第67話 舞姫と春姫


 第67話 舞姫と春姫


「ねぇねぇ!舞姫お姉ちゃん!!今日は、学院ですぅぅごぉぉい!!やばいことがあったんだよぉぉぉ!!!」


 夕日の茜色の光が差し込む夕暮れ、任務が休みであった舞姫はソファーにくつろぎ、コーヒーを飲みながら王都内で唯一、倭国の衣装を扱っている【幻孤堂本店】のカタログを眺めていた。忍者の衣装や、武器は武器屋や防具屋で入手できるのだが着物や小物などかわいいものを取り扱っているため舞姫はお気に入りであった。


 舞姫は、普段は忍者衣装が多く、普段着でも愛用しているためおしゃれな服装に興味が無さそうであったが、

『ユウキ様とデートするにはこういう服もいいわよね。』など妄想しながら眺めていた。

『着物だったら・・・お食事行って、宿屋に行って、お酒を少し飲みながら・・・いい雰囲気になったら・・・帯をユウキ様にほどいてもらって・・・。』

 せっかくいいところまで妄想していたところに、慌ただしく春姫が返ってきたため先ほどまでの楽しい気分が台無しである。

「ちょっと、春姫!まず帰ってきたら、ただいまと、手洗い、うがいでしょっ!」


 舞姫に怒られた、春姫はペロッと下を出しながら「はーい」っと洗面所へ向かっていった。


 舞姫と春姫の姉妹は、舞姫が学院の臨時講師を務めていることにより、学院の好意で学院内のゲストハウスで生活を送っていた。


「でねっ!お姉ちゃん!うちの学院に編入生が入ったんだよ。」


 春姫が、興奮冷めやらない様子で舞姫の鼻先まで寄ってきて話をする。いつも思うが、姉妹とはいえ、いろいろと距離が近い気がする。寝るときも、お風呂も一緒に入り、家に二人でいるときはいつも隣にいるし舞姫は、気にならないわけではないが、今まで嫌な気分になった事は無い。

『もし、ユウキ様と結婚したら・・・春姫はどうなるんだろ・・・』

『けっ・・・ケッコン!?』『きゃっ><』


 舞姫がまた妄想の世界に入り、手に持っていたカタログを握りしめていた。


「ちょっとぉ~舞姫お姉ちゃん!聞いてるのぉ~?」


 春姫が、顔を赤らめてくねくねしだした舞姫を不思議に思いながら、頭ががくんがくんなるまで両肩をもって揺さぶる。

 ようやく、現実に引き戻された舞姫が続きを春姫に話してもらい、大体ユウキ様のことだろうなと想像していた通りの内容であった。


「でも、Sクラスねぇ~。さすがユウキさm・・・ユウキ君ですね。」


「ん??舞姫お姉ちゃんは、もう、転入生のこと知ってたの?」


 まだ、春姫が転入生の名前を話す前に、舞姫が言ってしまったため春姫が速攻突っ込む。

 そのため、舞姫は、わたわたしながらつじつまを合わせながら春姫に説明しなければならなくなってしまった。


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