第1話Part21『名探偵の妹は説得の仕方も完璧』


網浜蘭:私立晴嵐学園高等学校 2-A組 教室内 夕刻


 蘭です。ただいま一人きりの教室で物思いに更けながら事件の報告書を執筆中です。

 と、そこへ久原流が血相変えて矢のごとく教室に飛び込んできました。

 「蘭、大変だ。崎山がっ」

 私は立ち上がり、久原を落ち着かせて事情を聞きました。



網浜蘭:私立晴嵐学園高等学校 屋上 夕刻 


 私と久原は走って屋上へとやって来ました。

そこには柵を越えている崎山徳子の姿がありました。

 直接は見えませんが、下の方は大騒ぎになっているようです。


 「崎山さん、そこで何をしているのですか?」

 「こっちに来ないで下さい。オタマ様のいない人生なんて考えられないんです」

 「ならば私がオタマ様を見つけ出してあげましょう。それでいいでしょう」

 「いやです。どうせ、私なんてブスで人気もない地下アイドルだし、学校ではハブられてるし、

 学校も退学になるし、死んだ方がマシなんです」

 「なるほど、そういうことですか。確かに世の中には可愛いブスがいれば可愛くないブスもいます。

 あなたがどちらに属するかは殿方が決めることです。ですが、死んでもいいブスなんてこの世に一人もいません。

 命は尊いものです。だからブスの命だって尊いんです。例え貴方のような罪人のブスでもです。それ以前にあなたはブスじゃないですよ。よく見れば可愛いじゃないですか。アイドルなら、もっと自分に自信を持ってキラキラ輝いてください。」

 「網浜さん・・・」

 「時にあなた、好きなアイドルは?」

 「はっ・・・ハロプロ教です」

 「なるほど、あなたとは気が合いそうですね。いいでしょう、私と久原があなたのご学友になってさしあげましょう。

 これで寂しい学園生活からはオサラバです」

 「網浜さん・・・」

 崎山さんはゆっくりと柵を乗り越え、私に抱きついてきました。

 崎山さんは退学処分になる予定でしたが、私が理事長を説得し、停学処分に着地させようと思います。

 「で、なんで俺も仲良くしないといけないわけ?」

 「久原、話の流れです。従いなさい」

 「はい、はい」 

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