第76話 真相2

「ミディ!! これは一体どういう…」


 突然のミディの登場に、ジェネラルは唖然となった。


 しかし、


「全て聞かせて貰ったぞ! チャンク!! センシティでの事件は全て、お前たちが仕組んだ事だと!」


 聞きなれぬ男の声に、ジェネラルは慌てて反対側を見た。


 ジェネラルの隣に控えていた護衛が、チャンクに剣をつきつけているではないか。


 突然の出来事に、チャンク自身も状況が読めず、震えながら突きつけられた剣先を見ている。


 主人の危険に、他の護衛たちがジェネラルたちの方に駆け寄ろうとしたが、


「動かないで! あなたたちの主人がどうなっても知らないわよ?」


 笑いを含んだ、しかし鋭いミディの声に、護衛たちの足が止まった。どうしていいのか分からず、剣を構えたままお互いの顔を見合わせている。


 説明を求めるような少年の視線に、気がついたのだろう。ミディの口が開いた。


「ああ、その人ね。バックという方よ」


「バック……? ……あっ!! もしかして、フィードさんのお兄さん!?」


「あんたが妹の恩人だな? ミディから話は聞いている。妹を助けてくれて本当にありがとう」


 チャンクに剣を突きつけた状態で、護衛―バックは、ジェネラルの方を向き礼を言った。

 いきなり礼を言われ、ジェネラルはいえいえと首を振る。が、やはり状況が飲み込めない様子が、表情にありありと出ている。


「まあ、とりあえず、こうして事件の真相が分かったのだから、後は事件関係者を城に突き出せば、解決よ」


 そんな少年の気持ちを落ち着かせようとするように、ミディは軽くジェネラルの頭を叩いた。

 説明不足だという表情で、恨めしそうにミディを見上げるジェネラル。

 

「ふふふっ…、そう簡単にいくかな…?」


 剣を突きつけられ震えていたチャンクが、不気味な笑い声を上げた。


 何言ってるのこいつ、という雰囲気を放ちながら、ミディはチャンクを見る。 


 彼女の視線を受け止めながら、チャンクは口元に何かを含んだ笑みを浮かべた。この女に睨みつけられながら、笑う事が出来るとは、なかなか大物かもしれない。


 自信満々、物凄く生き生きした表情で、チャンクが口を開いた。


「なぜなら……お前たちは!!」


 しかし、ミディのほうが1枚上手だった。


「ここで死ぬんだからな! とか言って床が抜けるのかしら? ありきたりね。そう思わない? ジェネ?」


「………………………」


 チャンクがパクパクと、口を開け閉めしている。

 図星だったらしい。


「人のキメ台詞とっちゃダメだよ、ミディ……」


 先ほどの生き生きとした表情はどこへやら、しょぼーんと影を背負うチャンクを見、ジェネラルはちょっとかわいそうに思った。


 可愛らしい少女が同情した事に、大人としてのプライドが傷つけられたのだろう。

 チャンクが悔しさを、座っている椅子についている1つのボタンに叩き付けた。



 ガシャンっ!!!



 何かのスイッチが入る音が、響き渡った。


「いけない!! 逃げろ!!」


 その異変に気がついたのは、バックだった。

 チャンクに突き付けていた剣を放り出すと、ミディの腕を掴み自分の方に引き寄せる。

 ジェネラルもチャンクが何をしたのか、気がついた。


 しかし誰も、逃げる事は出来なかった。


 なぜなら、部屋の中央に裂け目が入ったかと思うと、部屋全体の床が抜けたのだ。 


 一部だけ抜けるならよく作られる仕掛けだが、部屋全体の床が抜けるなど、ミディでも見たことはない。


 大は小を兼ねると言うが、大にも程がある。


 ついでにこの部屋にあった装飾品類は、地面に打ち付けられているのか、床にくっ付いたままぶら下っている。


 その辺ちゃっかりしているのが、この屋敷の主のセコさだろう。


「何、無意味にこんな巨大な仕掛け作ってるのよ!! 加減というものを知らないの!?」


 ミディの突っ込みを残し、ジェネラルたちの体は下へ落ちていった。

 

 固定された椅子に座り落下を免れたチャンクの笑いが、部屋に響き渡っていた。

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