第1話『秋田娘、東京に行く』part1「私が主人公です」



牧野:高校の教室内 夕刻


 どうもみなさん始めまして。牧野玉藻と申します。気になる牧野さんの主人公です。冒頭に第令話part1というちょっとだけ未来の話が差し込まれていますが、それはプロローグとして、これから暫く私の話を楽しんで下さい。


今回は私が大手企業レインバスに入社するまでの物語を語りたいと思っています。

どうぞみなさん最後までお付き合いください。

私は秋田生まれの秋田育ち。冷たい雪国の中で育ちました。中学校までは歩ける距離だったのですが、高校は自転車でも2時間かかるところだったため、私のお兄ちゃん、牧野魚雅まきのうおまさのバイクに乗せてもらってバイク通学をしていました。

私がぼーっと校舎を見ている間、話しかけてくる人はいません。私には友達がいなかったんです。

でも別に寂しくなんてありませんよ。私にはとっておきの友達がいるんですから。

ベーシスト。それが私のもう一つの姿です。

兄のバンド、スペルマズサスペンションズに私はベーシストとして参加していたのです。

気がつけば美形の兄は地元ではちょっとしたスターになり、顔を隠していた私は学校を特定され顔が分かるととくにチヤホヤされました。

結局彼らは私達の音楽に興味があるわけじゃない。私達のこの恵まれた容姿に見入ってるだけなんだ。

そう気づいたときには、サスペンションズは秋田では巨大な存在になっていて、

抜けるに抜けられない状況に陥ってしまっていたのです。


私の実家は寿司屋を営んでいます。なので朝が早く、夜は遅いです。

私は店を守るため商業高校に通い、簿記の知識で実家の財政管理をしていました。

海鮮丼の評判がよく、店は私が東京に来た今も繁盛しています。




牧野:秋田音楽祭 夕刻


 私が上京するきっかけになったのは、素敵な女性との出会いのおかげです。

 彼女の名前は森羅聡里。

 私達スペルマスサスペンションズが初参加した地元の小規模の音楽フェスでトリを飾った人でした。

 彼女はとてものびのある綺麗な歌声で自分の曲を弾き語りで歌い上げました。

 その歌のあまりのクオリティの高さに会場は彼女に釘付け。

 私は森羅聡里しんらさとりに恋をしていました。

 そして音楽祭終了後、私は自分の想いを伝えるため、森羅さんの下へ行ったんです。

 「森羅さん」

 「ん? あらあなたはサスペンションズのベーシストちゃんじゃない」

 「私のこと覚えててくれてたんですか?」

 「今日参加したミュージシャン達はみんな頭に入ってるよ。それで私に何か用?」

 「あ、あの、今日の森羅さんのパフォーマンス、感動しました。私も森羅さんみたいになりたいと思いました」

 「そう、ありがとう。」

 「あの、よかったら連絡先交換しませんか」

 「ええよ」

 そして私と森羅さんはお互いに何でも話せる仲にまで発展していきました。


牧野:映画館前 早朝


 夏のある日のことです。私は森羅さんと二人で映画を観に行くことになりました。

 せっかちな私は当日の5時間前に現場入りしてずっと森羅さんの登場をまっていました。

 流石の森羅さんもこれには驚いたようで私のことを

 「あんたいらちだね」

 と言って来たんです。私はその方言の意味が分からず聞き返しましたが、森羅さんにはぐらかされてしまいました。


※いいね、★、レビューを下さった方々の作品は多少遅れても必ず読みに伺います

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