裏第一章 死魔たちの会話
ピアノの音が響いた。レの音が長く薄く鳴る。
「・・・どこにもいないじゃない、煩悩魔。」
「おかしいな、そんなはずはないんだが。」
大きな鏡に映った杉の木広場を見ていた煩悩魔と陰魔が首を傾げた。陰魔は、露出された自らの肌に長い指を触れさせて笑う。
「なぁんだ。本当に煩悩魔が作るやつってたいしたことないわねぇ。」
「な!!あ、あれは俺のじゃない!!」
すっ、視界を黒い何かが横切ったと思うと鏡の前に真っ黒いフードに身を包んだ人影と、その上にあぐらをかいて浮かぶ黒い縁の大きな眼鏡をかけた少年が現れた。
「うぬが、あのようなものを作るはずもない。」
「そう、あれはボクのだよ。結構な自信作ね。」
「あら、死魔に天魔坊やじゃない。珍しい組み合わせねぇ。何の相談?」
ふわふわと浮いている天魔は、ぶかぶかのつぎはぎだらけのつなぎ服を揺らめかせながら、陰魔に近づく。
「へへ、死魔のフードの中を見ようと思ったんだけど。死魔に気づかれて殺す!!って言われてたとこ。」
にへら、と笑うと今度はくるりと天魔は煩悩魔に向きなおる。
「まだ、ここからがタイムラグーンの見せ場だよ。彼は今、違う世界に飛んでいるんだ。彼はやられる最後のときに残った邪気(エネルギー)を爆発させて空間に穴を空けることができるんだ。つまり、邪気が残って入れば残っているほど巨大な爆発で遠い空間に敵を飛ばすことができるんだ。そして、現にさっき彼はイエローと一緒に。びょーん!さよーなら。」
高い天井まで飛び上がった天魔は楽しそうにケラケラと笑いながら、戻ってきた。
「そ、そんな能力だったのか。」
煩悩魔は体にごてごてとついた顔を動かし、自分の顔に手を当て頷いた。それを見つめ、天魔は満足そうにまたにへらと笑った。
「あら、じゃぁ、やっぱりあれは天ちゃんのだったのね。」
「うん、そうだよ。陰魔姉気づいてた?」
「もちろんよ、煩悩魔があんな趣味悪いのなんて作らないもの。」
「ガビーン、趣味悪いのって、ボクの子どもたちを陰魔姉はそんな風に思っていたの?」
「えぇ、そうねぇ。」
くるくる、くるくる、天魔は陰魔と煩悩魔の上を器用に旋回する。
「あぁ、だとしたら、俺たちにはもうどうしようもないじゃないか。」
「ずいぶんと手のかからないヤツだわ。」
そんな二人の様子を楽しそうに見ながら、天魔は死魔に囁いた。
「どーする?死魔、今ならコスモレンジャーは全力を出せないよ。五人揃っていない彼らなんて倒しちゃえば?」
悪魔の囁き、まさにそれだ。
「ハンデなど、いらん。」
「ふーん、そっか。残念。」
フードの下でギラリと赤い目が光り、低く呻るような死魔の言葉に天魔はやはり楽しそうにカラカラと笑う。その瞳は無邪気な子どものようで狂気に満ちた少年のようでもあったがそれを見ている者はここにはいなかった。眼鏡が光を反射し、瞳を隠す。
「じゃぁ、もうコスモイエローもタイムラグーンも戻ってこないんだな。」
「あら、残念。あのぼうやの反応が好きだったのに。」
切りつけたときの声が最高にかわいいのよう。なんて話している二人には教えない。
本当のことなんて、何一つね。
「さぁて、どーだろうね。」
ボクはニコニコ笑うだけ。
何も知らない、バカのように。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます