第1話Part2「痛恨の一撃」
牧野:高校の屋上 昼
私にはヤンキーの兄貴のせいもあって友達がいませんでした。だからお昼ご飯はいつも一人で食べていたんです。
そんないつもの日常に、森羅さんはパンを持ってやってきました。
「森羅さん」
「玉藻、一緒に食べよう」
ここ関係者以外立ち入り禁止だよ、なんて野暮なことは言いっこなしです。私は森羅さんを受け入れました。
森羅さんがお昼に来てくれるので、森羅さんの分の弁当を作り学校に持って行きました。
「ねえ玉藻」
「なに?」
「もしも自分にお姉さんがいたら、どう思う?」
「え、う~ん・・・突然現れたら嫌だけど、嬉しくなくはないかな」
「そかそか」
「森羅さん、それがどうかしたの」
「なんでもない。聞いてみたかっただけ」
そのときの森羅さんはどこか寂しげな表情をしていました。
牧野:ライブ会場 夜
森羅さんとのことで忘れられない出来事が一つあります。
それは私のライブの日のことでした。スペルマスサスペンションズの曲は全て私が作っています。
でも歌うのは兄の魚雅です。私はコーラスを担当しています。
森羅さんが観に来てくれるというので私は張り切っていました。
そしてライブの終盤、私は自分のベースを叩き割って壊したんです。
会場は大盛り上がり。でも森羅さんは違いました。
牧野:ライブ会場 楽屋 夜
楽屋に森羅さんが遊びに来てくれました。私は森羅さんのところにかけよると、
彼女は突然無言で私の頬を叩いてきたのです。
「!」
「おい、うちの妹に何しやがる」
と兄が森羅さんに食って掛かりました。
「楽器はね、ミュージシャンの魂なんだよ。あんな風になるために作られたんじゃないんだよ。
自分の魂を大事にしないロッカーなんて、私は嫌いだよ」
「森羅さん・・・」
そのときの森羅さんの怒りに燃える目は未だに脳裏に焼きついています。
私は森羅さんが喜ぶと思ってやったのですが、逆効果でした。
「森羅さん、ごめんなさい。」
「わかってくれればいいんよ」
森羅さんはいつもの柔和な表情に戻りました。
「じゃあ私が新しいベースを買ってあげる」
「え、本当」
「うん。その代わり、大事に使うんだよ」
「うん。わかった。森羅さん大好き」
私は森羅さんに抱きつきました。森羅さんは照れくさそうにほっぺをかいていました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます