第令和Part12『牧野玉藻は危ない女』
長畑:社宅384号室内 リビング 夜
長畑だ。東矢たちの協力もあって、牧野さんの引越し作業は無事終わり、今は引越しそばを食べているところだ。
犬伏は自分の社宅でせっせとから揚げをあげている。
長畑「うん、美味い。シコシコしてる」
東矢「これどこで買ったの?」
牧野「地元の店です」
東矢「地元ってどこ?」
牧野「秋田です」
牧野さんは秋田県の出身らしい。どうりで肌が白いわけだ。年間日照量が極端に低いらしいし、
秋田美人を作るには格好の場所だろう。
東矢「あれ、ということは指野さんも秋田?」
牧野「いえ、美咲ちゃんは北海道の室蘭ですよ」
指野さんのことをこの中で美咲ちゃん呼ばわりするのは牧野さんだけだろう。
長畑「指野さんの紹介で入社するんだよね。やっていける自信ある」
牧野「はい。気合と根性は誰にも負けませんから。皆さんの足をひっぱらないよう頑張ります」
牧野さんはガッツポーズをしてみせた。こいつは頼もしいな。
犬伏「から揚げあがったよ~~」
東矢「おっ待ってました」
牧野「犬伏さんから揚げ得意なんですか」
犬伏「うん。から揚げ県、しょうゆの消費量日本一の県出身だからね」
牧野「それどこですか」
犬伏「大分だよ」
牧野「犬伏さんって大分出身なんですね。美人なのもうなづけます」
犬伏「やだなあ、もっと言ってよ」
あんまり言わないほうがいいぞ、牧野さん。
犬伏「今日は本来はから揚げパーティーの予定だったけど、急遽引越し祝いになっちゃったね」
東矢「まだおルリさんが帰ってきてないけどね」
犬伏「ルリはGAMの集いで遅くなるって言ってたよ」
東矢「運動会の催し物決めだっけ? 一体どうなるんだろうな」
牧野「あの、運動会って何ですか?」
犬伏「レインバス社内部署対抗大運動会のことだよ。牧野ちゃんも出るよね」
牧野「えーー運動会をやるんですか、ここの会社は。勿論出ます」
犬伏「よし、良い返事だ。職場に入ったら指野さんのところに連れて行ってあげるからね」
牧野「はい、よろしくお願いします」
牧野さんは従順な犬のような子だな。
日下:社宅384号室内 リビング 夜
日下です。家に帰ったら無人だったので、牧野さんのところに来てみたら、三人羽織がそろい踏みでした。
犬伏「あら、ルリ。お帰り」
日下「お帰りじゃないわよ、あんた達何してんの」
長畑「引越しが終わったので新人さんの歓迎会をしてるんだよ」
日下「ふーん、随分早く終わったのね」
東矢「そんなに荷物があるわけじゃないから早く終わったんですよ」
日下「なんだ。指野さんに手伝ってあげてほしいと頼まれたのに、あたしの出番はないわけね」
東矢「あるよ。ビールを買ってくるというミッションが」
日下「それならほら」
あたしはビニール袋に入ったビール缶を見せ付けた。
東矢「おお流石おルリさん気が利くね」
あたしは東矢にビールを渡すと、早速噂の牧野さんと対面した。
うわっなにこの生き物。超可愛いんですけど、ショートカットが似合う子って美人よね。
でもそれは美人のレベルを超えている。普段指野さんで慣らされてるから大して驚かないと思ったけど、
凄いわ、これは。
日下「始めまして、秘書課の日下ルリよ、この三人とは同期なの」
牧野「あ、あなたが指野さんが言ってた日下さんですか」
日下「え? 指野さん何て言ってたの」
牧野「職場で何かあったら最初に日下さんを頼れって言ってました。」
くーっ、指野さん、いいこと言ってくれるじゃない。
日下「指野さんそんなこといってたんだ。確かにあたしは元営業事務だから、
仕事で分からないことがあったら何でも聞いてね」
犬伏「あたしにも聞いてね」
割り込むな、真希。
日下:社宅384号室内 リビング 夜
引き続き、あたしよ。
引越しが終わったみたいだけど、この子はこの物件が事故物件だと知っているのかしら。
指野さんのことだからきちんと説明はしてると思うけど、怖いのであたしが聞くわ。
日下「ところで牧野さん、すごい度胸よね。ここ事故物件なのに住むなんて」
犬伏「ほんとだよ。すごい根性」
東矢「試される精神力」
牧野さんはぼーっとした表情であたし達をみるだけだった。と思ったら口を開いた。
牧野「事故物件って何ですか」
なんだとう!
日下「部屋で事故や事件が起きて人が亡くなったりした部屋のことをそういうのよ」
牧野「ああ、小野木佳代さんですか。」
む、どうやら指野さんから聞いてるみたいね。流石指野さん、ぬかりない。
牧野「彼女の部屋なんですよね、ここ。だからきたんです。私、霊感強いんで」
なんだか話が横道にそれそうね。聞いてはいけなかったかもしれない。
東矢「霊感強いって、幽霊とか見えるの」
牧野「はい。幽霊の友達もいます」
オカルト! こんなに可愛いのにオカルト少女。あたしは脱力した。
牧野「美咲ちゃんに言われたんです。小野木さんから犯人を聞いて欲しいって」
日下「あは、あはは、そいつはすごいわね。ちょっと急用を思い出したから帰るわ」
牧野「あっはい、ありがとうございます」
日下「どうしたしまして」
牧野玉藻18歳。危ない女リスト行きよ。
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