第4話Part9『夜はカタルーニャ前編』

牧野:レインバスビル一階受付 夕刻


 牧野です。今日も激動の一日が終わりました。夜は美咲ちゃんとそのお仲間さん達とのディナータイムです。

 GAMとかいう社会人サークルの集まりらしいんですけど、私が参加していいんでしょうか。

 と思っていたら美咲ちゃんからLINEが飛んできました。

『ごめん、ちょっと遅れるから日下さんと矢島さんに現地まで引率してもらって』

『了解です』

 日下さん。

 日下さんってあのワンレンで髪の綺麗な女性ですよね。確かお向かいさんだったはず。

 でも矢島さんって誰だろう。

「牧野さんですか?」

 私に声をかけてきたのは受付嬢のお姉さんでした。

「あっはい。牧野です」

「始めまして、総務課の矢島美里です。レインバスビル本社の受付やってます。」

「あっどうも、営業事務課の牧野です。今日はよろしくお願いします」

「うふふ、そんなに緊張しなくてもいいですよ。砕けた感じでヤジさんって呼んで下さい」

「すっすいません」

「謝らないで」

 とヤジさんが言った直後、彼女の首ねっこを何者かが腕でホールドしました。

「きゃあ、苦しい」

「あんた達、随分楽しそうにしてるじゃない。あたしも混ぜてよ」

 出た。日下さんだ。そういえば今日もお昼ごろに会った気がする。

「牧野さんだよね」

「はい」

「そういえばちゃんと自己紹介してないわよね。あたしは秘書課の日下ルリ、25歳よ。ヤジさんは後輩で一つ年下なの」

「そうなんですか」

「うん。ところで指野さんからLINE来た?」

「あっはい、少し遅れるって」

「おけ。じゃあ先に三人で行きましょう」

「いい加減首を離してくださいよ~日下さん」

「ああ、ごめん。ヤジさんっていい匂いがするから、つい」

 そう言うと、日下さんはヤジさんの拘束を解きました。

 日下さんか・・・。美人だけど、ちょっと性格きつそうだな。


日下:海岸通り 夕刻


 日下よ。今は牧野さんとヤジさんを連れて目的地のカタルーニャ料理店へ向かっているところ。

 そうだ、牧野さんに今日の集まりの趣旨を説明しないとね。

「牧野さんはGAMのこと知らないわよね」

「はい、GAMって何ですか。」

「レインバス発祥の社会人サークルよ。他の会社の人達ともサークルを通して交流会をしているの。

 簡単に言えば色んなイベントを通して、人脈作りをしているわけ。」

「へーそうなんですか」

「あたしはそのGAMの裏方で幹事をしているの。一応これでも本部長でイベントの立案なんかをしてるのよ」

「へー、なんか凄いですね」

「大したことないわよ。それで今日は今後のイベントの企画会議がてらGAMの幹事が一同に集まるってわけ.」

「え、そんな会合に私なんかが参加していいんですか」

「いいわよ。だってあなたもGAMに入れるつもりだもの」

「え」

 牧野さんが鳩が豆鉄砲くらったような顔してる。ここはフォローしておくか。、

「ま、幹事になるには指野さんの承諾が要るけど、気軽にイベントに参加するだけなら誰でもOKだから。

 気負わずに、ね」

「はっはい」

 牧野玉藻。彼女は指野さんの従姉妹で金の卵。社内の下種な男達から守るためにもGAMで庇護する必要がある。

 特に親衛隊みたいな連中に目をつけられたら大変。そのためにはなんとしても彼女をGAMに入れないと。

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