のカップを天に掲げる)

俺の健康を支えてくれる、可憐な花のように咲くグルミちゃんが!

可愛い、可愛いグルミちゃんが・・・」


「ぐっグルミって・・・誰?」


「ギリシャで生まれて1ヶ月。

艱難辛苦を乗り越えて、出会いと別れを繰り返し、

エーゲ海から空輸され、いとしの東矢様に巡りあえたってのに、

彼女がここにたどり着くまでに負った心の傷も理解してない、

ただただその場限りの欲求を満たすためだけの、

馬鹿で鳥頭で単細胞の女に強引にパックを開かれて、

そして彼女は乱暴された!! 辱めを与えられたの!!

命まで奪われたのよ! 

きっと彼女はあの世で泣いているに違いないわ!! 

寒かったろう、辛かったろう、痛かったろう。

グルミの気持ちを想っただけで、俺、泣けてくる! 

もう、泣けてくるわよ・・・(嗚咽)」


「大げさだな。東矢君。

 話長いし、ちょっとカマっぽかったよ」


「誰がカマっぽいだ! 人を侮辱するな!」


「・・・チッ(舌打ち)」


「あっ舌打ちしたな。今、舌打ちしたな。

しかも俺にちょっと聞こえるように、

わざと大きめに舌打ちしたな。」


「(しらん顔でファッション誌を読み始める)」


「そういうことするんだ。

真希ちゃんって、そういうことしちゃう女の子なんだ。25歳の独身で、

リアルに悶々としていて」


「悶々となんてしてません!!」



「うるさい! 最近肌荒れが心配で、

自分より若い牧野さんとかに嫉妬とか覚え始めちゃって!

すでに片足突っ込んじゃった30歳の壁に怯え始めている悶々ガールが!

親からの結婚圧力も本格的に始まってきて。

色々言い訳が難しくなってきた年齢に差し掛かる、

現在絶賛自分探し中だが中身はお気楽東海道中膝栗毛! 

25歳の犬伏真希ちゃんは! 

そういうことしちゃう娘っ子だったんだ。へーーーー」


「・・・っるっさいなぁ、もう。

近所迷惑だから、台詞の練習は外でしてよ」


「俺の心を荒ぶらせた張本人が、

何を言わんや(犬伏に顔を近づける)!」


「わかった、わかったから。

ごめん、本当にごめん。でも東矢君だって悪いよ。

ちゃんとヨーグルトに名前書いてなかったじゃない」



「何言ってるのよ! 

ちゃんと堂々とヒガシヤのって書いてあるじゃないのよ!

しかも底面にもマジックで書いてあるじゃないの! 

本当に何言ってるのよ、全くもう!!」


「いや、それ、カップにはヒガシヤって書いてあるじゃん。

ウチにはヒガシヤさんなんていないじゃん(半笑い)」



「ヒガシヤは網浜とかいう女のせいで、

のあだ名になりつつあるだろうが! 

それにこれは煉ちゃんが

俺のために一生懸命書いてくれたものなの! 

俺が書くのを忘れちゃったから、

きっと代わりに書いておいてくれたんだよ!」


「・・・もう、本当にうるさいな。

ちょっとヨーグルト食べられたぐらいで、

グチグチ言わないでよ。ホントに女々しいんだから」


「だからこれは普通のヨーグルトじゃないって、

さっきも説明したでしょうが。お前さん、これまで一体何を聞いてたんだよ!!」


「じゃあ、もうどうすればいいわけ?」


「買ってきて」

「はあ?」


「今すぐギリシャに行って、ヨーグルト買ってきて!そして健康管理に勤しむ俺に渡してよっ」

「むっ無茶言わないでよ~、明日も仕事でしょうに」


「だったら今すぐネットショッピングで、

 お前がペロリンチョしたグルミと全く同じ物をポチれよ!」



「そっそれならいいよ」

あたしは机に置いてあったノートpcを立ち上げ検索サイトを開いた。


「どこのサイト」

「ギリシャヨーグルト販売します! 


と打てば、その検索エンジンなら出てくるはずだ」



「開いた。

 ・・・あらやだ、全部入荷未定になってる。」


「あぎゃらあばぐばああああああああああああああああ」

「ひえええ」


牧野:溝の口駅近辺 (夜)



牧野です。

ギターケースとキャリーバックを抱えて全力で走ってます。

あの男の人たち、まだ追いかけてくる。

しつこいな。もっと飛ばそうかな。


「こっちです」



「!」


脇道らしいところで女の子が手招きしてました。

私は彼女の言うとおりに脇道に入り、

男の人たちをやり過ごしました。


「おタマ様。危なかったですね」

「別に平気。もう慣れっこだから。それよりあなたは?」

「あたしのこと、覚えてないんですか? この間、

 洗足池公園で運命の再会を演出させていただいたじゃないですか」


「(思い出したように)

ああ、あのときの。私に握手を求めてきてくれた女の子」


「はい。あたし、崎山徳子って言います。

とくっぺって呼んでくださいね」


「はあ、じゃっじゃあ・・・とくっぺ(照れた感じで)」


「きゃあ! おタマ様にそんな風に呼ばれるなんて、

あたし、もう死んでもいいかも」

「あっあの、なんで私のこと・・・知ってるの?」


 彼女は酷くショックを受けた顔をして、

うなだれてしまいました。



「まさか・・・覚えていないんですか。あたしのこと」

「ごめんなさい。公園で会ったのは覚えてる」

「それよりも前に、あたし達は本当に運命のめぐり逢いをしましたよ」

「え? どこで」

「ひどい・・・所詮はおタマ様にとって、

とくっぺなんて、ただの出荷前のメス豚なんですね」

メス豚・・・・。

「まっまさか、ジュリエッタのお客さん?!」

「それもあります」

「まだ先があるの!?」

「ANITOですよ。ANITO。

 一緒にライブのステージに立ったじゃないですか」


ANITO・・・というのは、

私が高校3年生のときに兄、魚雅と組んだユニットです。

確か東京の池袋だったかな?のライブハウスでやりました。

単独ではなく、他にも沢山のミュージシャンがいた中で、

私達は中盤に登場したんですけど・・・。

「ANITOのライブで、とくっぺが一緒にいたの?」

「そもそもあれは、このとくっぺ主催のライブだったんです。

その特別ゲストがANITOさんだったんですよ」


「そっそうだったんだ。

ごめん。私、音楽以外はお兄ちゃんに任せっきりで、

細かいことは全然知らなかった」



「ううう・・(地面にへたり込む)」




犬伏:長畑の家321号室 リビング(夜)



犬伏です。

ピンチです。東矢君が発狂しております。

靴下の中に入ろうと必死になってます。


「入ってやるんだ、絶対に入ってやるんだ」

「ダメだって、無理だって。第一、それ、れん坊のでしょう」

「マジで? じゃあ貴様のをよこせよ!

 なにしれっと人の物渡してるんだよ、この野郎!!」

きゃあ!

東矢君が襲い掛かってきたので、

あたしはソファーのクッションを盾にして防御しました。

もう最悪! れん坊、早く帰ってきて~~。


牧野:溝の口駅 商店街 閉店した店の前(夜)



牧野です。

とくっぺと二人で閉店した店の

シャッターに背中を預けて座って話をしています。



「あたし、実はアイドルやってるんです。

 ライブとかもそこそこしてるし、CDだって出してるんですよ」


「そうなの? 凄い」


「凄くないです。

あたしよりも、おタマ様の方が超凄いです。」




 

とくっぺが私の両手を握ってきました。

何やら怪しい雰囲気が・・・



「あのときの、おタマ様・・・とても輝いてました。

もう、このとくっぺ。ひと目見て全身に衝撃が走って、

お兄様の格好良さがすっ飛んでしまいました。

とくっぺは、今、おタマ様に夢中なんです」


「そっそうなんだ。ありがとう。

でもなんで私が東京にいることを知ってるの?」


「それはジュリエッタで知りました。」

「そうなんだ」



「とてもサディスティックな

10代の超イケメンガールが入ってきたって、

私たちジュリエスタの間では話題になりましたから」


ジュリエスタというのは、

ジュリエッタにハマる女の子たちのことです。

ジュリエッタは未成年でも入れる安心安全で、

ドM調教も可能な男装居酒屋です。

正式には男子禁制の男装カフェレストラン

って呼ぶらしいですね。

お酒も成人客に要望があれば出しますよ。



「私、そんなに話題だったんだ。

 私、ダンスとかも覚え悪かったし。愛想も良くなかったし、

 内心お客さんとかには嫌われてると思ってたんだ」




「そんなことはございません!!

一体何故辞めてしまわれたのですか?」



「いや、その・・・ちょっと、金欠で・・・」


「淋しいです。そして悔しいです。」


「ごめんなさい」



「謝らないで下さい、あたしが悲しくなってしまいます。

それよりおタマ様、知ってますか?

 今、ジュリエッタは大変なことになってるんですよ」



「大変なことって、何がどうなってるの?」

「経営が、超ヤバイんです」

「ええ! なんで!?」


「タマ様と狂也の人気1位、2位が、

二人そろって辞めてしまったからですよ!!」


狂也というのは、ジュリエッタの人気No1。

朝稲 小弦(21)のことです。


彼女が・・・ジュリエッタを、辞めた?


「・・・私、小弦が辞めるなんて話聞いてなかったよ」



「プライベートの活動が忙しくなったからって、

突然来なくなっちゃったんです。ひどい人ですよね。

おタマ様はラストステージで、

私達全員に別れのムチをふるって下さって、

今日で最後だから、特別に泣いてあげると言いながら、

涙を流しながら観客全員に感謝の言葉まで

下さったというのに、信じられません!」


「(思い出してモジモジする)」


「お願いします、おタマ様。ジュリエッタに戻ってきて下さい! 

あたし、もう、あなたなしでは生きていけないんです」


「(乾いた笑い)」



「それはちょっと。とりあえず、小弦ちゃんには


 私がなんとか会って戻るように説得してみるよ」



「無駄ですよ。彼女は、自分が成功するために

ジュリエッタを踏み台にしたんです。

そんな人間の歌なんて、とくっぺは聴く気にもなれません!」


「どういうこと?」

「噂では、彼氏とユニットを組んだらしいですよ」

「ええ、うそ~」



「だから私は、日々こうしておタマ様をストーキングしつつ、 陰ながらご活躍を見守らせて頂いてるんです。今日の路上ライブも、とっても素敵でしたよ。」


今、さらっとストーキングとか言ったね、彼女・・・。


「あっありがとう。本当に嬉しい。

 ごめん。私、明日仕事だから、そろそろ帰らないと。」


私はちょっと強引に握られた手を振り払いました。

そしてバイバイと笑顔でその場を離れようとしましたが。


「待ってください、おタマ様。

写真を、ラブラブなツーショット写真を撮らせて下さい。

そしてこれをきっかけに、とくっぺと特別な関係に~」


「(話を遮るように)

 ジュリエッタではツーショット写真は禁止だったでしょう」



「もうおタマ様はジュリエッタの

ススガタマでは無いじゃないからいいじゃないですか!

もう我慢できないんです。お願いします、おタマ様」



私はため息を吐きつつ、仕方なく応じました。

そしてとくっぺとツーショット写真を撮りました。



「応援してくれて、本当にありがとう。

私の路上ライブに顔を(はっとして)、

じゃなくって、これからもよろしくね。」



「ああ、おタマ様が、またしても、

このあたしにとても優しい言葉をかけてくださる。

でも、きっと、この次は厳しくしていただけるのですね。

これは正しくアメとムチ。もう、辛抱たまりませんわ」


「(引きつった笑みを浮かべつつ歩き出す)」



 私はとくっぺに背を向けて歩き出しました。

ふう・・・今日は長畑さんが来なくて、

逆によかったかもしれない。あの子、

長畑さんに私のことベラベラしゃべると思うから。


それにしても、小弦が、ジュリエッタを辞めた・・・







長畑:長畑の家321号室 玄関 (夜)


長畑だ。

今日も残業だった。正直疲れた。



「ただいま~」


犬伏が駆けてきた。


「おかえり、れん坊。最近毎日残業してるね。大丈夫?」

「平気だよ(微笑み)」


結局・・・9月は一度も牧野さんのところには行けなかったな。

「煉ちゃん、俺もう嫌だよこの女~~嫌なんだよ~」



なんだ?


 東矢が泣きながら走ってきて、俺に抱きついてきたぞ。









「おい、どうしたんたんだ」


「もうこいつが家に来てから、

俺がどんだけ我慢してると思ってるか、

煉ちゃん知ってるでしょ~に~」


やれやれ、帰宅早々クライマックスシーズンの始まりか。

どうせまた喧嘩でもしたんだろう。

この二人、しょっちゅう小競り合いしてるからなぁ。

「こいつ呼ばわりしないでよ(東矢に詰め寄る)」


「東矢、落ち着け。犬伏も抑えて。

話を聞くから、俺の部屋で話そう、な」


「ったく、これぐらいのこと、男なら笑って許しなよ」


「世の中には許されることと許されないことがあるんですよ!

 これって、絶対に人として許されることじゃないと思いますよ、私は!!

(泣き叫びながら)」


「分かったから、東矢。俺の部屋に来い」

「(嗚咽)」



長畑:長畑の家321号室 長畑の部屋 (夜)


長畑だ。

俺は泣きじゃくる東矢を連れて、

自分の部屋に連れて行ってとりあえず寝かせた。

犬伏が軽くノックをして俺の部屋に入ってくる。 


「東矢君、大丈夫?」

「犬伏、一体何があったんだ」


「あたしが東矢君のヨーグルト勝手に食べたら

 怒り出しちゃって、凄い騒がれて、もう大変だったんだよ」



「そうだったのか。

 俺も以前、知らずに食べちゃったことがあって。

 そのときは朝まで騒がれたよ」


「れん坊も、大変だったんだね」


長畑「俺たちにとってはただのヨーグルトでも、こいつにとっては特別な物なのさ。

フットサルとか激しい運動やってるし、健康とかには人一倍気を使ってる奴なんだよ」


「・・・反省します」



「大丈夫。東矢は優しいから、

 明日になれば、きっと笑って許してくれるさ」


「うん。おやすみ、れん坊。東矢君、本当にごめんね」


犬伏は部屋を出て行った。



「おい、東矢。辛かったな。

 俺が代わりになりそうなもん買ってくるから、

とりあえず、それでこの場はなんとか辛抱してくれよ」


「・・・ちぇっ煉ちゃんがそういうなら、仕方ないね・・・」

「(笑顔)」



今日も大変な一日だったな。

さてと、風呂にでも入って俺も寝るか。

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