第2話part2『ごちになります』

犬伏:営業部オフィスルーム内 (朝)


 犬伏です。まだ午前中なのに、今日の夜のことを考えています。

 今日の夜は、から揚げパーティをする予定なのです。

 その前にお昼ご飯どうしようかな、誰に奢らせようかなあ。

 私は隣の席の牧野さんに視線を向けました。

 そういえば彼女が来てから一週間、牧野さんとはランチ行ってないな。

隣の席に座っている牧野玉藻ちゃん。

もう、聞いて! この娘、本当に可愛いの。

白い肌して、ほっぺもふわふわで、目は奥二重で大きくて、

唇はピンク色で、アヒル口。

もう初日、一目見た瞬間に早く触りたい、グヘヘって思った。よだれが出ちゃった。

別にあたしはそっちのケがあるわけじゃないけど、

 もう、なんていうんだろう・・・・

 仕草とか、秋田訛りが抜けない喋り方とか全ってが可愛いの!!

 本当にこの娘が入ってきてくれてよかったって感じ。

・・・・そうだ。


 「(ささやくように)ねえ牧野さん」

 「? なんですか、犬伏さん。」

 「お昼、いつもどこ行ってるの」

 「え・・・う~んと・・・屋上とかで、お空を見てますよ」


あたしは崩れ落ちた。

信じられない。。


可愛い! 可愛すぎる!! 


この娘をあたしの新しいランチメイトにしたい!!


もう、我慢できない!


今すぐ牧野ちゃんを抱きしめたい!!


 「ご飯は食べてないの」

 「あ・・・サンドイッチ作ってきて、ちょっとだけ食べてます。

節約してるんで、えへへ」

 「今日もサンドイッチ作ってきたの」

 「・・・あっはい。一応」

 そうか。しょうがない。

 今日は我慢して、明日から牧野さんをランチメイトに入れてしまおう。

 「そうなんだ。

 ねえ、じゃあ明日から、あたしと一緒にお昼行こうよ」

 「え?」

 「節約してるんでしょ。タダ飯、したくない」

 「それは嬉しいですけど・・・いいんですか!!」

 「もちろん。あたしにまかせて」

 「じゃああの、今日からでもいいですか?」 

 え? これは予想外な展開。

 「もちろん! でもサンドイッチはどうするの」

 「・・・・。」

 なんだろう。一瞬のこの間は。

 時々この娘って、妙な間を作るのよね。

 なぜだろう、牧野さんにサンドイッチの具にされる映像が脳内に浮かんだ。

  でも気のせいよね。彼女がそんなことするわけない。変なのっ。

 「・・・夕食に・・・取っておきます。(はにかんだ笑み)」


  泣いた。

  全宇宙のあたしとあたしに似てる人が泣いた。

  なんて涙ぐましい、本当に・・・けなげな娘。

 

 決めた。

 あたし、この娘と全力で絡んでいこう!

 もう、超仲良くなってやろう。

 こんな可愛い娘と一緒にご飯いけるなら、

 れん坊もきっと喜ぶはず。

 ・・・そういえば、

 れん坊と牧野ちゃんが話しているのを見たことないな。

  いや、あったかな? ううん。思い出せない・・・・。

 れん坊と牧野さんとの絡み、ちょっと見てみたい。

 今日のお昼はいろいろ面白くなりそう。 


企画:犬伏真希

主演:犬伏真希

脚本:犬伏真希

広報:犬伏真希

照明:犬伏真希

美術:犬伏真希

撮影:犬伏真希 

音楽:犬伏真希

タイムキーパー:れん坊 

スペシャルサンクス:牧野ちゃん

ゴチしてくれる人:れん坊

監督:犬伏真希


 ふふふ、ふふふ。


この犬伏真希プロデュース!

ランチタイムショーの始まり!!


長畑:営業部バックオフィスルーム内 (昼)



朝の一件を引きずっているためか、仕事がはかどらない。

いつもは得意な電話応対も、今日は正直メンドクサイ。

牧野さんに、ここまで露骨に避けられると泣けてくる。

 一体この俺が彼女に何をしたと言うのか? 

 心当たりがないだけに、彼女の視線はグサッときた。

と、ちょい鬱になっている俺の元に犬伏がやってきた。

彼女は俺の同僚、同期入社の間柄だ。大学時代からの付き合いでもある。

しかし現在は俺と東矢と日下さんの家に転がり込んできているルームメイト。

モデルのようにスタイルがよく、人目をひく美人で社内でもファンが異常に多いそうだ。

最近俺らと暮らし始めたという話が広がり、裏ではひそかに作られている犬伏城とかいう犬伏親衛隊の奴らへの事情説明対応にも追われている。

本当にいい迷惑だ。 まあ妙に気が合うから許すけど。

 犬伏からLINEが飛んできた。


 「ねえ、れん坊」

 「なんだよ(れん坊って呼ぶな)」

 「今日のお昼、何食べる?」

 「え? もうそんな時間」

 「うん。あたしのなかではね」

 「とりあえず、いつもの場所で」

 「最近そればっか。まあ、確かにお洒落だからいいけど。

じゃあ一階で待ち合わせね」

 「うい」

「新人さん歓迎会にしたいから、れん坊ごちお願いします」

「(既読スルー)」


  

 昼か。もうそんな時間なのか。

結局午前中、俺の頭の中は、牧野さん、牧野さんだったな。

そんな彼女は俺の向かいの列のはじの席に座っているんだが。

この距離なら彼女と目を合わせなくてすむな。

と、ほっとしているような、残念なような、少々複雑な気分だ。


  

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