第令和part3「愛と信頼と実績のS」
日下ルリ:秘書課 昼
皆さんがどう思っているのかは知らないけれど、私にとって人生で一番大事なものは人との出会いだと考えている。私の名前は日下ルリ。愛と信頼と実績のSよ。大手企業レインバスの秘書課に勤めるしがないOLよ。とはいっても秘書課に来たのは今年度からで。その前はずっと営業事務にいた。同期で秘書課志望の犬伏を差し置いて何で特に希望していなかった私が秘書課に選ばれたのかは分からない。ここに来ての一番の幸せは指野美咲という完璧な女性と一緒に仕事が出来ること。
彼女は容姿端麗、高学歴、高校時代は陸上で全国大会に出るほどのスポーツマンと隙がない。社会人サークルGAMの副代表で、秘書課のエース。え? 代表は誰かって。いい質問ね。今、GAMは代表が空位になっているの。つい最近、GAMの代表の
私はその言葉に感激した。指野さんは私達の希望の星だ。そんな彼女の従姉妹がどうやらレインバスに契約社員として入社するらしい。指野さんのコネクションだから面接に落ちるということは余程のことがない限りないはずだけど、ちょっと心配。
そんなことよりお仕事、お仕事。
さっきの来客者、出したお茶と和菓子を一口も口にしなかった。ひょっとしたらコーヒーと洋菓子の方がよかったのかもしれない。次回の来客時はコーヒーと洋菓子を用意しよう。私は秘書課共有来客者虎の巻にその情報を記しておいた。
犬伏「ルリー」
私が仕事に夢中になっているときに能天気な声が聞こえてきた。犬伏だ。ほんとにフラフラここにやってきて、一体何の用なのよ。
日下「何、今日の夕食ならいらないわ。GAMの集いで食べるから」
犬伏「そんなことじゃないよ。新しい新人さんのこと」
日下「ああ、指野さんの従姉妹のこと?」
犬伏「そうそう、ねえ、名前は? 年は? 可愛い? 髪の毛サラサラ?」
日下「名前は確か牧野玉藻。18歳で指野さんの従姉妹らしく可愛いわよ。髪の毛がサラサラかどうかは知らないわ」
あたしと犬伏真希は同期で同じ釜の飯を食うルームメイトだ。とはいっても仲はあまりよくないし、喧嘩も多い。それもこれもこの犬伏が部屋の掃除をさぼったり、人のものを勝手に食べたりするからで、私には一切の非がないの。
もう本当に犬伏真希という女は容姿以外はまるで駄目な干物女なわけ。私と同じ同居人の長畑君と東矢君も彼女にはきっと辟易していると思う。いくら顔が良くてもこれじゃあ男はよりつかないわよ。長畑君のことが好きらしいけど、愛されたいならもっと努力が必要ね。
日下「それで何の用?」
犬伏「特に用はない。新人のことが気になったから聞きにきただけ」
日下「あのねえ、あんたって人は」
犬伏「だって彼女はあたしのサポートをしてくれるんでしょ? あたしにとっては一大事だよ。これからは先輩として仕事も教えていかないといかないし、人間関係的に年も離れているから上手くやっていけるか不安でしょうがないんだよ」
日下「まあ確かにあんたの気持ちは分かるけど、そういうことはあたしより指野さんに言った方がいいわよ」
犬伏「それもそうね。で、指野さんは今どこ」
日下「さっき専務と出かけた。」
犬伏「いつ帰ってくる?」
日下「そうね、四時過ぎってところかしら」
犬伏「あー、駄目だ、あたしそのとき超忙しいわ。仕事が終わったらいるよね。また後で来るね」
日下「はいはい」
まったく、秘書課はあなたの遊び場じゃないのよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます