薄桃色の心、黒々と壊されて。【上】
なんだかありきたりな、白い壁に囲まれた部屋。私は桃色の掛け布団を捲って、そのベッドの上に起きました。服を寝巻きから制服に着替え、寝惚けた眼を擦りながら階段を降りました。向かって左側のドアを開け、料理を机に置くお母さんとテレビを見つめるお父さんに、「おはよう」と小さく声をかけて椅子に座りました。私は、テレビから交通事故の悼ましいニュースが流れる中、手を合わせ「いただきます」とか細く言い、小さく口を開けて朝御飯を口に運んでいました。食べ終わった後、手を合わせ、これまたか細い声で「ごちそうさまでした」と言って、洗面所に歯を磨きに行きました。歯も磨き終わりリビングの時計に目をやるとそろそろ家を出る時刻だったので、「行ってきます」と、玄関からではリビングに届かないような声で伝えて扉を開けました。学校に着き、教室のドアをガララッと開けました。「おはよう」とは言わず、クラスみんなの視線が突き刺さり教室中が静かになったのを下を向きながら理解し、自分の机に向かいました。教室に一歩踏み出す頃には、また教室はみんなの話し声に包まれていました。カバンを置き席に着くと、隣の席のりんちゃんが「おはよう!」と、私とは違った元気な声で話しかけてきました。私は静かな声で、「おはよう」と返しました。しばらく本を読んでいると、朝のホームルームが始まり、教室が静かになりました。みんなの話し声というBGMがなくなったのを合図に私は本を閉じ、椅子に座り直し前を向きました。ホームルームも、授業も、なんの滞りも面白い事もなく終わりました。隣の席のりんちゃんが授業中に大笑いしていたので、りんちゃんにとっては楽しく過ぎたのかもしれませんが、私は知りません。こんな私でも、好きな人が居ます。私の席から右へ1つずれ、更に2つ前に座っているゆうくんです。私とは違い活発で、それでも他の男子とはまた違った、活発であり大人びた人でした。私はたまに、ゆうくんのことをりんちゃんに相談したりもしました。りんちゃんは笑顔で、そして真剣に相談に乗ってくれ、私の唯一の友達と言える存在でした。ある日のことでした。私はいつも通り学校に行くところでした。いや、いつも通りではなかったのかもしれません。前の夜にお父さんと喧嘩してしまい、罪悪感を感じながら下を向いて歩いていました。
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