第令和Part10『気分は引越し♪』
長畑:自宅前 321号室 夜
ふう、今日もようやく一日が終わった。と俺が安堵していると、
向かいの部屋から人の話し声が聞こえてきた。
向かいの部屋といえば例の事故物件だ。もしかすると体調が悪いのかもしれない。
東矢「よう煉次朗」
向かいの部屋から東矢が出てきた。
長畑「東矢。何やってんだ、そこ事故物件だぞ」
東矢「今日から新人さんが入居するんで引越しの手伝いしてるんだよ」
長畑「何?」
俺達が話していると、事故物件の部屋の奥から誰かが手招きしているのが見えた。
長畑「おい勘弁してくれ、俺はまだ死にたくない」
東矢「落ち着け、今日面接に来た子だよ」
今日の面接に来た子。何人もいるから一人に絞りこれないけど、あの子というから
女の子なんだろう。
長畑「わかった。着替えたら俺も引越しを手伝うよ」
東矢「サンキュ。荷解き頼むわ」
牧野「荷解きお願いしま---す」
奥から女の子の声が聞こえてきた。ということはやっぱり女の子なんだろう。
犬伏:自宅前 321号室 夜
犬伏です。ようやく帰ってきました。向かいの事故物件の部屋が何やら騒がしいですね。
あたしも早く応援にいかないと。
長畑:社宅321号室内。
長畑だ。今新人さんの荷物の荷解きを手伝っている。空になったダンボールを潰して小さくまとめている。
東矢は新人さんの言うとおりの場所にちょっとした家具やインテリアを置いている。
テーブルの上にはインコの入った鳥かごが置かれている。
牧野「彼女は私の友達なんです」
新人さんはインコを指差し、俺にそう言うと、インコを鳥かごから出してくれた。
インコは新人さんの手をつつきつつ腕にしがみついている。
牧野「はは、くずぐったい」
長畑「そういえば自己紹介がまだだったね。俺の名前は長畑煉次朗。営業事務の人間だ」
牧野「私は牧野玉藻です。どうぞよろしくお願いします」
長畑「よろしくね、牧田さん」
牧野「いえ、牧野です」
長畑「ああ、ごめん、牧野たまみさん」
牧野「いえ、玉藻です。私の名前は牧野玉藻! ちゃんと覚えてください」
いけね、怒られちった。
長畑「はは、ごめん。俺、人の名前覚えるの苦手なんだ」
牧野「人の名前はちゃんと覚えないと駄目ですよ」
長畑「そうだよね」
牧野「そうですよ」
そう言うと、彼女、牧野さんはインコを鳥かごに戻した。
牧野「それにしても手伝ってもらってうれしいです。ありがとうございます。
あ、引越しが無事澄んだら引越しそばを食べましょう。私スーパーでそばを大量に買ってきたんで」
東矢「おういいね。もうじき終わるから、今日の晩飯は引越しそばだな。う~ん、気分は引越し」
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