第3話part9『救世主』
長畑:洗足池駅 夕刻
ようやく駅に着いた。ここまで来れば社宅まで歩いて五分。
あと五分の辛抱だ。
「あっタマちゃ~ん」
ん? この甲高い声は、まさか網浜凜。
「ああっ網浜さん」
「もう、アミリンって呼んでよ」
「ごめん、アミリン」
おお、神よ。我を救ってくださってありがとうございます。
あとは網浜に牧野さんを押し付けて、俺は酒を買いに行こう。
「ああ、それじゃあ俺、酒買ってくからここで」
「お酒ならここにありますよ、長畑さん」
網浜はそう言うと俺に酒の入ったコンビ二のレジ袋を見せてきた。
「おお、買ってくれたのか、サンキュー。じゃあ俺が持つよ」
「お願いします」
ふう、網浜が天使に見えてきたぞ。
そして俺達三人は家へと向かった。
網浜:住宅街 夕刻
網浜です。今日は犬伏さん家で夜会だそうで、凜もお呼ばれされました。
幸い今日は仕事も速く終わったので、いっぱい飲んで食べちゃおうと思います。
「タマちゃん、ひさしぶりだね、元気してた」
「元気ですよ、アミリンは?」
「凜は体が丈夫なだけがとりえだからね」
そう言って、凜は力こぶを作って見せました。牧野さんは驚いています。
「凄い、触ってもいい」
「いいよ」
「うわあ、硬い、カチコチだ。体鍛えてるんだね」
「まあ刑事は体が資本だからね」
牧野さんと一緒に楽しくおしゃべりをしていますが、後ろにいる長畑さんに元気がありません。
「長畑さん、どうかしましたか?」
「いや、別に、お構いなく」
一体どうしたんだろう。
と凜が思っているとコンビ二から出てきた女性から声をかけられました。
「あら、貴方達、早いわね」
「あっ日下さん」
「あ、こんばんは」
「今日は夜会だからね、お酒買ってたのよ」
そう言って凜にお酒の入ったレジ袋を見せてくれました。
「さっそくなんだけど、これ持ってくれる」
「ははーっ」
凜は日下さんからレジ袋を受け取りました。
「俺が持つよ」
「ありがとうございます」
「あら、長畑君も一緒なの。三人とも仲が良いわね」
「いや、たまたま帰り道で出会っちゃったですよ」
「ふーん、そう。」
日下さんはそう言うと牧野さんを凝視しました。そして・・・・。
「それにしても、あなた、肌綺麗ねー」
なんと牧野さんの頬を触りました。
「ふわわっそうですか」
「流石秋田県出身、美人さんね」
「ふわっありがとうございます」
「日下さんって大胆」
「ところで今日の夜会、あなたも来るのよね」
「いえ、私はご遠慮させていただきます」
「あらそう、残念だわ。飲ませて酔わせて慰み者にしてあげようと思ってたのに」
「日下さん、牧野さんは未成年ですよ」
「分かってる、冗談だって。じゃ、帰り道までダッシュね」
「ええええ」
日下さんはダッシュで先へ行ってしまいました。日下さん、アグレッシブ過ぎますよ。
牧野さんも走り始めました。ああもうこれ凜も走るパターンだ。
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