第令和Part4『事故物件へGO』


犬伏真希:営業事務課 午後


 犬伏です。先ほどの女の子の件、沖田課長に聞いてみようと思います。

犬伏「課長」

沖田「あら何? 真希ちゃん」

犬伏「先ほど面接していた女性の合否を知りたくて」

沖田「そういえばあなたに直接影響することだもんね。合格よ。来週から来てもらうわ」

犬伏「本当ですか、ありがとうございます」

沖田「いえいえ、これから真希ちゃんも先輩になるんだから、ちゃんと彼女を指導してあげてね」

犬伏「はい、わかりました」

 くうー、生きててよかった。今は最高に幸せです。今まで激務だったけど、これで少しは楽できそう。

 問題は彼女がどれだけ出来る子かということ。指野さんの縁故とはいえ沖田課長が丸を出した子だから

 多少は出来る子だと信じたいけど、ちょっと不安。

沖田「そうだ。彼女来週にも社宅に住むのよ。あなたたちの向かいの部屋に」

犬伏「え」

 あたし達の向かいの部屋って、小野木佳代先輩が自殺した部屋、つまり事故物件じゃないですか。

犬伏「どういうことですか、あそこは事故物件ですよ」

沖田「本人がそれでもいいって言ったのよ」

 嘘でしょ。信じられない、どんな神経してる子だろう。

 あたしはとぼとぼ歩きで自分のデスクに戻りました。

長畑「一体課長と何話していたんだ」

犬伏「例の新人さんの件。」

長畑「それで」

犬伏「彼女、あたし達の向かいに引っ越してくるんだって」

長畑「なっなんだって、それは本当か」

犬伏「哀しいですが本当らしいのです」  

長畑「事故物件てのは」

犬伏「説明済みのようです。」

長畑「人が入ってくれるのは嬉しいけど、あの部屋は小野木さんが殺された部屋だからな。

 まだ警察も動いているし、人を住まわせるには早いんじゃないかな」 

犬伏「あたしもそう思う。ちょっと今日指野さんに会って話してくるよ。遅くなるからご飯いらない」

長畑「ああ、頼んだぞ」

 さあ大変なことになってきた。指野さん一体何を考えているんだろう。彼女の真意を探らなきゃ。

 さっき秘書課に行ったけどいなかったから終業後にGAMの集いに参加するしかないな。

 あたしも一応GAM運営本部の人間だし、顔出しておくのは大事なことだもんね。

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