第8話

文房具屋に着いたところで藍を見てみる。

彼女は両手にぬいぐるみをもって心底幸せそうな顔をしていた。

俺に見られていることに気づくと

「えへへ、、ありがとうね。」

「おう、片方は茜にあげてやってくれ。」

そう言って藍の顔を見ると、少し暗い顔をしたが、直ぐにパッと明るくなって、

「もっちろーん!お姉さんだもの!あっ、ほらあそこに本関連のコーナーがあるよ!」

「ほんとだ、よっしゃこれからが本番だ!いいやつ探すぞー」

「やっぱり、ブックカバーよりも栞の方がいい気がするよな。茜、結構図書室の本読んでるし。図書室の本ならブックカバー付けねーもんな。」

「うん。私もそう思うわ。ブックカバーは付けるのが結構面倒なのよね。その点栞はいつも役に立つわ。」

藍と意見を混じえながら考える。

意外とこれがいいなと思えるものはすぐに見つかった。

和紙で作られていてまさに茜色といった色で蜻蛉が書かれた栞だ。

茜へのプレゼントはそれで決まったが、

そこで隣の栞に目が行く。

同じ作りで藍色、デザインされているのは紫陽花だろうか。

こちらはまさに藍にぴったりだと思った。

俺は藍にサプライズでこの栞を送ることを考えた。

そのためには、

「藍ー、さっき見た時タピオカめちゃくちゃ並んでたから先にならんどいてもらってもいいか?」

「いいわよ、じゃあそこで集合ね。」

藍は勘づくことなくタピオカのお店に向かっていった。

俺は藍がエスカレーターで降りてくのを確認すると2つの栞をもってレジへとむかった。

「すみません、その栞別々でラッピングしてもらえますか?」

「かしこまりました。」

滞りなくミッションを完遂して、俺はタピオカの店にむかった。

この時間帯は意外とならんでなくて、藍は既にタピオカを飲んでいた。

「わりぃ、時間かかっちまった。いくらだった?」

「お金はいいよー!さっきこのぬいぐるみ取ってくれたからね!」

「おぉ、、そうか。」

俺は藍からタピオカを受け取り飲み始める。

「意外と上手いんだな。」

ひとりでに呟くと

「まさか、飲んだことなかったの!?人生の半分は損してるよー」

そんな馬鹿なと思いつつもタピオカの美味しさに確かに少しは損していたかもな。

そう思ってしまい、少し負けた気分になるのだった。


帰り道。

帰る方向はほとんど一緒で降りる駅も一緒だった。

交差点で藍が言った。

「私こっちだから。」

「そーなのか!あ、少し時間をくれ。」

俺は手早くカバンの中から青い包装紙を出すと

「少し早いが、誕生日おめでとう。」

プレゼントを渡した。

藍はキョトンとした顔をして俺も見た。

一瞬、何かを考えるような顔をした後、眩い笑顔で

「えぇー、私の分まであるの!?嬉しいなぁ。」

と喜びをあらわにした。

「大事に使ってくれよな。今日はほんとにありがとうな!」

「いえいえー!こちらこそ、この子達やらコーヒーやらお世話になったよー!じゃあまた来週ね。茜ちゃんにちゃんと渡すんだぞ!」

そう言いながら俺達はお互いの帰路にもどった。

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