第66話 3人の転入生

 

 Aクラスの面々は、各々に心配しながら学院長室の扉をノックした。


 第66話 3人の転入生


「みなさんお入りなさい。」


 学院長室から、副学院長の声が聞こえ大きなドアが音もたてずに自動で開く。


 Aクラスの10名は、まだ緊張した顔で一人ずつ一礼しながら入っていく。すると、学院長先生の机の前に、副学院長が立っておりその横に3名の見慣れない学院の制服を着た者たちが見える。


「みなさん揃ったのぉ。まずは、この者たちを紹介しておこう。男子学生はユウキ君。女子学生たちは、双子で見分けにくいがユキさんとフユさんじゃ。」


 副学院長から、紹介された3名は、それぞれ会釈し挨拶する。カルロスは、魔法使いを目指しているだけあって、ユウキと呼ばれたものから、異常な魔力を感じ取っていた。また、その横にいる双子からもユウキほどではないが、Aクラスの全員で束になってもかなわないであろう魔力を感じた。


 学院長から、Aクラス10名の紹介もされた後、


「ふふふっ。Aクラスの優秀な子たちでもさすがに戸惑うのね。」


 全員の中央に突然学院長のガーネット・シルバーその人が現れる。

 副学院長しかいないと思っていたAクラスの全員が、鳩が豆鉄砲を食ったような表情でガーネットを見ている。学院長に会った者は、Aクラスの中でも誰も居らず、肖像画はあるため顔は知っていたが実物が現れ伝説ではなかったのだと誰もが思っていた。


「さて、ここからは私が説明しますわ。」


 学院長が、ユウキたちのことを説明する。ユウキが、歴代最年少で王都オルタナスのギルドで初の『ゴールドホルダー』であることは伏せて話をしている。

 ユウキも、その話は触れないほうがいいのだなと、空気を読み学院生活では自分からは離さないよう気を付けることにした。

 編入試験の結果を10名に示しながら、優秀であり、久しぶりに学院長がSクラスを創設する気になったことを話していた。


「なっ!!なぜですかっ!確かに成績は良いと思いますが、私がっ1位を取って維持しているにもかかわらずSクラスの話も出なかったというのにっ!!」


 メルと呼ばれていたエルフ族の、顔立ちのとてもきれいで長い緑の髪の毛を三つ編みにしている女生徒が、顔を真っ赤にして学院長に文句を言っている。学院長は、彼女をなだめながらも、絶対的権限を持ってSクラスの設立と、ユウキ、ユキ、フユとAクラスの上位10名をSクラスに編入させること。

 Sクラスは、いつでも、それ以下のクラスからの挑戦を受けることになることなど話をする。


 後日、学院内の掲示板にSクラス設立とSクラスに入るための条件が表示された学院長名のサインが入った文書が掲示され、しばらく学院内の生徒たちの話題をさらっていた。



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