第2話part10『果物侍』

犬伏:エントランスホール前(昼)


エントランスホールはスーツ姿の人や家族連れでにぎわっている。レインバスビルは4Fまでは商業施設のテナントなども入っているので一般客も多い。

上層階には展望レストランもあるし。まあ高いから行かないけど。 

あたしは、受付をやっている後輩の矢島実里と談笑しながら三人が来るのを待っていた。

 最初に来たのは長畑煉次朗。どうやら先ほどのような反抗的な態度は無くなっているみたい。関心関心。

 「遅いよ、れん坊」

 「悪い、ちょっとな」

 あたしとの会話もそこそこに、長畑は実里と話し始めた。まったく、本当に男って奴は。

 それにしても牧野さんとアホネン、遅いなあ。っと思って非常階段の方をみていたら二人がそろってやってきました。長畑は二人に背を向けて実里と話し込んでいる。

あたしは長畑の脇腹を小突いてやった。

 「痛っ。何すんだよお前」

 「来たよ」

 「じゃあ実里ちゃん。今度飲みに行こうね」

 「うん。またね」

 「(イラッとして)実里、あたしも一緒に行ってもいいよね」

 「はい、もちろん。東矢君も! つれてきてくださいね♪」

 「・・・(´・ω・`)」

 「はいは~いo(〃^▽^〃)o♪」

 アホネンと牧野さんがあたし達の前にやってきた。

 「お疲れ、じゃあ行こうか」

 私は声を出しながら牧野さんに一直線に向かっていった。

 どうしたんだろう。彼女の表情が暗い。

 そういえばアホネンと一緒とは言ってなかったな。

 しかも鉢合わせちゃったみたいだし。

 「ごめんね(小声)」

 「はっはい・・・」

 気を取り直して、あたしはれん坊の方を向いた。

 「紹介するわ。もうご存知だと思うけど、今日のゲストは! 営業アシスタント期待の新人! 牧野玉藻ちゃんよ」

 そう、あたしが言った後のれん坊の顔は今でも忘れられない。

 果物の名を冠する剣豪の侍に睨まれているかのような震えっぷりだったから。

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