第4話

放課後の図書室で俺は息を整えていた。

「ふー、なんで俺は走って逃げたんだろ。」

息継ぎの合間につぶやく。


「どうしたの?君が急ぐなんて、背中の薪に火でも着けられたの?」


彼女は意外と冗談を言ったりもする。

でも、今みたいに本の内容を使うことが多く、最初は学の無い自分は理解できなかったものだ。

だが、彼女に進められた本を読む内にわかるようになっていって、今では僕も同じような冗談を返す。

「たまにはね!太陽の10倍早く走る日があってもいいんじゃないか??」


「ふふっ、今の表現私は好きよ。」


そう言いながらも図書委員の仕事をてきぱきとこなしていく。

「さ、俺も働くよー!」と言いながら返却本を元あった所に戻し始める。


仕事もひと段落して、最後の仕事日誌の記入を始める。

この時間はおしゃべりを出来る時間でもある。

日誌は1冊しかないので交互に書くのだが、彼女が今は書いているので俺は質問してみる。

「一色って双子なんだな!それも妹なんて、俺は間違いなく長女だと思ってたよ。」

妹という単語を聞いた途端にペン先が止まった。

まるで時計の短針のように動かない。


「姉に会ったの?」


そう聞かれ俺は答えた。

「あぁ、同じクラスだしな。」

そう答えると彼女はまた動き出した。

時計の長針のように性格に字を刻んでいく。


「そう。」


短く一言だけ返すと彼女は日誌を渡してきた。


「君の番だよ。」


俺は受け取ると日誌を書きながら考える。

なんかまずいこと言ったかな。

姉と仲悪いのかもしれないな。

と、ひとまず答えを決めつけ日誌を記入した。

彼女の日誌を見ると誤字をしたのか1文字だけ上から塗りつぶされていた。

彼女の誤字を見たこと無かった俺は少し驚いたが、人間だものと思い何も追求はしなかった。


「また明日、図書室でね。」


その一言でめんどくさい図書委員の仕事の全てが報われる。

その事への感謝を込めて俺は言った。

「また明日!ばいばい!」




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