第135話 調査

 城内は、メディアが起こした反逆行為が明るみにで、大騒ぎとなっていた。


 魔族たちの大半は、ジェネラルに命によって魔界へ帰還したが、数名程はエルザ城に残り、城を守っている。


 混乱で一時弱体化しているエルザ王国に、レージュ王国が付け込む事がないようにという、魔王の配慮であった。

 エルザ城が魔王の手中に落ちたと外部に思わせておいた方が、今は都合が良い。


 メディアは、ライザーやミディだけでなく、自分に逆らう重要地位にいる者たちも一部捕らえていた。


 兵士や侍女も、レージュ王国や他国からやって来た者の身元を偽り、エルザ城で働かせていた。その者たちが今回の反逆の際、王や王女の世話や護衛として使われていたようだ。


 色々とメディアが仕組んだ事が明らかになっていく中、ジェネラルとモジュール家兄弟の3人は今、メディアの執務室に来ていた。


「あ~…、こん中から証拠を探すんだよな……。うわ~、めんどくせ~……」


 目の前に聳え立つ本棚を見上げ、アクノリッジがぼやいた。同感だと、シンクが頷く。


「とりあえず本棚にある本は、僕が下ろしますから、お二人はご確認をよろしくお願いします」


 本棚の側に立ち一冊本を取り出すと、苦笑を浮かべてジェネラルが言った。


 ジェネラルたちがメディアの部屋にいる理由、もちろん、今回の反逆の証拠――特に、レージュと関係するものを探す為である。

 他にも捕えられている者、あの男によって人生を狂わされた者、協力者の存在など、まだまだ不明な点がたくさんあるのだ。


 頭の後ろで両手を組んだシンクが、作業の多さにメディアへの不満を口にする。


「あ~…、メディアの奴がさっさと吐けばなあー……」


「仕方ねえだろ。あいつの事だ、決定的な証拠を突きつけない限りは、口を割らないだろうよ」


 部屋の中央にあるソファーに行儀悪く腰を掛けると、アクノリッジはため息をつき、シンクの言葉に頷いた。


 メディアは投獄されている。取り調べも始まっているようだが、彼は沈黙を守っているらしい。

 このままでは埒が明かないと、並行して証拠探しを始めることになったのだ。


 人の手はたくさんあるのだが、不審者が混じる事を恐れ、3人と彼らが信用している人間で行うことにした。が、今はその信用出来る人々も、色々な処理に追われている為、結局3人で始める事になったのだ。


 メディアの部屋には、ぱんぱんに入れられた本棚がいくつもある。それらを取り出し、証拠の品が隠れていないか探さなければならないことに、3人とも途方に暮れていた。

 しかも、1冊の本がやたら分厚い。その事実も、やる気を削ぐ原因となっているようだ。


 アクノリッジは勢いよく立ち上がると、


「まあ、ここでぐだぐだ言ってても仕方ねえしな。そろそろ始めるか」


 自分の両手をバシバシ叩き、言葉と共に気合を入れた。

 彼の言葉に、シンクもジェネラルも自分の気持ちに気合を入れる。


 こうして、部屋の調査が始まった。

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