第2話part17『もののけ娘。③』

東矢:壇ノ浦 半個室の4人席


「ちーす(暖簾をめくり、カズダンスを披露しつつ入場)」

「あっ東矢君っ!」

 おうビンゴ。俺と目が合った瞬間に声を上げたのは真希ちゃんでした、と。  そして俺の腹のあたりに頭があるのは長畑煉次朗か。俺から見て真希ちゃんの左隣は・・・




 !!


 なんだあの生き物?!


 いや、生き物っていう例えはレディには失礼だが、彼女は・・・ 一瞬だが俺の体を稲妻が貫いたぜ。前髪があごにかかるほどに長い。七三で分け目を作って、俺から見て右側に流している。前髪は耳の後ろで流している。小さな骸骨の飾りが印象的なバレッタで留めているな。ぱっと見、かなり長めのボブカットだ。髪を伸ばしている最中なのかもしれない。左右の髪にもボリュームがあって、毛先が跳ね上がり気味だし。アンバランスが髪形だが、何故かこの娘がやると可愛くみえる。ボリュームのある前髪の一部と、顎をはみ出すぐらいの長さの横髪は細く三つ編みにしている。

 瞳は大きく綺麗だが、かなり茶色い。天然か? カラーコンタクトか? そして一度も日の光を浴びたことないんじゃないかと思わせるほど、澄んだ白い肌は一体何なんだ。ピンク色の凛とした口元と整った鼻。

 ちょっと猫っぽい目の輪郭が愛くるしくてたまらないぜ

 外人? ハーフか?! 

 とにかく信じらねぇ可愛さだ、牧野玉藻。以前見たときよりも可愛くなっているのは化粧のせいか?

 「どうしたの、東矢君。ボーっとしてるよ」

 そりゃあボーっとするさ。

 アニメから飛び出してきたよう娘っ子を目の前にすりゃあなあ。

 刺し身くわえてこっち見てるんだが。。。恐ろしい生命体だな。

 「遅いぞ、東矢」

 「? (何、どういうこと??)」

 「ワルイ、ちょっとゆっくり歩きすぎた」

 「とにかく座れよ。え~っと牧野さんの隣空いてるから」

 「ヘイヘ~イ」

 「?」

 さてと、ってことはあの可愛い娘があのときの牧野ちゃんか。しかも隣なんて。

 やべえ、香水つけてくればよかった。この俺としたことが。

 俺はあまり仰々しくなく、自然を装って、軽く彼女に会釈しながら隣に座った。

 「ひさしぶり。営業部の東矢宗継です、よろしく」

 ナチュラルに左手を差し出してみた。

 牧野ちゃんは一瞬驚いたようだが、直ぐに手を掴んでくれた。

 一瞬冷たいと思ったが、じんわりと暖かさと柔らかさが伝わってくる。

 これぞ女の子の手だ。完璧だ。

 そして俺にとっては組しやすい娘だ。  

 「おひさしぶりです。牧野玉藻です。犬伏さんのサポートしてます。よろしくお願いします」

 「たまも? っていうんだ。可愛いらしい名前だね。あまり聞いたことないし」

 「ホントですか! ありがとうございます(赤面)」

 「ちょっと! 真昼間からナンパですかっ」

 「いい加減にしろ」

 「なっナンパ!?」

 「おいおい、普通に自己紹介してるだけなのにナンパとか言うなよ」

 「牧野さん気をつけて、アイツの中には狼がいるから」

 「そうそう、すっごい獰猛だから」

 「ひええええ」

 「おいおい。二人とも、せめて人間的な扱いをしてくれないもんかねえ」

 「ダメ! チャラ男反対っ」

 「チャラ男反対っ」

 やれやれ。まあ、チャラ男って呼ばれてた方が気が楽だし、良しとするか。

 東矢さん、今日も絶好調! 

 ということで。

 「東矢さんて、チャラいんですか」

 おおっと。なんですかこのお嬢さんは? いきなり直球投げてきましたよ。

 「試してみる? 今晩空いてるかな」

 「えっ・・・」

 「こら! 今日は夜会だろ!!」

 「はいはい。ウソウソ、冗談ですよっと」

 「ビックリした。東矢さんって、面白い、ですね」

 「そうかい。お嬢さんも相当キテルと思うよ?」

 「え~~! そんなことないですよ、私はマトモですから」

 これには一同大爆笑。多分今日一番の笑いかもしれね。

 真希ちゃんも、長畑も笑ってやがる。牧野玉藻か。こいつはいいね。

 信じられないほど可愛いけれど、ちょっと天然なところが面白いじゃないの。

 ん? なんだか視線を感じる。

 俺は正面を向いた。

 見てる。

 アホネンが俺を見てる。

 しかもとてつもない怒気の込もった目で俺を見てる。

 なんなんだ。恐ろしいほどの憎しみを感じるぞ。

 前後に何があったのかは知らないが、俺をそんな風な目で見るってことは、なにかsheの恨みを買うようなことをしちゃったかな。ま、・・・おおよその見当はつくけどね。

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