第10話 勇者 アーサー
第10話 勇者アーサー
多数の魔族の屍を作りながら、フルプレートを着て大振りのアックスを肩に担いだ身の丈2メートルはあろうかという大男の後ろを、勇者の鎧と呼ばれる青を基調とした装備と勇者の剣と呼ばれる鍔に鳥の羽をかたどった剣を手にした者がいる。
さらに胸と、腰回りにだけ紅い鎧を着け、両手に拳闘の獣と呼ばれる成獣の形をした髪の長い出るところは出て引っ込むところは引っ込んでいる精悍な顔立ちの女性。
深々と黒いとんがり帽子をかぶり、黒いマントを着た出るところも引っ込むところも見当たらない幼女体系の女性が続く。
「重たいよ~。もう、素材持てないよー!」
大きなバックパックを背負った金髪の少女が今にも泣きそうな声を出しながら、ぽてぽてと付いてきている。
「だから、拾わなくってもいいって言ってるでしょ!
捨てていきなよ、最終決戦ってぐらいのところにいるのに素材とかいらないってば!」
幼女体系の魔法使いが後ろを振り向きもせずに、ヒステリックに叫ぶ。どうも、キャラ被りの体型のせいで以前から敵視しているようで当たりがきついところがある。
〝アーサーよ…。″
〝勇者アーサーよ″
突然、天から女神の声が聞こえてくる…。
勇者に目覚めてから、幾度か聞いてきた声である。
大概、この声が聞こえると新たな局面を迎えることが多かった。
今回は、魔王城の周りの魔族をすべて倒し魔王城入口へと進むところ。
きっと、"頑張って世界を救ってください"的な話になるだろうと聞いていた。
〝勇者アーサーよ。ここまでよく頑張ってくれました。ここまでで、魔族を3割も倒してくださりありがとうございました。″
〝勇者アーサーよ。あなたが、魔王城と思っているそこは魔王の手下でも一番下級魔族長であるシュテインベルクの屋敷です。さあ!思う存分戦ってきてください!″
ここまでの道のりは決して楽ではなかった…。
すでに、回復魔法が使える神官は死んでしまい、魔法使いの杖は折れ細い棒きれで魔法を使っている。
聖騎士の左手は肘から下は食いちぎられ、傷口を白い布で巻いていたが赤黒い地で染まっている。
拳闘士も腹部に腸が飛び出すほどの傷を負い、きれいな顔も爪で付けられた大きな傷が赤く3本入っている。
荷物持ちであり補助呪文が使える商人の回復アイテムも残り少なくなっている。
商人が持参したポーションのおかげで、パーティーみんなの傷からの出血は収まってはいるものの、満身創痍である。
それなのに、まだ3割しか倒しておらず、しかも魔王と対峙すると思っていた城はまさかのただの部下の家…。
…笑うしかない状況である…。
「行くか…。」
なんとか、足を動かし進もうとするが…
すでに俺も右目を失い足も、先ほどの戦闘でドラゴンのブレスに焼かれて黒くなっている…。
ドッゴーーーーン!!!
重い扉を聖騎士が、右手に握ったアックスで叩き壊す。
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