魔龍と聖女
聖女の勧誘
「私達新体操部のマネージャーになっていただけないでしょうか?」
綺麗な日本語を話すのは、目の前の
とんでもなく整った顔は、
潤んだ瞳は優しい光を
もし聖女という人間がいるならば、彼女のことだと誰もが言うだろう。
「それ、俺に言ってるのか?」
対して極悪の化身とか、陽林院高校の悪魔とか、洲島の邪竜とか言われているのが俺。
女子はおろか男子さえ、約一名を除いて、俺の視界に入ることさえ恐れている。
「はい。
彼女が頭を下げ、フワッと金の髪が揺れた。
固唾を呑んで見守っていた周囲のギャラリーどもが騒めき出した。
「
「
「紫峰院さんが一年生でも、彼女の言葉を無視できる奴なんていない……」
「ああ。じゃああの悪魔が、新体操部の女子を
「
―― 言いたい放題だな、外野どもが。
頭を下げ、顔の見えない紫峰院姫華にだけ聞こえるように、声を飛ばす。
「おい女狐。何を企んでやがる」
「私ね、小心者なの。だからあなたを監視下に置いてないと、気が休まらないの」
とても小さく呟かれた、俺にだけ辛うじて聞き取れる程の、彼女の言葉。
「喜びなさい柳伝君。本来は男子禁制で、特にあなたのような粗野な人は、近づくことさえ許されないんだから」
「断る」
「駄目よ。もう決まったことなんだから。あなたに拒否する権利は無いの」
紫峰院が頭を上げる。
それは
「お願い、できませんか?」
「……わかった」
周囲のギャラリーの悲鳴が爆発した。
防弾ガラスがビリビリと震え、ラウンジの入り口から、生徒指導の教師が駆けて来るのが見える。
「くそったれ」
俺の放った悪態に、初めて、紫峰院の笑みが変わる。
口の端を少しだけ挙げて、一瞬だけ瞳に浮かんだ
「こき使ってあげるわ。楽しみにしてなさいな」
とても綺麗な
「〇ァック」
短く中指を立ててやった。
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