その緑色、皮肉にも光を受けて。
陽光が差し込み、日光に照らされるベッド。その上に"僕"は起きた。今日は"君"と出掛ける予定が入っている。僕はベッドから降り、服を着替え、君との待ち合わせ場所へ向かった。
まだ君は来ていないようだ。音楽プレイヤーから伸びるイヤホンを耳に当て、君を待っていると、5、6曲流れ終わった当たりで君が来た。
「送れてごめん!」
別に構わないのだが、人というのはやけに謝りたがる。それじゃあ行こうかと言って、近くにあった喫茶店へと向かった。
喫茶店は日曜日の朝というのもあって、そこそこ混んでいた。十数分程度待った後のち、席に座る事が出来た。僕はメニューに大々的に載っていた期間限定らしいメニューを頼んだ。別にどれも美味しいだろうから、何かをわざわざ選ぶ必要などないだろう。そう思っての選択だ。ようは選ぶのが面倒なのだ。それに対して、君はうーんうーんと唸りながらメニューと睨めっこしている。こういう所がまさに僕と対照的な所だと僕は思う。逐一喜び、怒り、悲しみ、悩み。そんな他愛もない事が楽しい、と君は言うのだが、僕には
カフェで昼食をとり、服屋などをまわっていると、かなり車通りの多い交差点に来た。どうやら君は道を挟んだ向こう側に気を引く店があったらしく、走り出して行った。
その瞬間、信号機は赤く光った。車が再び往来する。君の華奢な身体は無機質な金属製の塊に打ちのめされた。「えっ・・・」と僕の口から声が漏れ出て、気が遠くなり、呆然とする中周囲からは悲鳴と救急車のサイレンが鳴り響いてきていた。
気がつくと、白い床と壁に囲まれた室内にあるソファに僕は座っていた。視線を上げると、「手術中」のランプが静かに光を放っている。すると、ドアが開き、君を寝かせたベッドが現れた。僕は義務的に治療の結果を聞いた。
「命に別状はありません。」
「ただし、著しい脳の損傷により、
時が凍った様だった。遷延性意識障害。俗に言う、"植物状態"である。君は病室に運ばれ、僕もその後をただ呆然と着いて行った。
陽光が差し込み、日光に照らされるベッド。その上に君は横たわっている。その目は何かを見ている様で、何も見えていないのだ。
窓の外に、木漏れ日を光らす広葉樹の葉が見えた。"植物"人間となった君を
緑が、目に、眩しかった。
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