第令和part6『自立は大事』

東矢宗継:品川駅構内 午後


俺の名前は東矢宗継とうやむねつぐ。PC、モバイル端末販売大手株式会社レインバスで営業職をしている。

ただいま絶賛外回りが終わって帰社するところだ。今でこそ営業職に甘んじているが、

俺にはミュージシャンになるという夢がある。25歳。色々ギリギリだけど、諦めたくはない。

友達と組んでるバンドはイマイチしっくり来ない。俺はギターなんだが、キーボードも弾ける。

まあ悶々と悩み多き日々を送っているのだ。

とりあえず今日の仕事はあらかた片付いた。オフィスに戻ろう。

そう思っていた俺の視界にめちゃくちゃ可愛い女の子が入ってきた。

信じられない。ショートカットに桜色の唇に髑髏の髪留めをしている。

その髪留め、ひょっとして彼女はメタル系が好きな女の子なのだろうか?

ひょっとして芸能人の卵か何かか?

落ち着け、落ち着け東矢。女の子一人に魂を揺さぶられてどうするよ。

しかしすれ違いざま、シャンプーの良い香りがした。これはキクね。

思わず振り向いて後頭部を確認して去っていく姿を見てしまった。

こういう出会いがあるから人生は楽しいんだよな。

   


東矢宗継:営業部 午後


引き続き東矢をお楽しみください。レインバスの営業部に帰ってきました。帰社早々おしゃべり糞野郎女の犬伏真希ちゃんが

俺を待ち構えていた。

犬伏「東矢君、知ってる?」

東矢「何を」

犬伏「今度うちの営業事務課に新人が入るんだけど、その子が超可愛いの」

東矢「ほう」

犬伏「しかもまだ18歳なんだって。驚きだよね」

東矢「18歳?! よく採用したな」

犬伏「指野さんの従姉妹なんだよ。でも仕事は即戦力でいける子みたいだよ。商業高校卒業してるから」

東矢「へえ、人の顔にうるさい真希ちゃんが可愛いと言うんだから相当なんだろうな」

犬伏「東矢君、顔見たら卒倒するかもね」

東矢「そんなわけねーだろ」

犬伏「しかも噂ではあたし達の向かいの部屋に越してくるらしいよ」

東矢「何? マジかよそれ」

犬伏「マジだよ。さっきルリから聞いたもん」

東矢「ひええ・・・あの事故物件に、ついに新しい入居者が」

犬伏「本人は知ってるみたい。家賃が安いから入居したいんだって」

東矢「おいおいおいおい、いくら家賃が安くても、流石にあそこには入らんでしょう、普通」

犬伏「でしょ、彼女ちょっと変わってるよね」

東矢「ああ、だいぶ変わってるよ。それで入居する日はいつなの?」

犬伏「まだ決まってないみたいだけど、そんなに遅くはならないよ」

東矢「指野さんの従姉妹なら、指野さんの家で暮らせばいいじゃん」

犬伏「なんか指野さんは彼女に自立心を植えつけたいらしいんだよね」

東矢「なるほど、自立心ね」

 確かに自立は大切だよな。

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