薄桃色の心、黒々と壊されて。【下】

しばらく見ていると、“りん♡ゆう”というアカウントの投稿が目に付きました。アイコンは口元にステッカーが貼られたりんちゃんとゆうくんのツーショット写真でした。それは私のともだち一覧にあるりんちゃんのアカウントではなく、ステータスメッセージを見てみると、1番上に「りんりんの裏垢

( ⸝⸝⸝•ᴗ•⸝⸝⸝ )♡♡」とあり、私に教えてくれたアカウントとはまた別のアカウントであることが分かりました。その投稿の内容はというと、6ヵ月前の投稿で「付き合って半年♡ by.りんりん/with.ゆうたん」というもので、形だけともだち登録した人がシェアしたものでした。6ヵ月で付き合って半年という事は、私が相談している時には既に付き合っていたのでした。私はたしかにゆうくんは私よりもりんちゃんとかの方がお似合いだ、とは思っていました。だけれど、私が相談している最中で結局付き合っていた事に、何だか裏切られたような気持ちを覚えました。私が足をなくして、その一ヶ月後に2人仲良くケーキを食べていた事に、裏切りを感じました。さっき私に抱きついてきた両腕は、私よりも多くゆうくんを抱きしめていた事に、裏切りを感じました。わざわざ裏垢を作って、付き合っていた事を私に隠していたことに、裏切りを感じました。殺してやりたい、と思いました。私が他人の事に文句を言うのはお門違いだという事は分かっています。だけれど私は止められませんでした。けれど私は殺すなんてできません。善心とか、法律とか、そんな事より先に、足がないから物理的に無理なのです。だから私は、少し前に流行った“チェーンメール”を使う事にしました。いかにもな恐ろしい内容をでっち上げ、文にしました。りんちゃんへの恨み、足を奪いに行くという脅迫、実際の被害例、架空の電話番号、最後にこのメールを真実だと言い張るダメ押しを文に込めました。そして、いつかりんちゃんやゆうくんに回った時の事を考えながら、「回ってきた」と称してインターネットの海に流しました。

ある日のことでした。長い月日が経ち車椅子に乗り四肢欠損者の為の高校に通っていた私の元に、今の友達から一つの文章が送られてきました。それは、4年前に私が流したチェーンメールそのものでした。私が軽い気持ちで流したチェーンメールは、しばらく見ないうちにネットの海を漂い続けたようで、インターネットで検索をかけるとYahoo知恵袋などの質問がヒットするような有名なものになっていました。生みの親として少しだけ嬉しい気持ちになったあとに、後悔を感じました。りんちゃんだって言いづらかっただけかもしれないのに、あんな恨みをネットに流してしまった事を。




こんな私だけど、ありがとう。りんちゃん。

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