第2話part16『もののけ娘。②』

東矢宗継:品川駅付近雑居ビル 壇ノ浦地下入り口前(昼)


 一話ぶりの登場だからな。改めて自己紹介しよう。俺の名前は東矢宗継。25歳。レインバス本社総合部門の営業マンだ、よろしくな。

 今日も午後から面倒な事が色々ありそうだが、昼飯ぐらいは楽しくいきたい。

 ということで、俺はダチのいる店までやってきた。煉ちゃんと、真希ちゃん。後は知らんが今日はゲストがいるらしい。俺のオゴった分は煉ちゃんが買ってくる酒代で相殺するからいいとして。壇ノ浦は単価も低いから6人でも5000円以下。ま、それぐらいならいいか。


東矢:壇ノ浦 店内


 壇ノ浦は相変わらず活気がいいね。この店を見つけられたのはラッキーだよ。 以前うちの会社の複合機に全台入れ替えてくれた取引先の部長が、魚の美味い店はないかと聞いてきたのがきっかけだったかな。取引先の部長は相当な釣りと日本酒好きだ。おまけに仰々しい店を嫌う傾向がある。昔かたぎで難物のオッサンを接待するのに都合のいい店が見つからず、接待の日も迫ってきて、あの日、俺は少しだけ焦っていた。

 たまたま営業先に行く前の腹ごしらえを考えて品川駅前を徘徊していたときに、ここ、壇ノ浦の店員にチラシをもらったんだ。昨日オープンしたばかりなんでぜひ一度、という内容だった。勢いで、俺はお昼はやってないの、とチラシ配りの兄ちゃんに訪ねてみた。するとランチタイムもありますよ、との返事。チラシの内容は普通。しかし目の前の兄さんはどう見ても洒落たバーのウェイター風。そのギャップが面白かったので、俺は怖いもの見たさと、

 営業先での掴みの話になればいいかなぐらいの気持ちで入ってみることにした。

 怖いお兄さんが出てきたら、・・・それはそれで面白い。 

  実際に入ってみたら、ここは天国かっ水族館かっていうぐらいの知性を感じる内装で驚いた。

 ランチも美味かった。

 その後、営業部のメンバーと夜一回下見に行って、この店なら使えるな・・・と俺は判断した。 結果、取引先の部長は大喜びだった。俺の上客だし、嬉しかった。これからも似たような客がいたら、この店を使おうかと考えている。

  さて、煉ちゃん達はどこかな。そこの店員の兄ちゃんに聞いてみるか。俺にチラシをくれた奴だ。イケメンだが、濃口の顔は個人的に残念だと思う。

 「オッス。オラ東矢、兄ちゃん元気」

 「あっ東矢さん。ひさしぶりっすね。元気ですよ」

 「そっか、頑張れよ。ところで俺のダチ来てるんだけど、場所わかる?」

 「犬伏さんですよね。彼女なら水槽の奥の半個室Aです(キラーン)」

 「ありがとう! ごめんね、忙しいのに」

 「いえいえ、気にしないでください」

 「あっそれと、ボクは四でお願いします」

 「すぐ持ってきますね」

 どうやら店員の兄ちゃん達は真希ちゃんしか頭にみたいだね。

 まあ仕方ないか、真希ちゃん可愛いから。あれは反則レベルだから。

 真希ちゃん、犬伏真希は実際美人だと思う。

 色白の肌に卵形の顔で、若干小さめだが一切の負を感じさせない、透き通った茶色く輝く瞳が印象的だ。鼻は高くすっとしており、薄めの唇は綺麗に整えられている。口角が上がり気味なのが時折少女っぽい幼さを感じさせる。右から6対4ぐらいで分けた髪の先はやや巻ぎみで、 ペルシャ猫のように優雅に外に広がっているのが、彼女の美しさを際立たせている。

 キーラ・ナイトレイのような直球の美女に見えることもあるが、可愛らしさとの二面性がある女だな。可愛いモードのときは・・・思い浮かばないな。

特に似てる芸能人は特にいないかな。しいて言うなら・・・・う~ん・・・。

 ・・・ところでウルトラマンエースって、男女が空中で交錯しながら変身するらしいぜ。知ってた?

  俺には類似女優が思い浮かばない。すまんね。

  美人なのは結構だが、犬伏真希は客観的に見て性格がよろしくない。

  年齢の割に価値観等、色々幼い部分がある。好きな食べ物と聞いてピーナッツバターと嬉々として即答する、よくわからない女だ。人として未成熟なところが多い。

まあそこが彼女の魅力と言ってしまえばそれまでだが。初めてあったときはともかく、彼女の色々な面を知ってる現在の俺は、絶対に付き合いたいとは思わないな。

 水槽の奥の半個室Aと言っていた。正面と左右を暖簾で区切られているので完全な個室ではない。周りの話し声もする。完全な個室は既に埋まってるようだね。ここのランチ食べたさにちょっと遠くから来るOLさんもいるらしいからね。繁盛するのはよい事ですなぁ。


 半個室Aっていうのは、・・・あの、今右斜め前方にある空間のことだな。暖簾の隙間から不穏な空気が漂っているが、気のせいかな。とりあえず、暖簾をめくってみましょうかね。  

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