第9話

一限二限三限四限と、瞬く間に終わり放課後になって緊張が後を追ってきた。

だいたい、女性に贈り物なんてしたことないし。

そうやって脳内逃避を繰り返しても足は図書室へ向かっていく。

考えて考えて床を見ながら歩いていると前から声をかけられた。

「おーい、頑張れよ!」

藍がそんなことを言いながら肩を叩いてくる。

「good luck」

そう言って俺が来た道を辿って行った。

「ありがとうな!頑張る!あと、藍もおめでとう!」

大きめに声を出すと藍の歩みが一瞬止まったが何事も無かったかのようにまた歩き始めた。

俺は嬉しかったのかな?と思いながら図書室の扉に手をかけた。

重い。

こんなにもこの扉が重く感じたことは無い。

だが開ける。

何事もやらないことには始まらない。

ギィー、ガラガラ

茜は当然先にいた。

今日も返却本がないらしく既に本を読んでいた。

俺は意を決して口を開く。

「あの、茜少し話があるんだ。」

茜は読んでいた本に栞紐を挟み、こちらを見た。

いつもより少し頬が赤く色っぽくも感じた。


「どうしたの?」


茜から声をかけられ俺は今、するべきことを思い出す。

「あぁ、藍に今日が誕生日だって聞いたんだ。だからこれ!良かったら使ってくれ!」

朱色の包み紙に包まれたプレゼントを茜に突き出す。


「ありがとう。とっても嬉しい。中見てもいい?」


微笑みながら受け取ってくれる茜を見て俺の心の中は有頂天だった。

だが平然を装いながら

「あぁ開けて見てくれ。気に入ってくれたら嬉しい。」

それを聞いて茜は丁寧に包装を開けていく。

目の前で選んだプレゼントを開けられるのがこんなに緊張するなんて知らなかった!

そして栞が姿を表した。

茜はデザインを見て


「すごい、私のために作られたみたい。色も、形も好きよ。本当にありがとう。早速使うわ。」


先程読んでいた本の栞紐を外すとすぐに栞を挟む。

その本を大事そうに抱き抱えて


「こんなに嬉しい誕生日は初めて。一生大切に使うわ。」


その姿を見れただけで幸せだと思えた。

「そんなに喜んでもらえて、こちらこそ嬉しいってもんだよ。」

そうこうしていると下校時間が来たらしくチャイムがなり始めた。

こんなに熱の篭った会話を茜としたのは初めてですぐに時間が経ってしまったようだ。

日誌や後片付けを手早く2人で終わらせて図書室をあとにした。

扉の前で


「今日は本当にありがとう。じゃあまた明日ね。」


言い終わると廊下を真っ直ぐ歩いていく。

あ、肝心なことを言ってない!と思い出した俺は声を出した。

「茜!誕生日おめでとう!」

直後茜はピタッと足を止めた。

こちらを見て小さく手を振るとまた歩き出した。

姉妹で同じ行動取るなんて流石だな、と思いながら俺は鍵を職員室に返しに行くのだった。




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