井上 良太 (20) ③

 階段を上がり、研究室の前へ着いた。ノックをして中に入る。

「失礼します、理学専攻の井上です」


 ドアを開けるとそこにいたのは、予想していた人物ではない、別の人物が立っていた。

「ようこそ、井上君、君がきてくれて僕はとても嬉しいです。」

 喋り始めて近づいた所で、俺はやっと誰だか分かった。


「石丸先生…?専門は脊柱ですよね、確か案内には、股関節と…」

「股関節と聞き、木村先生だと思いましたか?これは失礼しました。まぁ狙い通りですがね、ククク…」


 石丸先生が奇妙な笑いを浮かべている様子を見て、ただのヤバイ感じの変わった先生としか思わなかったが、俺はいつのまにか数人に囲まれていることに気づき、普通でない状況だと察した。これは、どういう…。思わず後ずさりすると、周りの空気が不穏な様子へと変わったことを察知した。


「石丸先生、これは…」

「ククク、これから話すことは他言無用でお願いしますよ…」


 先生の不敵な笑みに、背筋がゾッとした。これはまずいかもしれないと思ったと同時に、

 ガチャっ、と鍵の閉まる音がした。


 続

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