第2話part4『アホネンさん、大歓迎』



犬伏:営業部前通路 (朝)

 

 犬伏です。ただいま長畑煉次朗に奢りの交渉をしています。

 「お願い、今月ピンチなの。ご飯奢って」

 「それならこの間も奢っただろ」

 「煉次朗は新人さんの前で度量を見せたくないの?」

 「どういう意味だよ」

 「つ、ま、り、新人さん達にランチを奢って出来る先輩アピールしとくべきだよ」

 「なるほど。確かに新人さんも結構入ったし、ここらでコミュニケーションを取っておくか」

 「そう、では、ごちになります」

 「おい、お前も少し出せよ」

 「おーう、あたし日本語わっかりませーん」

 「とぼけるなっ」

 あたしと煉次朗が会話をしていると、営業部の外国人社員アホネンちゃんがやってきました。

 「おー、真希さん、日本人なのにわからないんですか~?」

 「あ、アホネン。違うよ、ちょっとふざけただけ」

 「やあ、アホネン」

 「どうも、煉次朗さん。ごちになります」

 「え」

 「話し聞いてました。私まだごちになってないです。ごちしてください」

 「あうう」

 「いいよ、アホネンなら大歓迎!」

 「サンキューです、真希さん」

 「おいまだ了承してないぞ」

 こうしてあたしのおごり交渉は大成功に終わりました。美人は得だね。

 あたしと、アホネンと、あと牧野さんを呼ぼう。


牧野:営業部オフィスルーム内 (朝)

 

 牧野です。ゴチになります。

 大人社会はゴチになるかなられるか、とはよく言ったものです。

 まあ私の造語なんですけど。

 奢ってもらう犬伏さんには後日お礼をしないといけませんね。

社会人は奢り奢られなんですね、美咲ちゃん。

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