第三章/導く緒

STORIA 34

米国、太平洋岸。カリフォルニア州

──Monterey Institute of International Sutadaies.

若者が行き交う、この校内では各自が今日も修業を終え次の予定にと忙しく足を進めている。

ブロンドの中に淡く陽の光を受ける薄茶の髪。

──絲岐 蘭。

アメリカへ発った蘭の生活は来る日も勉強に追われるという物だった。

学校を後にすれば、引き続き場所を変えての自主勉学、そして家では深夜遅くまでの復習と、そんな日々を繰り返していた。

だけど忙しい中にも親しく話せる相手も出来た様で。

「Hi! ラン。今から息抜きに食事にでも行かない?  そこの角に美味しいスウィーツの店が出来たの知ってるでしょ」

「エミリー」

蘭は教材を片付けながらブロンドに輝く髪を見上げた。

「ごめんね、今から図書館に行って調べ物をしなきゃいけないの」

「ランはほんと、勉強家ね」

「ごめんね、エミリー」

「じゃあ今度ね、仕方ない。今日は彼でも誘おうかな。そう言えばランは、こっちへ来てから彼とは連絡を取ってないんだって? どうして? 余り放って置くと余所へ持って行かれちゃうわよ。平気?」

「……平気よ。私、今は勉強に集中したいの。それにあの人の事、信じているもの」

「強いのね」

エミリーが熱い眼差しで蘭を羨む。

「私だったら遠距離なんて絶対無理! ランは凄く幸せ者ね。彼が身近に居る私より、ずっと幸せそう」

「そうかな。ありがと……、エミリー」

その時、パタパタと教室へ駆けて来る誰かの足音がした。

「ラン、居る?」

「ジェシカ?」

「ラン、丁度良かった。面会人よ、正門の所。男の人」

「え……、誰……?」

「それが名乗りにならないんで誰かは……」

「ね、彼じゃない? びっくりさせ様と想って来たのかもよ」

エミリーが嬉しそうに言う。

蘭は少しそわそわしながら面会人の待つ正門へと急ぎ足で向かった。




「お兄ちゃん……」

彼女を待っていたのは兄の連だった。

「何だ、残念そうだな」

連はそう言って苦笑いをして見せる。

「そんな事……。それよりどうしたの。何かあったの?」

「いや、元気で頑張っているのかと想ってさ。連絡が全くないと心配になるだろ。それよりこれ、蘭の好きな店の洋菓子。アメリカじゃ買えないだろうと想って。日も結構持つみたいだからさ」

「わ、嬉しいー。態々日本から買って来てくれたの? ありがとう、お兄ちゃん大好き」

蘭は嬉しそうに渡された菓子箱で口元を隠し微笑んだ。

「単純なやつ」

連が右手でコツリと蘭の頭を小突く。

「授業はもう終わったんだろ? このまま何処か行くか。蘭、兄ちゃんに案内してくれよ」

「でも私、これから図書館へ……」

「そんな勉強ばかりしていたら顔が委員長みたいになってしまうぞ」

連は両手の人差し指で目尻を吊り上げて見せた。

「やだ、お兄ちゃん。今時古過ぎるよ。もー分かった、いいよ。じゃ近くの公園なんてどう?」

「いいね」

流石の彼女も兄の連には敵わない。








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