第令和 part8『事故物件へお引越し』

長畑:営業事務課 夕刻


 長畑だ。今日も無事に一日が終わった。これから家に帰ろうとしているところだ。

犬伏「ねえ、煉次朗。今日のから揚げパーティー、新人さんが入居してからにしない?」

長畑「え? 犬伏はそれでいいのか」

犬伏「うん。さっき東矢君とも相談して、そうしようって話になったの」

長畑「じゃあ今日の夜は?」

犬伏「適当に食べちゃって。あたしGAMの運営本部に行って遅くなると思うから」

 やれやれ。犬伏は本当に強引だな。今日はから揚げの腹になっていたんだけどな。しょうがない。久しぶりに外食するか。


東矢:社宅マンション前 夕刻


 東矢だよ。真希ちゃんと相談して、今日のから揚げパーティーは延期になった。

新人さんの歓迎会に一緒に行うらしい。ということは新人が家に上がるってことだよな。

まずいな、部屋が散らかっているから片付けておかないと。

ん? マンションの前にトラックが止まっている。まさかもう引っ越してきたのか。

行動早いな、新人さん。

牧野「あ、その椅子は部屋の奥においてください」

引越し業者と話をしているみたいだ。いっちょ手を貸してやるか。

東矢「良かったら手を貸そうか、お嬢さん」

牧野「え? いいんですか。というかあなたは?」

東矢「俺の名前は東矢宗継。キミの向かいの部屋の住人で、営業部の人間だよ。」

牧野「向かいの部屋、営業部・・・はっ新しい職場の先輩さんですね。私、牧野玉藻といいます。

 どうぞよろしくお願いします」

 可愛らしくお辞儀をして牧野さんは俺を見つめてきた。

 やばい。

 こいつは噂以上の可愛さだ。これが入社してきたら社内の猛獣共が一斉に動き出すぞ。

 そうはさせるか、牧野さんはこの東矢宗継が後ろ盾になって守ってやらなくてはな。

 いや、すでに彼女には指野美咲という究極の後ろ盾がいるんだった。彼女の従姉妹にちょっかい出したら

 GAMメンバーが黙っていないだろう。

牧野「あの、引越し作業に戻ってもいいですか」

東矢「おう、そうだ。俺も手伝うよ」

 俺はトラックから重そうなダンボールを取り出して彼女の家まで持ち運ぶことにした。

 一瞬トラックの中にギターケースが視界に入ったが、まさか彼女の物なのか?



東矢:社宅384号室内。


 重いダンボールを牧野さんの家の中に運んだ。既に室内はダンボールでいっぱいだ。

こりゃあしばらくはダンボールが友達になりそうだな。それにしてもこの部屋、勢いで入っちゃったけど、

事情を知ってるものからすれば入りずらいし、寒気がするよな。

牧野「手伝っていただいてどうもありがとうございます」

東矢「いやいや、礼にはおよばん。業者一人じゃ中々大変でしょう」

牧野「そうですね。でも今度私の従姉妹が仲間を連れて片付けに来てくれるんですよ。」

東矢「あら、そうなの」

牧野「はい。だからそれまでの辛抱です」

東矢「そうか、それはよかった。」

 従姉妹っていうのはまさか指野さんのことかな。彼女に会えるのか。俺も手伝おうかな。

東矢「よかったら俺も手伝うよ」

牧野「いえ、大丈夫です。なんか大所帯で来てくれるそうなんで」

 あ、そうですか。そいつは残念。

牧野「今、お茶入れますね」

東矢「いやいや、そんな気遣いは無用だよ」

牧野「そうですか」

東矢「俺は家に帰るよ、といっても向かいだから。今度仲間も紹介するよ」

牧野「ありがとうございます」

 牧野玉藻ちゃんか。礼儀正しくて良い子そうじゃないか。流石指野さんの従姉妹。


長畑:営業事務課 夕刻


長畑だ。今日も無事に一日が終わった。特に残業することもないのでこれから帰ろうと思う。

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