第4話Part7『安っぽい、ドラマみたいな恋がしたい』
犬伏:スポーツ新聞社 デスク(午後)
犬伏です。
新聞社のデスクにやってきました。
騒々しい。
ウチの会社以上に活気に溢れてます。
なんか皆忙しそうだけど・・・。
歩いてきた女性の人に声をかけようっと。
「お世話になってます。レインバスの・・・」
「邪魔、どいて」
「きゃあっ」
うう、手で押された・・・・。
「すっすいません犬伏です。あの、今日は日ごろのご挨拶に」
「いいからどいて、今忙しいの」
うう、また手で押された・・・・。
「失礼しました」
「コラ、犬伏さんになんてことするんだ」
「ふん」
「(苦笑)」
ふう・・・。
犬伏:文房具メーカー 総務部(午後)
犬伏です。
突然ですが、私は怒られてます。
他の社員さんも、チラチラと怒られている私を見ています。
整然と並べられたデスクでフロアは埋まっています。
私は窓際の席で座っている頭のはげたおじさんに怒られてます。
納品先の文房具会社の備品担当してる人なんですが・・・怖い・・・。
「こんなんだからお宅の会社は業績低迷してるんだよ!
一体客を何だと思ってるんだ。キミの上司にも言っておけ。
こんな直ぐ壊れるような不良品のプリンターをよこすなんて・・・って、犬伏さん! 聞いてるの」
「はっはい。本当に、すみませんでした。」
「すいませんじゃないだろ。何なんだ! ボーッとして。私に惚れたのか。」
「いえ、それはないです(キッパリ)」
「キミ、そこは肯定するところだろう。全く冗談の通じない人だね。」
「・・・そういう冗談、嫌いです・・・」
「なんだと! この前も使えない顔だけのヘラヘラした営業マンが、ウチの女社員にやったらめったら声かけて、電話番号とか交換したりしてたけど! 私はね、イケメンと不良品と冗談の通じない奴が大嫌いなんだ。そもそも」
もう、聞きたくない。
犬伏:有限会社北洋 社内(午後)
犬伏です。
今度はお局っぽいオバサンの社員さんに怒られてます。
でもいいんです。もう慣れましたから。
「直ぐに代わりのものを手配します(頭を下げる)」
「当たり前でしょ! 早くして頂戴! 仕事が出来ないじゃないの!
前から思ってたけど、あなたちょっとチヤホヤされてるからって調子乗ってるんじゃないの!」
「そっそんなこと・・・」
「言っとくけど、私はね、女は顔じゃないと思ってるわけ!!
犬伏さんみたいな顔だけが売りの能無しなんか、問題外よ」
「すっ・・・すみません」
「営業にもちゃんと言っときなさい!」
「申し伝えます(頭を下げる)」
・・・。
犬伏:大通り(午後)
犬伏です。もう、なんだか疲れちゃった。
おっ大通りに撮影クルーがいます。軽く人だかりもできてる。
ドラマの撮影でしょうか。
カメラの前で若い男女が向かいあってる。
キスシーン? もしかしてキスシーン??
てっ・・・あれは、幾田トマトと吉高由里子じゃん!
あたし芸能人にはなりたくないけど、エキストラなら超興味ある!!
あたしは人ごみを掻き分けて、
さりげなく撮影クルーの中に混じるように立ち止まってみました。
おお、本物の、生芸能人は違うな。フレッシュチーズみたい。
あらやだ、女性ADが怖い顔してやってきた。
「すいません。どいてもらえますか。」
「ほらどいてくださいですって。」
あたしは左後ろの女の人に声をかけた。
「いや、すいません。あなたですけど・・・」
「え? あたしですか」
「本番なんで、下がっててください」
「あっあの、笑い役とかほしくないですか。
私笑うの得意なんですよ、ほらほら、ニーって(笑顔)」
「必要ないです」
「じゃあ人生に疲れながら道を歩いているモッツァレラチーズとか、あたしそういうしゃべらない役、人じゃない役でも全然演じる自信ありますよ」
「必要ないんで」
「わっかりました(手を叩く)。チーズ歩きながらじょじょに発酵させましょう。
あたし、頑張って発酵しますから。それなら文句ないでしょう。」
「チーズは元々発酵してますが(イライラ)」
「え~やだ~そうでしたっけ。ADさんって、物知り~」
あたしは悪戯っぽく指でグイグイと女ADの体を突いてみた。
「もう! 邪魔だって言ってるでしょう! 早く行きないよっ」
「しっ失礼しました~」
ふう・・・怖い、怖い。
なんなのあの人、超ヒステリー。東矢君みたい。
あ~あ、仕事中にテレビに出られたら、
・・・超自慢できたんだけどなあ。
犬伏:カフェテラス (午後)
犬伏です。
歩道に面したカフェテラスで休憩中です。
窓際の席に座って、通り過ぎる人たちを眺めつつ、手帳に書き込んだ会社名のうち、
外回り済の会社名をペンで消してます。
株式会社ザウルス→終わり。
有限会社北洋 →終わり。
NPO法人希望の空→終わり。
スポーツ新聞社 ナンテン→終わり。
以前は多くても外出は月1・2回だったのに、
今週だけで2回目です。
担当営業マンの手が回らなくてどうしようもない状態のときに
サポート担当のあたしが代わりに挨拶回りに行ってるんですが、
面と向かって怒られるときもあります。
今日は悪い意味で大当たり。
正直ちょっとへこんでいます。
別にあたしが悪いわけじゃないんだけど・・・。
・・・レインバス本社の新入社員は、
最初の1年か3年目までは営業部でビシバシ鍛えられ、
その後適正を見て各部署に異動させられるという話です。
正直、あたしはもっと華やかなところで働きたい。
営業事務は時間との戦いがあるから気が抜けないし、大変。
早く指野さんのいる秘書課に行きたい・・・。
日下ルリと同じ部署は嫌だけど、指野さんがいるなら耐えられる。
・・・指野さん、
やっぱり牧野さんを直接この目で見に来たのかな・・・。
牧野さんのこと、どう思ったんだろう・・・。
あたしは、牧野ちゃんをGAMには入れたくない。
あの娘には、男女の欲望渦巻く社会とは遠い存在でいてほしい。
窓の外ではキャリアウーマンっぽい雰囲気の女性が電話をしています。
スーツを着た若い男の人が女性の隣にいる。部下かな?
女の人が時計を見て、そして男性の方を見て神妙そうな顔で話をしている。
うわ!! 人目もはばからずに抱き合った!?
キスした??
一体どういう展開!?
しばらくすると、ベンツが車道に止まった。
女性が後部座席に乗り込むと、ベンツはすぐに動き出した。
女の人、顔を手で覆っていた。泣いていたのかな。
若い男性が、去っていくベンツを愛しそうに見ている。
げっ男性がこっちを向いた。
目を合わさないようにしよう。
あたしはちょっとだけ顔を横に向けた。
後ろのテーブル席では、若いOLさん達が楽しそうに話をしている。
4人いるけど、よく見たら、
1人は・・・長髪だけど、顔が男・・・。
・・・・体の線もごつい。ムダ毛がすごい・・・。
どうみても男にしか見えない。
まさか・・・オカマ?
うっオカマがこっちを見て驚いた顔してる。
あたしはあわてて顔を正面に向きなおした。
窓の外の若い男性が、まだあたしのことをじっと見てる。
あたしは視線を手帳に落とした。
男の人が、やっと歩き出した。
・・・と思ったら、カフェの中に駆け込んできた。
しかもあたしの方に向かってきた。
何? なんなの?
「あっ・・・あの・・・(苦笑い)」
「美里~~~!!!」
「え? 美里?! 声でかっ」
いや、あたしの名前は犬伏真希といって・・・。
・・・ん?
男性の体が、あたしの後ろの女性4人組の方を向いた。
美里って人を呼んだみたい。
美里と呼ばれた女「嘘、ごめーん、大ちゃんが好き~~~!!」
でも、呼ばれた方の声も、男にしか聞こえないんだけど・・・。
声でかいし、うるさい・・・。
あたしは恐る恐る後ろをみた。
「・・・なんでここに」
「彼女とは今、別れてきた。一緒に暮らそう」
「・・・」
「だいちゃん、大好き、大好き、大好きよ~~~~!」
「俺の故郷で一緒に梨を作ろ~~う!」
美里って呼ばれたオカマと大ちゃんという名の男性が抱きついた。
何盛り上がっちゃってるの、この二人。うるさいんだけど。
他のお客さんが怪訝そうな顔でこっちを見てる。
あたしは関係ない振りをしないと・・・。
「美里、おめでとう! このっ幸せ者~(拍手)」
「・・・」
「おめでとう!! やっぱり美里は可愛いよ~(拍手)」
「・・・」
「おめでとう!!! 美里の可愛さは宇宙一だよ~(拍手)!」
「・・・うるさいな・・・(小声)」
「ああん? ちょっとあんた何よ!」
「え?」
やばい、美里っていう人に絡まれそう。
「あなた、さっきからあたしのこと、いやらしい目で見てたでしょ」
「え、みっ見てないです! 本当に見てないですって(必死)」
「この女、今別れたばかりの彼女のこともジロジロ見てたぞ!
俺のことも、エッチな目で見てた」
「だから見てないですって!」
「信じられない! この二刀流!!」
にっ・・・二刀流・・・・だと?
このオカマ、人が大人しく聞いてれば、
いい気になりやがって・・・むかつく。
「ふ・・・ふざけんじゃないわよ! なんで初対面の人間に!
いきなり二刀流呼ばわりされなきゃいけないのよ!
言いがかりも甚だしいわよ!!大体こんなむさい男、あたしが泥棒するわけないでしょ、ムダ毛剃れ、このブサイクのカマ野郎!!」
「(驚いて)あっ・・・あたしは・・・カマじゃないわよ~~~」
「じゃあ一体なんなのよ! あたしに判るように説明しなさいよ!!
大体あなた達、飲食店でイチャイチャイチャイチャ、手を叩いてギャーギャー騒いじゃって!! 他の人の迷惑とか考えなさいよ!!勝手に盛り上がって馬鹿みたいに騒いでるんじゃないつーの!!あんたたちの安っぽいドラマなんて、どーでもいいっつーの!! ホテルでやれ!! 家でやれ!! ブラックボックスの中でやれ!!」
「(涙目)」
あたしは机を勢いよく叩いてカフェを後にした。
もう、本当に気分悪い!
犬伏:大通り 駐車場出入り口付近(午後)
犬伏です。
今、道を歩きながらスマホで沖田さんに弱音を吐いてます。
「沖田さん、あたしもう疲れました。死ぬほど怒られたし、
変なオカマに喧嘩売られるしで、もう早く会社に戻りたいです」
「今日は我慢して。来週からは会社でヌクヌクさせるから」
「またそんなこと言って~もう信じられませんよ」
「御免ね。でもこういうの、真希ちゃんにしかお願いできないのよ。
あとちょっとだけ我慢して。真希ちゃんなら出来るから」
「・・・わかりました。じゃあ、あとちょっとだけ頑張ります」
「お願いね。あと何社」
「え~・・・と、3社です。」
「おっ早いわね。さすが真希ちゃん」
「えへへ・・・会社に戻るのは、多分18時過ぎになると思います。」
「そう、待ってるからね」
「は~い、あっそうだ。沖田さん、営業課長に・・・」
スマホで話をしていたそのとき、
あたしの後方から激しい車のエンジン音が聞こえてきた。
あたしがしゃべりながら左斜めに振り返ると、
スポーツカーが右折して駐車場に進入してくるところだった。
凄いスピード。
あれ、あたし、今駐車場の入り口のど真ん中歩いてるんですけど。
もしかして、轢かれる?
「きゃあ」
あたしは驚いて地面にへたり込んだ。
車は丁度止まったけど・・・危ない・・・。
運転席から、男の人がゆっくりと出てきた。
「すんませ~ん。大丈夫ですか~」
「だっ大丈夫・・・です・・・」
助手席から女の子が出てきた。
「もう、ヒナリ君。ちゃんと前見てよ~」
ヒナリ・・・? この人、ヒナリって言うんだ。
「いやあ、ちょっとロックなリズムを感じちゃったもので・・・テヘ」
何言ってるの、この人。
「・・・」
この光景は・・・今日見た夢と似てる・・・。
でもこの人はイケメンだけど、有名人ではなさそう・・・。
髪の色も明るいし、あまり頭良さそうにもみえないし。
女の子も、超ギャルっぽいし・・・。
あたしは気持ち素早く立ち上がって、膝の汚れを払った。
ズボンは破けてないみたい・・・。
「ほんとに大丈夫っすか? 半月板とか損傷してないすか」
「してません! 大丈夫ですから。急いでるんで・・・」
あたしは小走りでその場から離れた。
ドラマだったら、きっとあたしは擦り剥いて、足を捻って、
車に乗せられたりして、何故か喧嘩して後日バッタリ再会したりするけど。
現実は、・・・ドラマのようには行かない。
それにしてもあの男の子、若いのに高級車を乗り回してる。きっと親が裕福なんだろうな・・・。
犬伏:赤坂 オフィスビル前(午後)
犬伏です。
最後の会社は芸能プロダクション『スケール』です。
社長さんは元ミュージシャンで、
音楽関係にもパイプを持っている事務所だそうです。
以前は年数の経過したビルに事務所がありましたが、
所属してる俳優やアイドルさんが何人かブレイクし、
このたび大きくて綺麗なビルに移転したそうです。
誰が所属してるのかはよく知らないけれど。
とりあえずあたしが時々回る会社の中では、唯一の癒しの場。
お楽しみは最後に取っておくタイプなので、いつも最後に回るようにしています。
それにしても・・・
「おっしゃれ~(ビルを見上げて)」
犬伏:芸能プロ・スケール 受付(午後)
犬伏です。スケールの受付にやってきました。
受付の女の子があたしを暖かく迎えてくれました。
「キャ~犬伏さ~ん。ひさしぶりです」
「おひさしぶりで~す。社長さんはいますか」
「ちょっと待っててくださいね(電話をかける)。
そうだ犬伏さん、饅頭食べますか」
「いただきます」
犬伏:芸能プロ・スケール 社長室(午後)
犬伏です。
社長室に入りました。お饅頭超美味い。
観葉植物とかが置いてあるし、部屋は透明なガラスで区切られていて
外の社員さんの姿もよく見えます。
相楽社長は、窓際に立って外の様子を眺めています。
「相楽社長」
「? おお、犬伏さん久しぶり、なんか髪伸びたね」
「お久しぶりです。これはエクステなんですよ。」
「そうなんだ」
「・・・また、夢に一歩近づけましたね」
「そうだね。でも早く次の山を探さないとね」
「次はどの山を目指すんですか」
「・・・人材」
「人材?」
「俺の夢は」
「自らの手で原石を磨く。でしたっけ」
「はは、覚えてるね~」
「飲みの席で何回も聞かされましたからね(笑顔)」
犬伏:芸能プロ・スケール オフィス内(午後)
犬伏です。
相楽社長と広々としたオフィスを自慢されつつお話しています。
「キミの会社は美人が多いって業界では有名だけど、
元芸能人とかは少ないもんだね」
「そうですね。まともな元芸能人は指野さんぐらいですね。あたしと同じ大学で、ミスキャンパスだったんですよ。他にも経理の斉藤さんとか、沖田さんは大学時代モデルやってましたし」
「もう、それ何回も聞いたよ」
「あはは、すいません」
犬伏:芸能プロ・スケール リフレッシュルーム(午後)
犬伏です。
相楽社長はブラックコーヒーが好きなので、
近くのコーヒーポットであたしが炒れて、
持っていこうと準備しています。
社長さんはソファに座ってます。
「ミュージシャンの発掘?」
「そう、それも生粋のカリスマになれるような奴をこの手で育ててみたい」
「素敵な夢ですね。憧れちゃいます」
「夢じゃない。必ず現実にしてみせる。俺はやる。あらゆる悲しみとか、辛い記憶を
音楽の力で払拭させてくれるような、そんな人材を必ずこの手で探し出してみせるさ」
「相楽さん・・・。」
相楽さんは、情熱の塊のような人。
あたしの周りにはいないタイプの男性。
「どうぞ(コーヒーを置く)」
「ありがとう(笑顔)」
「相楽さんの熱さにはかないませんね」
あたしも社長の向かいのソファに座りました。
「ふふふ・・・熱っ」
「大丈夫ですか」
「平気。ちょっと猫舌なもんで。」
「温めにしたつもりだったんですけど・・・すみません」
「問題ない。で、いつ犬伏さんはウチに所属してくれるわけ」
「ええ、いきなりなんですかっ」
「キミの才能は、今の会社じゃ埋もれてしまうかもしれないよ」
「はは、もう冗談ばっかり。あたしはもう、普通の人生でいいですよ」
「そうか、・・・残念だな」
「ははは」
「ところで長畑君はどうかな?」
「彼はすっかり社会人ですよ」
「はは、そうか。せっかくの2世なのにもったいないな」
あたし、嘘ばっかり・・・。
普通の人生なんて、大嫌いなのに。
ドラマに出てくるようなカッコいい女性みたいに仕事して、
ドラマみたいな安っぽいけど素敵な恋をして・・・。
恋も仕事も夢も、全部思うがままに手に入れたいのに。
指野さんみたいに、なりたいのに。
ふう・・・あたしって、欲張りなのかな・・・。
「社長」
「どうした、沢木」
スケールの沢木文殊さんがリフレッシュルームに入ってきた。
相変わらずメガネずれてるし、髪の毛は寝癖ついてるし・・・。
「あ、犬伏さん。いらっしゃってたんですね(ポッ)」
「お邪魔してま~す。寝癖、ついてますよ」
「え?」
「動かないで。今、直しますからね」
あたしはカバンのポーチからクシを取り出して、
沢木さんの寝癖を直してあげました。
「あらあら、ネクタイも曲がってますね。ダメですよ」
「いっ・・・犬伏さん・・・(ポッ)」
「なっ何かあったのか(ネクタイを手で曲げる)」
「きょ・・・今日のオーディションなんですけど、
また幼成が乱入予告をしてきたみたいで・・・どうしましょう。」
「もう来るなってお前言ったんじゃなかったっけ」
「そう言ったんですけど、FAXで予告状が」
沢木さんは裁判の判決結果を示すみたいに
FAX用紙をかざしてあたしと相楽さんに見せ付けてきた。
何々・・・
「ヒナリ・・・参る・・・」
なんのこっちゃ・・・。
「懲りない奴だ。お前がスカウトしたんだから、強気でお断りしろ。
いい加減、業務営業妨害で訴えるぞってな」
「もう何度もそう言ったんですけどね」
「あんの馬鹿。せっかく広いところに移転したばっかりだと言うのに。
しょうがない。またビルの前でアホみたいにギター弾かれたら、
たまらんからな。俺が直接ノーと言ってやろう」
「お願いします」
「あんな奴を発掘してくるなんて、お前の目はどうかしてるぞ」
「すいません」
・・・相楽さんって、怒ると超怖そう。
今も充分怒ってるけど・・・。強面だし。
「今から説教用の台本を用意する。付いて来い。」
「ギターはめっちゃ上手いんですけどね、彼・・・」
「(無視して)犬伏さん、申し訳ない。また今度、ゆっくり」
「はい」
「・・・(ネクタイをわざとらしくグイグイ曲げる)」
「?」
「あ~・・・畜生っ」
相楽社長、がっかりしたような顔で立ち上がった。
ネクタイ自分で曲げちゃうし、イライラしてるのかな?
「あと、例のANITOの動画の件なんですけど」
「ANITOはもういい!」
「女の子の方がちょっと可愛いかな、と」
「あんなブレブレの映像じゃ何にもわからんだろ」
「いや、なんかその、ピンと来たんですけどね」
「俺は来ない!」
ヒナリって人、今から災難だな・・・。
生きて明日を向かえられるのかな・・・。
ん?待てよ? ヒナリって、・・・
さっきの犯罪者一歩手前の人と同じ名前?
・・・まあ、どうでもいいや。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます