第1話Part15『名探偵の妹は登場の仕方も完璧』



網浜蘭:私立晴嵐学園高等学校 校内廊下 朝


 みなさんごきげんよう。私の名前は網浜蘭あみはまらんと申します。この物語の鍵を握る重要人物です。

趣味は料理、特技はけん玉。切れ長の瞳に黒く長い髪を右サイドにまとめています。

 そして私は既に登場している網浜凜の妹です。一体私がこの物語にどう絡んでくるのかそれは読み進めてのお楽しみ。

 ということで本題に入りましょう。

 私が階段を登り廊下に辿り着くと、生徒達が両サイドにさっと引いて一礼してきます。

 まるで気分は大名行列です。去年の聖乙女祭でミス聖乙女に選ばれた私は学園を支配しています。

 教室からボールが転がってきました。人がいい気分で歩いているのに、不遜な輩がおりますね。

 私はボールを拾うと、思いっきりよく窓の外に放り投げてやりました。

 「いってらっしゃいませご主人様ーーーー」

 「きゃーー」

 「校内でボール遊びは禁止ですよ、このバカチン」

 「すっすいません」

 こう見えても私は風紀委員です。学内の風紀の乱れを取り締まるのも私の仕事の一つです。

 私が歩いていると、後ろから声を掛けられました。

 「おい、蘭」

 酒焼けしたような声で私を呼ぶのは生徒会所属の同級生、男装の麗人久原流くはらりゅうです。

 女の癖に男子の制服を着ていて、髪の毛もショートカットです。

 「朝から騒々しいですね、何か御用ですか?」

 「理事長がお前を呼んでたぞ。昼休みに来てくれってさ。」

 「おじいちゃんが? 私を?」

 言い忘れていましたが、この学校の理事長は私の祖父です。

 

網浜蘭:私立晴嵐学園高等学校 理事長室内 昼


 昼休み、私はさっそく理事長室にやってきました。祖父は最近パターゴルフにこっていて、今日もやっておりました。

 「おお、蘭来てくれたのか、ありがとう」 

 「お爺ちゃん、話しって何」

 「うむ。立ち話も何だからソファに腰掛なさい」

 私は言われるがままにソファに座りました。

 「実は最近学内で奇妙な取引が行われているらしくてな」

 「奇妙な取引?」

 「男装した女性の生写真が通貨代わりに使用されているらしいんだ」

 「ほう、面白いですね」

 「笑ってる場合じゃないぞ。学内だけならまだしも、その生写真を取引しているものは他校をまたいで活動しているらしいんだ。

 その生写真を手に入れるために万引きをする生徒まで出てきていてな。これではわが高の名にキズがつく事態になるかもしれん。」

 「それで私に何をしろと」

 「名探偵の妹のお前に生写真を売りさばいているものを特定し、止めさせて欲しいのだ」

 「つまり仕事ということだね。では報酬は」

 「わかっとる。きちんと払うから一刻も早くこの問題を解決してくれ」

 「わかったよ、お爺ちゃん。この名探偵の妹にお任せあれ」

 「よかった頼んだぞ」

 「ところでその現物はないの?」

 「生憎まだ入手できてないんだ。ススガタマという男装した女の生写真らしい」

 「ほう」

 私は元名探偵の姉の妹で、探偵業もしています。仕事内容は多岐に渡りますが、大体は浮気調査と人探しといったところでしょうか。

 さあてと、どうやって解決してやりましょうかね。

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