第7話 生誕
第7話 生誕
【オルタナス産院】
廊下の長椅子に座る私の周りを、かなり落ち着かない様子で
先日、二十歳の誕生日を迎えたばかりのメイド長が歩き回っている。
「奥様は大丈夫でしょうか・・・?。
もう部屋に入って8時間経ちますが・・・。
あぁ・・・。神さま・・・。」
両手を固く結び、時折その豊満な胸の前で十字を切りながら、歩き回っている。
私も、同じ気持ちではあるものの慌てては見苦しいと自制心が働きおとなしく座っていた。
座っている私に向かって、メイド長は
「ご主人様…。
お腹の中でお元気にされていたので、問題なくお生まれになると思います!
きっと大丈夫ですよ!
あぁ…。神さま…。」
自分に言い聞かせているのか、時折私に話しかけるように心ここに在らずな感じで歩き回っている。
確かに、妊娠がわかってから順調に育っており、最近では手の形がわかるほど妻のお腹の中で暴れていた。
ただ、産道が開いたと聞いてから出産に時間がかかっているため少し不安になっていた。
私も無意識のうちに、メイド長と同じように両手を噛んだ瞬間…。
『…ふっ……』
『…ふにぃ……』
『ふぎゃー!おんぎゃー!』
大きな赤ちゃんの泣き声が聞こえてきた。
「旦那様!
おめでとうございます!
ようやく、お声が聞こえました!」
綺麗に整った顔で、いつもはキリッとした表情しか見せないメイド長が、大粒の涙を流しながらくしゃくしゃになった笑顔で話しかけてくれる。
「あぁ。
アリス。お前にも心配かけたな。
ありがとう。」
メイド長のアリスに、ハンカチを渡しながら労いの言葉をかける。
するとその時
“うわぁぁぁぁあ!!!”
“なっ!ちょっっ!”
ドン! ガチャン! バリーン!
我が子が生まれたばかりの部屋から
言葉にならない驚きの声や悲鳴はたまた物が落ち壊れる、けたたましい音が鳴り響く。
「何があった!!」
ドアを勢いよく開け目にした光景は・・・。
「あぁ・・・・・・?」
「何だこれは???」
そこには、分娩台の上に、
まだ、へその緒が嫁と繋がったままで、
二本足でしっかりと立っている
息子の姿があった・・・。
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