第1話Part20 『満月の夜に見たものは』

上杉純夜:自室内 夜

 

 僕の名前は上杉純夜。夜と書いて「や」と読ませるんだ。私立晴嵐学園高等学校に在籍しているけど、

 留年して18歳なのに2年生。恥ずかしくて学校にも行けず、親にも見離され、一人家を与えられて生活している。 

 家とコンビ二を往復するだけの日々に喜びはない。

 趣味はギター。音楽だけが僕の友達。でもミュージシャンになりたいなんて夢は見ない。

 夢は時に誰かの心を壊すんだ。だから夢なんて見ちゃいけないんだ。

 

 そんなことより聞いて欲しいことがある。あれはコンビ二の帰り、満月の夜だった。

 僕の頭上遥か上を何か斜めになっている大き目の物体が左から右に飛んでいったんだ。

 その方角には巨大企業株式会社レインバスの社宅がある。

 物体の正体はわからない。でも、なんとなく、あれは人間のように見えた。

  

 そして数日後の朝、ニュースで大々的にレインバス社員の自殺がニュースで報じられ、マスコミを賑わわせた。

 当然僕もむさぼるようにニュースをネットなどで見ていたけど、自分が見たことは誰にも言ってない。

 言う相手が僕にはいないからだ。


 それから数日後の早朝、僕は天使に出会った。

 少し茶色がかった縦巻きロールの黒い髪がペルシャ猫のように優雅で美しかった。健康的な肌をした美人だった。

 僕はその人に一目ぼれしてしまった。

 彼女がレインバス社員であることは首にかけていた社員証で理解できた。

 色んなネットを検索して、GAMに辿り着き、彼女の名前が犬伏真希という人らしいことが明らかになった。


 以来、僕は毎日犬伏さんで具足を慰めている。

 生きがいが、一つだけ増えた。

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