黄金の城
第2話 プロローグ
1-調査員の手記
1日目。とある財閥の依頼を受けて「黄金の城」なるものの調査が開始。
リーダーはあまり気乗りしていなそうであったが、多額の依頼金を前に断ることができなかったそうな。
列車からバスへ乗り継ぎ、ガイドの案内で深い森を抜けた我々は計12時間ほどかけてようやく到着した。
ジャングルとでも言えるほど鬱蒼とした森、その奥地に構えた街は不自然なほどに発展しており、また様々な人種の者たちがいた。
しばし消沈していたリーダーも、この街へ来てから少しテンションを取り戻したようだ。
2日目。黄金の城に関する聞き込みを開始。予めアポイントを取っていたので、私とリーダーは調査の許可を取るためにここら一帯を取り仕切るの支配人の元へ。残りのメンバーは街での聞き込み調査を担当した。
リーダーと私は無事、許可を取ることに成功。帰る前にその従者たちへと聞き込みをした。
やはり黄金の城は街でも有名らしく、色々と興味深い話を聴くことができた。大きな手がかりを手にし、リーダーはご満悦。その日は早めの祝盃が挙げられた。
3日目。
遂に、城の中へと調査を開始。大きな城に伴う膨大な部屋数。迷子にでもなりそうなほどだったので、皆で内部を見て回り、計画を立てる。今日はそれだけで一日が過ぎてしまっていた。明日からは一人一人が別行動となる。
これからに不安と、辟易とした思いはありつつも、しかしここまで来たからには後へ引き返すことは出来ないのであろう。
日目。「黄金の城」はあった。
4日目。
各員はそれぞれの担当範囲を探索。全ての部屋を見て回ったが、黄金らしいものやその手がかりとなるものは何もなかった。しかしそれは当然とも言える。
黄金がポンと置いてあったらそれこそ、どこかの誰かに持ち去られよう。
街の住民たちの噂では、城には隠し通路があるらしく、この探索の肝がそこになることは既に把握済みであるからして、ここからが本番、といったところであろう。
日目。「黄金の城」はそこにあった。
城へと足を運ぶようになってから7日目。
調査は進展せず、聞き込みや膨大な数の部屋の探索に追われる日々。
皆の雰囲気がどんよりと重くなってきた頃、リーダーが街の流行病にかかってしまい、調査隊の面々を残して、早々に脱落してしまった。
その際、リーダー直々に私が次の指揮を取るようにと言われてしまった。正直なところ、不安であった。しかしここで成果を上げることができれば、上にのし上がることも可能だろう。
ここが私の踏ん張りどころだ。
日目。「黄金の城」はここにもあった。
10日目。誰かのいたずら書きが残されていることに気づいた。「黄金の城」があったなどと書かれているが、「黄金の城」の「黄金」に関して未だ発見には至っていない。
ほかの調査兵たちも完全に士気を失っており、今では会話すらもほとんどしていない。
どうにかこの空気から脱却しなければならない。明日から始まるらしい祭りが皆の気晴らしになればいいが…。
日目。「黄金の城」はあるのに。
皆、居なくなってしまった。城も、街も、仲間たちも。いずれ俺も消し去られてしまうだろう。こんな状況だというのに、やけに心が静かなのは多分、諦めからなのだろう。
もし誰かがこの記録を見たなら、どうか伝えて欲しい。黄金の城など、どこにもない。いや、それどころか、ここには何もない。なかった。
どうしたらいいのか分からない。帰る道もいつの間にかなくなってしまっていた。いや、なくなったというよりは分からないという方がいいのか。
何も分からない。何も分からない。
日目。「黄金の城」は今もある。
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