第11話 テロ

 時刻表通りに来た列車へ乗り込み、切符に指定された座席へ座る。

 乗り入れが終わると動き出し、あとは空港近くの駅で降りるだけ。

 列車は三両に貨物が二両の五両編成。鈍足だが、それでも車よりは速い。

 ソラとクウはトイレに向かい、リクとカイは持参した弁当を取り出し、なんちゃって駅弁に舌鼓を打つ。

「全員動くな!」

 発砲音が車内に轟く。

 列車強盗だ。

 アサルト・ライフルと自動拳銃で武装し、覆面で素顔を隠した五人組が、前後の出入り口を塞ぐ。

 一両につき十人、計三十人くらいだろうか。

 乗客は多い。座席の七割が埋まっている。これは他の車両も同じくらいなので、一人一人から財布を奪うと、それなりの金額になるだろう。

「……飯マズだな」

「まだ肉しか食べてない」

 前後の二人が乗客の一人一人を調べる間、前後の三人で他の乗客を警戒していく。

「金を出せ」

「……くそっ」

「そっちのお前もだ」

「腕時計しか無い」

「寄越せ」

 金が無いなら持ち物を、何も無ければ命を。盗った物を袋に詰め、前後の仲間へと通路を滑らせる。

「お前等は、弁当か。寄越せ」

「……どうぞ」

 リクとカイは食べ掛けの弁当を差し出す。

 その場で適当なオカズを食べ、強盗二人は向かいの席へ。

 カイはそれとなく、窓から景色を見て、瞠目する。

「……っ!」

 ソラが列車の直ぐ側を、爆走していたのだ。

(速いって知ってたけど、そこまで速いんだ)

 ダチョウ寄りのハーピー、そのハーフなので飛べない。変わりにとても速く、空気抵抗や慣性の法則を、種族特性と無意識での身体強化魔法で克服している。

 走っている時に限るが、銃弾すら効かない。空気抵抗に干渉する障壁が、そのまま防御障壁にもなっていた。

 強化された心肺機能と筋力により、スタミナや脚力も上がっている。

 カイの反応を怪しんだリクが、外を見ようとした刹那、走行の進行方向である前方から銃声。

 カイ達は三両目に乗っており、四両目は貨物だ。

 車内に緊張が走る。

 が、リクは顔の向きをそのままに、絶句していた。

 後方の強盗達は、後ろのドアが勢い良く空いたので、咄嗟に振り返る。木の腕が、足が、浮遊したまま飛び出して、火器の向きを反らした。

 それに気付いた前方の強盗達が撃つ。射線上に仲間が居ても、または乗客に当たろうと、関係ない。

 仲間が死ねば、取り分が増える。乗客が死ねば、他の乗客から攻撃される。強盗をする以上、殺されるのは覚悟もしている。

 何より、この車両を除いて、銃声は威嚇以外していない。つまり、他の車両に居る仲間達は、アクシデントが起こったと知り、次々と逃げ出しているはず。

 置いてけぼり、というか、何かあったら捨て駒として、仲間の誰もが残される。

 逃げなければ、稼ぎ処か命が無い。そして、誰かが残らないと、仲間達への時間稼ぎにならない。

 そう、犠牲や囮は折り込み済み。

 ここまでやっても、逃走の成功率は三割だ。最初に、強者へ銃口を向けつつ脅したら、最早そこで失敗となる。

 逃走に移る瞬間、金品を奪う最中、乗客が即席の連携で、強盗達を返り討ちにする事だってある。

 最後はアジトとなる場所を、軍や警察、冒険者ギルドが襲撃してくるモノ。

 通路の二人は誤射で死に、後方の三人は、ガイスト・アーマーの拳と蹴りで沈む。持っていた火器は分離した手足が邪魔で、銃弾は見当違いな方向へ。

 その間、カイが略式詠唱による暗黒魔法を、残った三人の強盗へと放つ。

 突然の暗闇に三人は驚いて、攻撃されまいと乱射し、手近にいた乗客を次々と殺していく。

 通路を真っ直ぐ通り抜け、クウに凶弾が迫るも、ガイスト・アーマーの板が続々と射線上にわって入り、被弾させないように遮る。

 次に、リクが分離したメイルを、自律行動させつつ盾にし、真後ろを走って距離を詰める。メイルは小型の盾を前に構え、自分が損傷するのを抑えながら走る。

 ショート本体で一人を斬り、メイルと盾の知性的武器が、二人の火器を殴って反らし、暗闇の上から相手の目を物理で潰す。

 悲鳴を上げる強盗へ、更に蹴りを入れて腕や手を縛り、他の乗客達の前へ突き出す。

 とたんに、リンチの打撃音によるリズムと、文句や怒号のBGMが流れる。

「クウ姉ちゃん、大丈夫?」

「木屑が、目に入った」

 カイは無用心にも近寄り、鏡があるトイレの個室へと、二人で入る。残心を忘れるとは情けない。

 まぁ、ガイスト・アーマーが居るので、壁には困らないだろう。

 車内戦闘の最中、逃走しようとした強盗の内、六人ほどをソラは、体当たりと脚力で負傷させていた。

 負傷した強盗は着地に失敗し、枕木の上を転がっていたり、後続の貨物車両に轢かれていたりする。

 また、その光景を見た強盗仲間が、衝撃や喪失感からか足を止めてしまった。

 追撃して更に三人を蹴り砕き、貨物車両の下へと突き飛ばす。

 反撃の銃弾は当たらないし、障壁で防げる。

 仕上げとして、強盗達の肉片や武器、巻き上げた金品が入ったバッグを、ガイスト・アーマーの予備パーツでかき集めつつ、車両へと飛び乗る。

 流石に疲れたのか、肩で息をしていた。

「……よくて十分が限界ね」

 全力疾走からのジグザグに緩急をつけ、段階的に速度を上げていく。これを維持出来るのが十分間。

 純血のハーピーなら、更に飛べる。地面スレスレの超低空を、縦横無尽に滑空しつつ走る。何時間でも滑空しては走って風に乗り、高度や速度の組み合わせで急所を狙う。

 スライムなら銃弾が当たる箇所へ穴を空け、弾を素通りさせつつ距離を詰めていく。

 亜人は異能を使わなくても、また、魔法を使わなくても、種族の強みだけで銃や剣を凌駕する。

 人間の種族特性は適応性であり、どんな環境であれ慣れる。慣れる為には道具を作り、新しく発明や発展もしていく。

「お疲れ、大立ち回りだったな」

「クローンという駒に、人間の霊魂。オマケに資金も手に入ったわ」

 クローンへ宿す魂は、肉体に刻まれた情報を使う。だから、肉体の一部が必要なのであって、魂は必ずしも必要ではない。

 転生や憑依も同様で、魂は要るが、その人個人の肉体は要らない。

 また、クローンだと以前の異能は使えなくなり、転生だと異能を引き継ぐ事もある。

 魂が異能と繋がっているのではなく、肉体に宿っていた魂の残滓である、記憶情報を使って魂の復元を行う為、持っていた異能を失うのだ。

 先天的か後天的か、能力の違いは些細なモノ。強者以外にとって、十把一絡げな違いでしかない。

 強者を目指すなら、魔法や異能、特性の違いは理解して措かなければならないだろう。

 さて、強盗を退けたと言っても、言い過ぎではない状況であり、物的証拠は雄弁に、カイ達が強盗よりも強かった事を物語っている。

 ドアを開けただけで発砲されたので、クウに落ち度はほとんど無い。敢えて挙げるなら、隠密行動を巧くしていれば、発見されるのが遅くなったはず。

「あれ? カイ、お前疲れてないか?」

「……ちょっとね」

 魔法しか使っていないのに、肉体的な疲労が出ている。それを不審に思ったリクだが、クウを見て察した。

「公共交通機関を汚さないでよ」

「既に血と鉄の洗礼で、音も匂いも分からない」

 ソラも呆れていたが、クウは悪びれてすらいなかった。

 しばらく逃げた強盗を警戒してから、乗客総出で清掃活動を行う。

 乗客の死体を空きスペースに積み上げた後、ソラ達は乗客へ金品の返還を行った。

 車掌は運転手のみで、生身の警護兵は始末されている。貨物車両を守る旧式のオートマトンは無事だった。

 強盗等の事件は多く、火器は戦争度に払い下げられる。銃本体は安いが、弾薬は高めに売買されているので、強盗が錆弾まみれの粗悪品な銃弾を、裏で掴まされていたとしても、今回の収穫は盗られた物品以上の価値があった。

 ちなみに、虚偽の自己申告を言っても、指紋や汗に含まれるナノマシンによって、簡単に嘘が判る。

 だから、取り合いになる事は少なく、仮に取り合いになっても強い人が、一旦預かると言えばそれまで。警察や駅員に渡せば、調べてもらえる。無視するなら殺されるか、ケガをするだけだ。

 強者の場合は有無を言わさず総取り。

 乗客の死体は次の駅で教会に送られ、蘇生や憑依を施される。強盗達の肉片は病院や研究所へ、そこでクローンが造られる。生きているなら警察に引き渡す。

 持ち主がいない荷物は、警察に渡り、遺族へ返還されていく。

 クローンは約一週間で完成し、教会や空港、病院、駅や港であるなら、何処でも転送してもらえる。

 ただし、行った事がある国や町に限られ、知らない土地や見知らぬ人物へ物や人を送る事は出来ない。

 クローンや金は特に厳格に管理され、共通の合い言葉を言う必要がある。更には記憶や記録をチェックされ、齟齬や人違いである可能性を排除する。

 受け取りに失敗すると、手足がもげるし、一定時間ロックされてしまう。

 下車して事の顛末を、警察官と駅員に説明する。

 全員のナノマシンを調べ、整合性を確認して、事情聴取は終了。

 生き残りの強盗犯は病院送り、クローンの手続きも並列作業で、実にスムーズだった。

 乗っていた車掌や乗客達から人通り感謝され、カイ達は荷物を受け取って空港を目指す。

「空港か。ハイジャックされたら詰むんじゃ?」

「空賊に襲われるかもね」

「その時は諦めて、敵をケガさせて逝こう」

 命と引き換えに、目や指を持っていく。実に不等な等価交換。ただし、トラウマ付きとなる可能性もあるだろう。

「空港とか港湾とか、テロの現場にする、奴等の気が知れない」

 物資の積み降ろしやデポとなるので、物流が途切れてしまうのだ。

 軍も民間も関係無く、全員が不幸となる。医薬品、衣料品、食品、手紙に機材、燃料に武器。手に入るモノが止まり、テロの犯人達が使ったり、解決の為の戦闘で破損する。

 空港や港湾のテロは、軍の一部が勝手にやるモノと、空賊や海賊が暴れるモノ、それからモンスターのスタンピードに巻き込まれるモノがある。

 魔法や科学がどうなろうと、扱うのは人間なので、モラルや国民性が問われるのだ。

 まぁ、強者にエンカウントしたら、そこで殺戮されてしまうが。

 昔は、空を飛べる魔法使いが空軍と良く衝突していた。港も水上魔導師や潜水魔導師が、ストライキのついでに戦艦や駆逐艦を蹴散らす。

 陸上はそんなにいざこざが起こらない。オートマトンやゴーレムには勝てないからだ。

 魔法使いや魔導師では、全身義体と大差無い機動力と反応速度。火力こそ上だが、ゴーレムの回避速度が早くてあまり当たらない。

 空港や港湾にも警備や護衛として、旧式のオートマトンやゴーレムが居るものの、所詮は中古品なので何処かしら壊れている。

 なので、数で押すか、壁や柱といった質量で足止めしつつ、手足を潰すなり、武器を壊すなりすれば、後は目障りでウザいだけの案山子だ。

 とは言え、旧式でも攻撃力と防御力は高い。希に機動力がほとんど無いゴーレムも居るが、平均的には中古品でも人間以上に活動出来る。

 その魔法使いと軍隊の確執が民間へと広まり、不満を抱く人々にとって都合が良い解釈をされ、テロの原因となっていく。

 テロの大義名分として使い、軍の横暴を許さない。

 それが何処の空港で、テロの中身がどうであれ、成否を問わず一定の被害が出る。

「自転車、めっちゃ揺れるんだけど」

「サイドカーやリヤカーも」

 振動が直に伝わる時もあれば、ガイストな部品が変な挙動をしたりもする。

 三つ編みやショートヘアーが、ヘルメットの紐に絡まり、ソラとクウはたまに確認していた。

 服は揺れるも短パンにオーバーホールのデニム。年相応の体躯なので、揺れる胸も貧相なモノ。が、それでも女子二人が自転車のペダルを漕ぐと、男子二人はつい目で追ってしまう。

「……疲れたら交代するよ?」

「いや、カイ。お前はもう少し休んでろ」

 クウに声を掛けるカイへ、リクが待ったを掛ける。

「リクは他人の心配が出来るのね。その余裕を、メイル達を点検するのに使ってやれば?」

「待て、この狭いサイドカーでか?! 逃げ場もなければ、動けるスペースも無いじゃんっ!」

 着込んでいる鎧から、神通力の触手が湧き出す様に生えてくると、車体を揺らしながらリクの絶叫が上がった。

「鉛弾は痛かったし、擦れたら痕も残るので、ちゃんと手入れしないと、可動域が減ります」

「盾は硬いですが、角度を付けないとフルメタル・ジャケット弾は貫通します。拳銃弾は貫通しませんけど」

 リクの手足に絡んでまとわりつき、内部へと侵入しつつ、メイルとショートが魔力や精力を吸い取る。

 鎧や剣は武具として整備しても良いし、魔力や精神力を分けてやる事で、自動的に修復や復元が始まるのだ。

 魔法を習っているなら魔力のオーラを放出する事も自発的に出来るが、リクは独学なのでオーラが不安定にしか出せない。

 また、ショートが言うには、魔力や精神力、またはオーラにも味があり、感情や精神状態で違うそうだ。

 好みの味も知性的武器の種類によって違うが、共通して好む味はある。その一つが、味見して知る事で、これが知性的武器全体に万人受けするモノだと分かる。所有者の体液だ。

 血液や老廃物等には、魔力や精神力の残りカスが混じり、バランス良く含まれていて、感情や精神状態も良好なのが絶頂時のオーラや体液となる。

 遊び半分でリクを責めている訳ではなく、必要な事だから。消耗や損傷は回復しておかなければ、道具として役に立てない。

「リク、大きな声は出すなよ? 余計に疲れるから」

「でも、出す時は教えて欲しい」

「そうね。不意打ちはズルい」

「クウ姉ちゃんの場合は口を塞ぐから、喋れないんだけどね」

「音を立てると、見つかりやすい」

 リクは触手により、上下前後の穴が拡張されていく。

「……くっ、オムツがいるな。括約筋が仕事してない」

「しばらくは血も出るし、小便の時は痛いよ?」

 カイはクウによって開発されていたので、リクに同情する。

「しかもさっきので、触手魔法を覚えた」

「やったね、小麦粉と鉄板があれば、たこ焼き食べ放題!」

「いや、魔法的なモノだから食えない。千切れたりしたらしばらくして消えるぞ」

「そう言えば、私も魔法を覚えたんだった。カイのお陰ね」

 クウも魔法を覚えていたが、使い道が接近戦に限られるそうだ。

 それを聞いたソラは、内心で焦る。自分だけ、まだ魔法を覚えていないから。

「触覚魔法っていうの」

 触手魔法は、タコの触腕やイソギンチャクの触手のようなモノ。基本的に細長い。

 ただし、霊的な触手なので、実体が霊的な精霊やアンデット系にしか効かない。

 物理干渉は低めなので、スケルトンも足止め出来ないモノだ。

 触覚魔法は、相手の感受性を無視して、感度を上げ下げ出来る。

 痛み、快感、冷気等の感度を操れるし、鍛えれば感度十倍も可能。

 触覚魔法は自分を中心に、円形の力場を発現させていく。手から武器へと伝えたりは出来るものの、一時的に武器そのものへ付与させる事は、今のクウでは出来ない。

「それはヤバいわね」

「触手も相当だけど?」

「実体が無いから、まだビックリする程度で済むわ」

 霊が見えないなら、視覚的にも安心出来たが、下手に見えるだけにソラでもビックリはする。ただ、物質としての影響力は皆無なので、ゴーストの捕獲にしか使えないだろう。

「ちょっと残念?」

「カイ、お前は言葉を選んでくれ。下手な事言うと、クウの玩具にされるんだぞ?」

「リクこそ、ソラの尻に敷かれてるよね」

 何を今更とばかりに、カイは辛辣な台詞をリクに言う。

「クウ、カイを貸せ。触手魔法の餌食にしてやる」

「ダメ。私の触覚魔法に使うし。触れただけで昇天させるんだから」

「コンビ組もう。触手魔法と触覚魔法で、カイの性癖をぶっ壊す」

「分かった、上半身を好きにして」

「僕の意思は!?」

 空港に着いたら離れなければ、という具合に逃げ支度を始めるカイ。それを見てクウは、愉悦の感情で微笑む。トイレに追い詰めるか、試着室やロッカーに追い込むか。

 そんなこんなで、空港に到着した。

 ソラは空港のスタッフを捜し、チケットの確認と各種手続きを済ませ、リヤカーやサイドカー、ガイスト・アーマー等を貨物として積み込ませる。

 リクは適当にカイを追い掛け、クウに任せた後、ソラと合流して売店を見て回った。

「お土産は饅頭系が鉄板だと聞くけど、どう思う?」

「カレー粉や飴も喜ばれるらしいぞ」

 野生動物やモンスターを食べる際、一番の難関は独特な臭みとなりうる。だったら強い匂いと味付けで、無理矢理胃に押し込むしかない。

 飴等の甘味は、戦場では貴重品だ。偵察や哨戒、即応待機時や移動中の合間に、食べる事で空腹をまぎらわせる。

「魔法は、接近戦でしか使えなかった?」

「よくて五メートル以内が、触手魔法の発動範囲だな。後は相手次第、見えない奴には見えないみたいだし」

「相手の魂を縛りあげるとかは?」

「受肉済みの相手や人間、モンスターとかには無理だろう。技量が足りないだけかもしれないけど」

 カレー粉や飴を四十個ずつ買い、貨物へと積んで貰う。

「肌着や靴下も買いましょう」

「そうだなぁ。カイのは選んでおくから、クウのを頼む」

「だったら、まずは私のを買おう。どっちがいい?」

「……え、自分で決めれば?」

 とは言うものの、ソラの右手に持つ靴下を指差す。

「……ちょっと試着してみるわ」

 靴下を態々試しに着けてみる。リクには理解出来ない。

(マスター、恋人の選んだモノですから。自分の好みと相手の好みを図っているのでは?)

(うおっ、その声はショートか。念話って奴だな。なるほど、こんな風に心へ語り掛けるのか。……これを四六時中、前の所有者がノイローゼを起こすはずだな)

(……それはトラウマなので、勘弁して下さい。後でソラ様に言い付けて、カイ様と同じ末路を辿って頂きますよ?)

 知性的武器が脅して来る。これが道具に使われる所有者と言うモノか。等と思いつつ、ショートの本体を軽く叩いて黙らせる。

(この鞘か、それともこのガードか。マスターを売る口は!)

(痛いでふ、引っ張ったり、引っ掻くのは止めてぇ)

「ねー、リクー。これの色違いを持って来て。リクの好きな色でもいいからさー」

(おっと、これはソラ様の好きな色の靴下も、要るパターンなのでは?)

(あぁ、そうか。嫌そうなら代わりのモノも、用意するべきだしな)

 靴下を見繕って持っていく。

「中に入って」

「えぇ、何でさ?」

「カーテンの開け閉めが手間だし、触手魔法で試してみたい事もあるの」

「霊魂を宿すのなら、買ってからでもいいと思うけど」

 お邪魔しますと少し緊張しつつも、ソラが居る試着室へ入る。良く考えなくても二人っきりだと思い出してしまったのだ。知性的武器達は思考の外に追いやる。ほとんど異性で、肉体も霊的なモデルを実体化させたモノ。つまり、神通力の触手は触手魔法で抑えられるから、邪魔はされない。しかし、助言や警戒はして欲しいかも。

「来たわね。突然だけど、鏡に写ったモノって、霊的なモノの写し身と言うじゃない?」

「聞いた事はある。カメラで撮られたら、寿命が縮む的なのもだったよな?」

 鏡には魂の姿や、真実の姿が写る。吸血鬼は写らないとかも聞いたが、濃紺やリラは写っていた。

 鏡は別の世界にも通じるし、霊的なモノも写す。

「触手が写るなら、鏡越しに着替えをする事も出来るはず」

「鏡に写った自分が着替えられるなら、それは物理的なこちらにも反映されると?」

 確かにあり得るだろう。試みが上手くいけば、鏡越しになるが触手で攻撃する事も出来るはず。

 結果、布を動かせる事は出来た。かなり遅いし、鏡越しだと触手の感覚も分かるらしい。金属は動かせず、チャックやボタンも外せない。

「要練習ね」

「ま、試行錯誤は当たり前だし、覚え立てだし。……鏡越しだと距離も無視出来るようだな。二次元は平面、遠近感や奥行きも鏡に写せば、無関係なのか」

 リクは後ろから触手で、ソラの袖を捲る。かなりシュールな光景だが、タコの魚人やイカの魚人もいる世界なので、ソラ達は気にしない。

 とは言え、触手そのものは慣れないと驚く。

「スカートも試着しておくべきだったわ」

「余計、入りづらいんだけど!?」

「タオルやカーテンも動かせるみたいだし、これは頑張ったら、着替えもやってくれるかしら?」

「ズボラだな、それくらい自分でやれっ!」

「いや、でも、麻痺や身動き出来ない状態の時は?」

「……回復魔法を覚えるか、習得している奴と組む」

「あと、自分の面倒を自分で見れると、精神的にも楽だよね」

「あー、それはそうだなぁ」

 とにもかくにも、練習あるのみ。

 靴下と肌着、それからオムツを買い、また貨物に積む手続きをする。

 しばらくして、クウとカイも合流。カイはクウに肩を借りて、支えられつつ歩いている。目は虚ろで、口元から荒い呼吸をしていた。

「触覚魔法、しゅごい」

「感覚を0.2倍から1.2倍まで増幅出来たわ」

 思ったより硬い、覚悟した以上に痛い。そんな感じになるが、快楽や快感だと、より敏感になってしまう。

 人間は痛みには堪えられるが、笑うような刺激には堪えられない。

 同じように、感度を上げれば感じやすくなり、やがては快感から苦痛へと変わる。いきなり、感度を十倍に引き上げられたら、下手すると自分の呼吸する動きだけで苦しむ。痛みによるショック死もあり得るだろう。

 暗殺にも使える恐ろしい魔法だ。そもそも、五感の一つを冠する魔法なので、使い道は幅広い。

「クウ姉ちゃん、手先をゲル化出来るから、奥の奥まで入るんだぁ」

「カイの括約筋は、もう、死んでいる」

 胃腸の蠕動運動と、腹筋を込めるだけで、前立腺を必要以上に刺激する。また、尿道から前立腺、精嚢、精巣までゲル化した指が入るので、感じにくい場所も感度を上げれば普段とは違って戸惑う。が、快楽には勝てない為垂れ流しとなるのだ。

「カイを廃人にするのは止めてよね」

「貴重な異能持ちなんだから、利用しないとな」

「リクやソラって、打算的過ぎない?」

「貴女には言われたくないかな」

 ソラが苦笑し、カイの尻を蹴る。

「あうっ!」

「正気に戻れ」

「はうっ!」

 リクも腹を蹴る。

 しばらく悶絶していたが、カイはようやく立ち上がった。

「……くっ、酷い目にあった」

「それで済むのか。カイはメンタル強いなぁ」

 勝手に鍛えたリクが、カイの精神に驚嘆している。

「コレ、お前の分な」

 オムツや肌着をカイに渡す。

「お、ありがとう。着けて来よう」

「ファミレスで待ってるから」

「トイレはこっちだ」

 リクに連れられ、カイは近くのトイレへ向かう。クウ達は空港内のファミレスへ入り、適当な安いランチを頼む。互いにじゃんけんして、クウが勝ち、リクの奢りになった。

「リク達は弁当を食べていたわ。列車強盗に盗られたようだけど」

「だからって、定食のオカズを取るのは、やり過ぎじゃない?」

「これはカイに対する食い物の恨み。弁当すら盗られるなんて、強奪の異能持ちが情けない」

「さっきもだけど、カイを締め上げるのは止めなさいよ。カロリー不足で倒れるわよ?」

「考えておこう。ところで、私達が居ない間、ソラはリクとイチャイチャしなかったの?」

「イチャイチャはしたけど、そんな雰囲気では無かったわね」

 女子二人で会話していると、店内の出入口から閃光と爆音が駆け巡る。

 そして、耳鳴りとふらつきが治まり始め、ソラ達がなんとか目を開けると、武装した男達がファミレス内の客達へ弓矢を構えていた。

「従業員はこっちだ」

「客は全員店内から出ろ。空港は我々、特殊空挺大隊が占拠した」

 見せしめとばかりに、近くの従業員と客を一人ずつ、頭を焔の矢で射抜く。

 騒ぐ客は順次、魔法と矢で始末していき、反抗的な態度を取る従業員や客も、目や耳をナイフで削ぎ落とす。

 空港内部の客とスタッフを、ロビーに集めているのか、ちらほらと客や売店の従業員が居て、大隊の兵士二人一組が追い立てながら、包囲網を狭めていく。当然、リクやカイも少し離れた場所に居た。

 続々と客が来ると、それに比例して混乱や喧騒が大きくなる。客同士の無事への安堵に、便乗しながら合流して、ソラ達は落ち着いている集団の近くで、一先ず座り込む。

 客とスタッフは別けて集まっており、おそらくは従業員のリストや、旅客機の搭乗員リストでも持っているのだろう。

 強者を警戒してか、包囲網の兵士も客に比例して増える。

 格好や武器はバラつきがあるものの、概ねサラリーマンな民兵が多く、弓やナイフ、腰には木製の大きな拳銃も見えた。魔法を使える兵士も居るので、迂闊に動くと周りを巻き込む。

 かといって混乱したままだと、死ぬのが早まるだけ。従順に相手へ従っている内は、それだけ死の順番が遅くなるだろう。

 現に、煩い赤ん坊や幼児、足腰の弱い老人は、既に殺されていた。オートマトンやゴーレムも壊されているのか、やって来ない。

 特殊空挺大隊の人数不明、目的も不明。

 いまだに説明が無いまま、集められた従業員達が、射抜かれては焼き殺され、逃げる者へは電撃と突風の魔法が命を奪う。

 その凶行に、落ち着いていた集団からも、冷静さを欠いて恐慌状態に陥った客達が、散り散りに逃げようと動くも、包囲網の中へと弓引かれて死ぬ。

「……さて、 関わった職員やスタッフも死んだ。ここを占拠する以上、我々以外は不要だ」

 隊長らしき人物が、淡々と部下からの報告を聞き、強者は居ないようだと結論付けた。

「構え、射て!」

 発砲音とほぼ同時に、閃光と爆音が三回連続で、別々の方向と場所にて巻き起こる。

 リク達は伏せて矢への被弾面積を減らし、メイルと同等の知性的武器をカイ達に貸し出して、流れたりずれたりした矢から身を守る。

 更に盾や剣も貸し出し、カイ達は互い違いに盾や剣を立て、リクへ見える角度で、その金属光沢に包囲している兵士達を写し、触手魔法で手足を拘束していく。

 次に、クウの手を掴んだソラが、拘束された兵士達の元へクウを送り、まだ拘束されていない兵士達の方向へと突っ込む。

 別の方向にいる兵士達は、眩んだ目が見えるようになったら、暗闇しか映らず、夜戦行動に移行し二人一組が幸いしてか、背中合わせとなって警戒していた。

 魔法耐性が高い兵士や魔法が使える兵士は、すぐに暗闇を打ち消していたが、カイの接近に気付いて動くと、何故か足を滑らせて転んでしまう。

 仕組みは単純、ただ呪いを連発していただけだ。レジストされる端から掛け、死体の一部を剣の知性的武器が引き摺って運び、転ぶ要因を作る。抵抗力が強くて効かないなら、外的要因によって転びやすくなる様に思わせるしかない。

 血が近くの床を流れている以上、魔法以外でも転ぶ。兵士は死体も血も慣れているし、血の上は滑りやすい事も分かっている。それが微量の血痕であれ、踏んでいないという自信は無い。何故なら、ここに来るまでに血や死を振り撒いていたから。

 負の感情による呪いと、他人の血を用いた呪い、二つを使うのでレジストされても片方は通用する。もっとも、呪術の呪いと魔法の呪いでは、レジストするステータスが違う。呪術では精神や霊力、魔法では属性魔法耐性が必要だ。カイのメンタルは兵士より少し上なので、連発すれば呪術に掛けられる。

 腕を交差させて防御体勢になるが、盾の知性的武器は刺を出し、カイののし掛かり気味の体当たりによる勢いで、穴だらけになる。

 付近の兵士はメイルの交代要員が、剣の知性的武器を何度も振り下ろし、沈黙させていた。

 クウは拘束されて戸惑う兵士に触れ、感度を上げて混乱させていく。呼吸だけで股間が硬くなり、勝手に果ててしまうのだ。

 別の兵士は呼吸による痛みから、苦悶しつつショック死。隣の兵士は笑い転げて過呼吸による酸素中毒。また別の兵士は、あまりの暑さから徐々に大量の汗をかき、戸惑う間に脱水による衣服の冷たさや寒さから凍え、血圧の変動に脳血管が切れてしまう。

 ソラは壁や柱を蹴って、縦横無尽に駆け、ついでとばかりに、兵士の爪先をいていく。

 効かない兵士には手首に巻いた紐をほどき、首や腕に巻き付け、速度でもって切断する。

 リクは隊長格の男へ、斧の知性的武器を横に振り回した投擲を行う。が、部下の一人が回転する柄を掴んだ。

 使おうとして、かなりの重量を感じ、たたらを踏む。

 その隙にリクは、ショートが薄い板を加工した手裏剣を投げ打つ。投擲方向へ加工の際に出た、尖った木屑も撒く。

 別の兵士がナイフで叩き弾き、木製の拳銃を撃つ。撃ち出された弾丸は、メイルと盾の知性的武器が弾いた。

 斧に写る兵士を触手魔法で拘束し、斧の抵抗や拒絶を大きく感じさせ、しばらくは手放せなくさせる。

 ショートが、交代要員の剣の知性的武器を持って、兵士へと切り込む。

 隊長は短時間で増加した武器と抵抗する弱者を見て、目障りな障害と認識する。

 大隊の兵士達が次々と殺されているが、援軍となる兵士は民間人を装い、次の旅客機に全席満員で乗っている。また、金属探知機を逃れるべく、楽器類やスーツケースを分解して、再度組み立てたいびつな使い捨ての拳銃や弓矢を、手荷物として機内に持ち込んでいた。

 機長や管制室の職員達は、この時の為に退役した協力者。賄賂も各部署へ送っているし、強者が居ても大丈夫な様に、切り札も用意してある。

 眼前の子供は頑張っているが、まだまだ弱いし、大局も見えていない。

 こちらが軍の人間である以上、軍隊の強みと鍛練の年数が違う。

 まず、大隊という言葉はブラフで、援軍がいる可能性を考慮していない。

 更に言うなら、子供と見て手心を加えるとか、武器や体術、魔法が効かないとかの事態を、想定していない様にも見える。

 自分以外の兵士には効いているが、それは周りが弱者の兵士だからだ。

 強者は単独で、国家と戦える存在。さりとて、自身は強者ではないが、弱者でもない。

 しかしながら、これ以上の損耗は避けねばならない。

 この国の軍隊を相手にする以上、犠牲は小さく、抵抗は粉砕しておく必要がある。

「召喚」

 首のドッグタグと同じように下げた、使い捨ての召喚魔法を行使する。

 大隊長と副長が持つのだが、副長はなんとか斧を手放そうとして、途中で矢と投げ槍による時間差の刺突にさらされ、首に槍が刺さってしまう。

 召喚対象は龍系統のランダムで、召喚者を攻撃出来ないだけの誓約しかない。

 つまり、召喚したモンスターが暴れれば、空港の敷地内にある建造物は全壊し、隊長しか生き残りはいなくなる上、滑走路も破損する。

 占拠する以上、なるべくなら建物はあった方が良い。瓦礫の山の中をテント生活して、占領出来たと主張するには、些か印象が悪いし、プロパガンダに使うのも難しいだろう。

 が、ここでもし全滅すると、後続の援軍への士気に関わる。

 手加減や油断、慢心が招くリスクを減らすには、使える手立てがある内に使うしかないのだ。

 魔法陣が周辺の空間へと浮かび上がり、ロビーの天井が焼き切れていく。ガラスやコンクリートを融解させた臭いが漂いつつ、その開いた穴から、炎を頭部に纏った龍が隊長の真上に降り立つ。

 かと思ったら、すぐに上空へと飛び立った。

「は?」

 通常は召喚者を確認してから、何かしらのアクションを取る。指示や目的を問う事も多いし、召喚者が気に入らないなら、無視されてしまう。

「た、戦え!」

 隊長は真上に見える青空へと命令するも、炎龍は戦いたくないと返した。

 --なんてヤバい事を命じるんだ、あの御方の関係者を攻撃しろだと? 住みかを焼き討ちされてしまうわ! 我は無関係だ。お、ちょうど良い。召喚者の傲慢な態度に苛立ってもいるので、鉄の鳥を落とすとしよう。--

 隊長の脳裏に炎龍の念話が送り込まれる。恐怖とストレスを帯びており、好戦的なはずの戦意は鎮火していた。

「止めろ! それは我々の--!」

 隊長の叫びは、突然の銃撃によって遮られ、最後まで紡がれる事は無い。

 他の兵士達も自律して補助する知性的武器と、ソラ達の連携によって、次々と死んでいく。

「我々を殺しても、援軍がお前達を葬るだろうっ!」

「うっさい、御託は結構よ。来たとしても、お前等の生き残りを捜索するだろうし、ここの現状を行政が放置する事もないと思うしね」

 ソラによって斧で頭をかち割られ、最後まで生きていた兵士を始末する。


 滑走路に近い上空では、着陸や誘導をしない上、連絡が取れても混乱している管制塔と、定刻通りにやって来た旅客機が口論をしていた。

 その最中、突如として航路上にドラゴンが割り込んで来る。

 炎属性の古龍とおぼしきモンスターだ。

「機長より乗客の皆様へ、航路上空に炎属性のドラゴンを確認しました。攻撃の意思ありと判断します。誠に勝手ながら、当機はここまでと判断致します」

 空港のみならず、機長や乗務員すら、他国の軍隊への息が掛かっているようだ。

「こちらグレイ01。機長、防殻と障壁では堪えられないか?」

「機長よりグレイ01へ、機体と荷物は諦めて下さい。相手は古龍らしきドラゴンです。空挺魔導師だけならば、突破も戦闘も可能でしょうが」

「グレイ01、了解した。目的地までは近い。輸送に感謝する」

 乗客はサラリーマンや旅行客のような、変装をした空挺大隊のご一行である。

 空軍と陸軍から選び抜かれたエリート達。後詰めではあるものの、他国の空港を実行支配する為の戦力だ。

 兵士以外には医療品や嗜好品を積んでいる。

「総員、離脱開始!」

 短い現状説明の後、旅客機を内側から破壊して、隊長の判断で飛び立、空中で三個中隊のグループを形成する。

 機長達は不時着させようと、高度を下げるも、ドラゴンの火球の二連射で焼失。

 各軍隊の魔導兵科において、一個小隊五人が基本の兵員。三個小隊で一個中隊、三個中隊で一個大隊。つまり、四十五名の兵士全員が、魔法使いの素質を持つ。

 機動に優れ、長期的作戦に堪えられる兵士達。確かに、一個大隊なら古龍が相手でも、勝てるかも知れない。

 だが、不十分な装備、不確かな敵対情報、先遣隊や管制塔との連絡不備。

 魔法頼みでは負ける。使える武器は使い捨てで、長期戦や持久戦には向かない。

 実際、ドラゴンには弾かれた。魔法も効果が薄い。技量不足でも練度が低い訳でもなく、単純に装備の品質が劣悪なので、通用する魔法の威力が低いのだ。

 普通の装備なら、古龍でも連携でなんとかなる。他の兵科や戦闘機の支援があれば、古龍よりも上のドラゴンとだって戦える。

 装備に頼らないでドラゴンを倒す。その戦術を使えば、二、三日も掛かってしまうだろう。

 鬱陶しいとばかりに、ドラゴンが大気を燃やし、衝撃波で空挺魔導師達を散らす。

 これを見て、短期では無理と隊長は悟る。

 だが、ドラゴンによる追撃と反撃への統制魔法射撃を行う刹那、召喚獣の帰還魔法陣が現れた。

 どうやら、ドラゴンは召喚魔法によって出現していたようだ。

 隊長は兵士をまとめ上げるも、このような妨害をしてくる者が、この先の空港にいると思い、どうしても気が滅入る。

「クソっ、空港の占拠は失敗か?」

「連絡が取れません、管制も音信不通です」

 強者の召喚魔法なら、ドラゴンももっと強い。あのクラスなら中途半端に実力がある者だろう。

 百位以下は、そんな有象無象な半端者で溢れている。

 だが、奇襲すればあっさりと殺せるし、包囲する合間に間引く事も出来る。

 強者のように、銃弾が見切れる訳でも、魔法の発現が早い訳でもない。

 詠唱魔法やキーワードによる略式魔法となるので、魔法を使われる前に殺せるのだ。

 しかしながら、それは魔法を知っているだけであり、理解している認識とは言い難い。

 一瞬の状況判断力、集中力と空間認識力、それらが備わっていれば、詠唱もキーワードも要らないし、高い精神力と少しの魔力だけで、魔法を無詠唱にて発現させられる。

 故にメンタルが重要であり、格闘戦で魔法を併用すれば、技量が低くても相手のメンタルは、肉体と状況に応じて刻々と変わるので、レジストされにくく、こちらの魔法は効く。

 技量に差があっても、数秒は魔法に掛かってしまう。そうなると隙になり、間を詰められやすくもなる。

 それが強者の基礎であり、カイ達は補い合って、部分的に成し遂げた。

 弱者から強者への一歩を踏み出す。半端者よりも先に行く以上、数は問題ない。

「よし、行くぞ!」

「了解しま--」

 気を引き締めて、空港を目指そうとした空挺魔導師達の進路上に、召喚魔法陣に似た転位魔法陣が現れる。

 光の中から現れたのは、先程のドラゴンよりも強大な存在。

 何故か人の姿をしているが、本性はドラゴンの系譜だろう。それは魔法陣の大きさと質が物語っている。

 勝てない。戦いにならない。ましてや逃げる事も出来ない。

 それは半端者はおろか、強者でも三十位以上の上位陣でなければ負ける。

 隊長を含め、兵士達全員が動けないし、気絶すら許されない。

 強過ぎる存在感は、やがて小さく儚げな弱者と、勘違い出来るまでに薄くなる。

 ここで迂闊な行動に出ると、部隊が消滅するだろう。見間違いや勘違いでは無い。

「私のー、友人の庇護する者をー、襲うアホはー、一体誰かなー?」

 間延びした口調で、辺りを見回す。ローブだけを着た女性の目には、空挺魔導師以外には、青空しか映らない。

「おやー? 炎系統の古龍がー、近くに居たはずなんだけどなー? 召喚だったのかなー?」

 隊長が恐る恐る挙手する。

「何かなー?」

「発言をお許し下さい。あのドラゴンは、召喚によって現れていました」

「そうかー。……すぐに居なくなったからー、私の鱗だと分かったんだろうねー。まぁー、追々報告でも上がってくるかなー」

 あっさりと納得し、古龍よりも上だと匂わせ、ついでに古龍とドラゴンの違いについて、目を瞑る懐の広さを醸し出す。

 ドラゴンと古龍を混同するのは、ドラゴンをトカゲと言うレベルの暴言になるのだ。普通に話し合いから虐殺へと移行するものの、隊長は女性の気まぐれで生き延びた。

「国へ帰りなさいー。さもなくば死ぬぞー」

 緊張感の欠片もない脅しだが、この女性がその気になれば、空挺大隊は瞬時に全滅する。

「あー、殺してもいいのかー。どうせ生き返るんだよねー」

 まるで雑草を引き抜くような感じで、考えを改めつつ、大隊へと手を向けていく。

 なけなしの勇気を振り絞り、部隊一丸となって防御と乱数回避を行うも、女性はさして迷わずに毒と衝撃波で、空間ごと潰して大隊をミンチにした。

 そんな攻撃が収まる頃、戦闘機が一機近づいて来るのを察知する。

 知っている気配だったので、女性は警戒していなかった。ただ、話しが拗れる可能性はあったので、さっさと大隊を捻ったのだ。

 戦闘機は空中で失速しつつ、ホバリングのように停止すると、コックピット・ハッチを開いて、女性が身を乗り出す。

 ヘルメットやパイロット・スーツは着ていない。半袖短パンからは褐色の肌が露出している。少し暗めの朱色をしたショート・ヘアーを気流に任せ、反対側を腕で遮りつつ、ローブの女性へ声をかけた。

「おーい、濃紺とこのネフライト。空港をぶっ壊したのはお前さんかー?」

「知らないー。久しぶりー、混沌カオスー。私はー、私の鱗によるー、マーキングに近付いた古龍をー、見に来ただけー。召喚による侵入だったみたいー」

「そっか。……事故じゃなく、実行支配の先兵っぽいわね」

 混沌は挨拶もそこそこに、人化しているネフライトへ、空港の管制塔や墜落した機体のブラック・ボックスの通信ログを、電脳空間からサルベージして、事態への追加説明を一方的に話す。

「最近多いねー」

「政府の一部が賄賂やら、癒着やらで、他国を手引きしていたからよ。ギルドへの情報規制もあったし、教会は情報を掴むのが少し遅れて、棺桶の発注にシスターの派遣と大騒ぎ」

「だからー、駅や空港でドンパチの空騒ぎー?」

 転生の際は土葬や火葬になるので、棺桶と燃料が要るし、葬式をする事もある。

 転位直後の村や集落では、抵抗されやすいので、大量の死体が山積みにされ、燃料を撒き散らし魔法やライターで燃やす。その後、残った霊に聞いて、クローンか転生かを選ばせてゆく。

 テロでも同じで、終活や遺言、遺書が無い人を中心に、霊を降ろしたりして問いかけるのだ。

「ところでー、混沌が来た理由ってー、テロへの粛清でー?」

「ギルドの件で濃紺が政府を脅したら、何故か教会にまで癒着の話しが来てね。どこかで情報を握り潰している奴がいるってんで、本部から葬儀部門の私に、制空権の確保を依頼されたのよ」

 混沌は強者なので、国一つの空港全ての電脳を監視し、怪しい場所へ戦闘機で飛んで行ける。ドッグ・ファイトもこなせるが、変態機動に着いて来れるエースは少なく、最近では輸送機代わりだった。

 ネフライトはこの世界の属性龍がナンバー2。木属性の真龍であり、ワイバーンを含めたドラゴン種、その原点である龍の中でもかなり強い部類だ。

 各属性ごとに居るナンバー2の中では弱いが、強者でなければ倒せない程度には、戦闘力と戦闘経験を持つ。

 仮に、目の前に居る混沌と戦えば、どうやっても負ける。種族的身体能力は違っても、異能と属性の相性が悪いから、時間稼ぎにもならない。

 真龍では、炎龍ロード・オブ・ルビーというトップ達が連携して、互角に持ち込める。別に龍への特効持ちではなく、混沌の異能が突出して強いのだ。

 同僚であるマリや虚無と戦っても勝つ。異能による拘束力が続く限り、格闘での接近戦に持ち込めるので、混沌が有利な土俵に、相手はどうしても上がって来ざるを得ない。

 自分に有利な状況を作り、主導権を常に握る。勝つだけなら、これを守るだけで良い。相手を知り、己を知り、基本に忠実であり続ければ、ゴリ押しされても負けない様に、修正も可能だ。

 だが、自分と同じ土俵に上がって来る者の方が少数派。故に搦め手への警戒を怠らない様にしている。

「そうなんだー。ならー、邪魔しちゃ悪いしー、私は帰るねー」

「えぇ、濃紺に宜しく!」

 会ったら伝えておくねー、と去り際にネフライトが手を振り、帰還の魔法陣の中へと消えていく。

(……アートに会った事を自慢するの忘れた。まぁいい、龍に教皇の捕獲なんて関係ないし)

 協力者の一人に、真龍達の恩人がいたのだが、教会の恥にも触れる為、黙っていた事にする混沌。

 上には上がいる。教皇の捕獲を手伝った協力者達は、混沌でも簡単には勝てない。

 格闘だけならまだなんとかなるが、異能だけで互角に戦えるのは、濃紺くらいだろう。

 龍の恩人である、アートという強者とは、戦って勝った事もある。その兄弟姉妹とも、妹の暗黒ダークとタッグを組んで、良い所までイケた。

 結果として、フィールドにした孤島を海中へ没したが、再建したので問題ない。

「ん? ……ネフライトの鱗持ちって、濃紺の弟子よね。そんで、マリの孤児院の卒業生だから、マリの弟子とも言える。ついでに二人は夫婦で、近いうちに教会にも来るはず。なるほど、先輩として助けろって事だったのか」

 実際には、濃紺としてはギルドの運営を見直せと警告しただけで、今回の空港テロに偽装した侵略と虐殺は関係無い。

 枢機卿の一人が、今回の情報を掴み、空軍に話すも準備に時間が掛かってしまい、空港の二つから四つは落ちてしまう。という見解を示してきたので、混乱なくエアカバー可能な凄腕を探すと、たまたま混沌を見かけたので頼んだのだ。

 混沌は教会本部のスタンドアローンな戦力。一人で国をボコれるので、局所的な戦域を予想して、更に絞り込める。そこにどの程度の戦力があるかも予測出来るし、保険として使える戦力を、近くから引っ張って来る事も考えていた。

 今回、初動は普通だったが、途中で予想外の戦力が現れる。

 それが濃紺達の卒業生であり、弟子と言っても過言ではない。

 使える戦力もピンキリなのだが、マリや濃紺の弟子なら、囮としては十分に使える。

 強者に会ったら逃げるくらいはする筈なので、ていの良い陽動だ。弱者と侮っていたら、強者だった。問答無用で棺桶にぶち込める。

 と、そんな絵を描いていたが、タイミングが遅かった。

 マリと濃紺は、卒業生が死にやすい事を憂い、改良に改善を重ねた。結果、いざという時のメンタル、咄嗟の行動力を養い、可能な限り強くして送り出す事にしていく。

 カイ達は異能に頼らずとも戦えるが、本来は空港で死んでいる。

 列車強盗はじっとしていれば乗りきれるが、空港ではどうやっても死ぬ。

 知性的武器がなければ、あっても少ないならば、四人中三人が死んでいたし、生き残りを救う為に混沌かリラを向かわせていただろう。少なくとも濃紺は、リラを差し向けるだけの用意をしていたし、侵略してきた軍隊と相手国を物理的に粉砕する。

 家族も同然な卒業生が死んだなら、報復は必然だ。

 召喚魔法にも濃紺の保険はきちんと発動した、ドラゴン以外だったなら死んでいたかもしれない。

 卒業生の大半が死んでクローンになっている。カイ達も仲間入りして、借金地獄を強いられていただろう。

 クローンもピンキリで、性別反転や、生育不良によるステータス低下が起こる。下手すると、クローン体が出来たら、そこでクローンは完成したという理由で、臓器を抜かれたり、殺されてしまう。二度目を行えない事情を政府へ説明し、遺体を火葬する事で証拠も焼失する。

 マフィアやヤクザな連中と癒着していると、政治家も人口調整に悩まされなくて済む。仮に秘密裏に飼育されていても、強者による事故で設備ごと潰せる。

 死にやすくも生き返りやすい世の中だが、食糧や金属等の資源は有限。富める者と強者が搾取する一方で、貧しい者達には最低限の生活環境を与える。中世と近代な人間が転位する以上、それだけで衣食住は改善され、昔と比べれば転位後の方がマシとなり、それを手放すくらいなら、金銭的に貧しくてもインフラを享受する事を選ぶ。

 誇りが無くても、衣食住があれば生きていける。衣食住が揃わなくても、誇りがあれば生きていける。

 どちらもなければ死に体で、どちらもあれば、惰性気味な暮らしとなる。礼節が無いなら傲慢に、あるなら謙虚に振る舞える。

(占領されそうな空港は、他にもあるようね。こっちはミサイルを二発撃ち込んで、違う空港に向かおうかな)

 混沌は滞空させていた戦闘機の機内へ戻り、近くの空港をロックオンして、ミサイルを管制塔へと発射する。と同時に反動で反転して、別の空港に向かう。


 空港の管制塔が二つほど、ミサイルによる爆発で、露天となり風通しが良くなった。その代わり、人員の大半が死んだ。

 混沌カオスによる警告を受け、何も知らない職員と、他国へ内通していた職員が衝突し、混乱していた状況もあってか、防御や退避をしていなかったのだ。

 空港内は勿論、行政との通信も電磁障壁と攻勢防壁でカットされている。管制塔のみ、旅客機や戦闘機と通信出来ていたが、それすら物理的かつ人的に途絶。瓦礫でコンソールのタッチパネルが割れ、死体へのショックからか、生き残りの職員もパニックだった。

 残された手段は外部からの強制着陸や使い魔による伝達方法。ナノマシンによる位置特定は可能だが、外部の状況は分からない。

 そんな状態を行政が気付かない筈もなく、空港から近い空軍基地が空港の機能を代行して、旅客機や戦闘機を捌いていく。

 政府から空港が落とされたと判断され、陸軍の二個中隊と傭兵一個中隊、空挺一個小隊に魔導兵科も二班加わり、奪還指示が下された。

 迅速に敵を排除し、空港を利用していた客と職員を、肉片になっていても回収しなければならない。

 ただ取り返すだけなら、強者に頼むだけで済む。後始末を含めて揉み消せば、政府への不満に繋がる。

 部隊集結から空港へ着くまで、約二時間掛かった。転位魔法を使っても遅いのは、空港の障壁や結界を無効化させるのに、時間が掛かってしまう為だ。

 混沌から空港の監視ツールを譲り受けた際、軍専用にするという無駄があったのは事実だが、それでも他国の張った障壁を抜くのに、手間取ってしまった。

 しかし、現場に着くも他国の軍隊による抵抗は無い。

「生き残りを発見!」

 夥しい死体の数、客か敵かの判別も難しい中で、隊員の一人がカイ達を見つける。

 この非常時にも関わらず、呑気な事に、ファミレスのソファーで寝ていたのだ。

 知性的武器を見張り要員にして、リクとソラは肩を寄せ合って眠り、カイはクウに眠ったまま捕食され、クウは無意識なまま貪っていた。

 ショートの呼び掛けに、リク達が起きると、自国の軍人達が半包囲していく。

 ソラがカイとクウの身嗜みを整えてシバく最中、リクは軍人達へ事の顛末を伝える。

 幸いにも監視カメラが無事で、消されたデータもサルベージ可能で、証言とほとんど一致していたので、リク達は解放された。

 説明していると、死んだ筈の隊長格の男性が動き出したので、軍人達の半数が聖属性の魔法で浄化する。

 だが、浄化の魔法では効果が薄いようなので、ナイフで床に縫い付けて、その場へ封印した。

 ソラは死体や霊魂、殺意や敵意が充満した場所に居た為か、死霊魔法を習得する。

 異能による捕獲のパッシブで、霊魂は見えるし、今では触れるだけで捕獲完了となる。また、魔法的にも捕獲出来るので、パッシブの使用料だけで済む。

 状況終了後、相手の軍人は元より、職員と客の霊に触れていた。死体の大半にも触れたので、当然、隊長格の男性も捕まえた。

 生き返ったのは、事前に仕込んでいた魔法か道具の効果だろう。ソラにはゾンビやスケルトンを、選別する時間的猶予が無いので、霊魂は捕まえても、死体までは捕まえない。

 アンデッドとはいえ、霊魂は使い魔的ポジションなので、浄化出来なかったのだ。死体への所有権は得ていないので、憑依した霊魂ソフトとアンデッド化した死体ハードとの、ダウンロード内容が異なる為に誤作動を起こした様子。

 教会や病院関係の他、上級の魔導師や魔法使いが蘇生する。あるいは作成した魔道具による蘇りなら、蘇生した者と見なされる。だが、死霊魔法やテイマー等、蘇生資格を持たない者が蘇生させると、どんなに完璧な蘇生でもアンデッドとして扱われてしまう。

 今回はソラがパッシブで捕獲した魂が、魔道具によって肉体に戻った為、隊長格の男性はアンデッド化した。

 他国、いや、敵国の軍人というだけでも殺されるので、アンデッドはほぼモンスターと同等に処理される。

 モンスターは万国共通の敵とも言えるので、正当な免罪符。処分に精神が削れる事も無い。

 ソラは捕獲の異能持ちだが、テイマーや召喚士もモンスターは殺す。

 ただ、誤作動したままでは、使役に支障をきたすので、霊魂を取り出すか、肉体を捕まえてハードの上書きをする必要がある。

 が、アンデッド化しているとは言えど、クローンの素体でもあり、ハードに刻まれた魂の記憶情報が多いので、まともなクローンや転生が出来ない可能性がつきまとう。

 要するにこのままだと、蘇生措置違反の罰金を払う事になる。それを回避するには、捕獲した霊魂を手放すしか無い。また、元の肉体に魂が受肉しているようなモノなので、霊魂を取り出す事は難しい。

「勿体無いけど、諦めるしかないんですね」

「クローンにしても、現在進行形で、元の肉体情報と魂の情報が混ざっている。劣化したクローンは、本来のクローンとしての能力より格段に落ち、情緒不安定なので管理も大変だ。異能でなんとか出来るとは言えど、その分の使用料は減額されない」

 つまり、蘇生不可能として処理するしかなく、ソラの勝利者としての我が儘は関係無い。

 制度で決まっているから従うしかなく、変えたいなら裁判所で争う必要がある。

 はっきり言って、時間の無駄だ。

 罰金と通常の使用料、どちらも高いので、両方は払えない。

 手放したアンデッドは火葬され、魂を砕き、相応の努力と状況を書面化して、敵国の政府と教会の本部に送られる。

「孤児院の卒院を証明するモノは?」

「……証明書か何かの事ですか?」

「いいや、記念品とかの事だ。売ったなら、どんな形状や名称なのかも教えて欲しい」

 孤児院と質屋に確認する決まりがある。特に無いなら、院長やシスターの名前とかでも良い。

「選別に貰ったモノなら、あります」

 リクが十字架を手渡す。

「……ふむ。正十字、マリア教本部の製品。一致するな。院長がマリ、修道士はミッドナイト……ん? 牧師の間違いかな?」

「牧師でも修道士でも良いって聞いてます」

「まぁ、孤児院に居た確認が取れれば良いか」

 隊員は懺悔した者を匿っていると思い、ミッドナイトの実在はどうでもよく、リク達の在籍の確認が重要と判断した。

「では、聴取を終わります。捕獲した霊魂と、拾った武器の所持、クローンの所有権、その他諸々は約五分後に決まると思われます。しばらくお待ち下さい」

 軍にとって不都合な事実があったら、口裏合わせて書類を誤魔化す事になる。

 国家は民衆に優しくは無い。この場でカイ達を死体にして、陸軍が奮闘した事にも出来る。

 だが、それをやると、強者が生き残りだったら瓦解するので、穏便に済ませる努力を払う。

 暴力装置が暴走していては、肩身も狭くなるし、国益を損なう上に国民も流出する。

 しばらく待つと今までの規定通り、カイ達はクローンと霊魂の所有権を得た。銃等の一部の武器は研究用として押収されるも、一定数が金銭に変わる。使い捨ての道具や既に解析済みの武器は、カイ達に渡った。

「近くの空軍基地から、旅客機の発着を行っています。目的地へ向かうなら、この認証カードと手持ちのチケットを見せて下さい」

 別の隊員から、認証カードを貰い、軍用バスで基地へと向かう事になる。

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