第3話 タケルとの交流

 今までのマソドレイクとは異なるマソドレイクーー。


 当時の僕は、ちょっと変わったマソドレイクだとタケルを思っていて、でも僕が見つけたんだからと、家族には内緒にし、少しずつタケルと仲良くなっていった。


 リソゴやレモソのハテミツ漬けがかなり気に入ったようで、よく持って行き、代わりに旧い魔導具ーーげえむ機を貸してもらい、遊んでいた。


 思い返すと、いくら薬草や毒草に囲まれた環境にいるとはいえ、ずいぶん不用意に近付いたものだと思う。

 子供らしい好奇心は、時に危うい。

 祖父の監視があったから無事だったのだな、と今ならわかる。


 祖父は少し前から山に異変があることに気付いていた。


 薬草園持ちのスキルを手にすることで、自分の所有する薬草園、山など、申請した場所に関しては把握できる。

 僕が異変に出会ったこともすぐに把握されていた。


 当時、父は二代目就任までの修業期間を終え、あとは手続きの申請を行う予定で、実質的には父に代替わりしていたのだが、書類上は祖父のままであった。


 ある日祖父に僕は呼ばれ、タケルのことは知っている、一度タケルに会いたいと言われた。

 祖父を連れてタケルのいる場所へ行く。

 タケルは、なんだかいつもと様子が違っていた。


「ヒュウゴのおじいちゃんっ! か……? 

 圧倒的な力を感じるっっ……!」


 顔の部分に汗をかいた様子で、震えるタケル。

 僕は、祖父が魔力をタケルに向かって放つ圧力を感じた。


 「ほう……? 確かに、マソドレイクだが……。ふうむ。もう少し観察しようかの」


 魔力の圧力を和らげた祖父が、タケルに近付く。


 「おじいちゃん! やめて!」

 「ヒュウゴ。大丈夫じゃ。何もせん。ただ、観察するだけじゃ」


 タケルは固まって動けない。

 元々、マソドレイクは引っこ抜かれない限り、その場から移動できないのだが。


 「ふむ。もしや……新種か? まだ若い。幼形か。雄株のようじゃな」

 「そんな……見ないで……ください……」

 「おじいちゃん! 友達にもうやめて!」

 「友達じゃと?」

 「と……も……だ……ち……?」

 「そうだよ! これ以上何かするなら、僕が相手になるからね!」


 僕はいつも身に付けているお守りから、中身を出した。

 中には呼び笛が入っていて、これを吹けば、世にも恐ろしいものを召喚できる。


 母だ。


 「くっ殺せ! アリアさんを呼ぶくらいなら、今ここで殺せ!」


 祖父が動揺している。

 その隙に、タケルの前に僕は出た。


 「タケルは僕の友達なんだ! だから、タケルの観察は、僕がやる!」

 「ヒュウ……ゴ……」


 「わしが悪かった。ヒュウゴ、笛をしまいなさい。タケルさんとやら、君は……普通のマソドレイクとは違う。わしは、孫を危険に晒したくはない。そして、学術的にも君に興味がある」


 「……安全だとおじいちゃんに思ってもらえるまで……ヒュウゴが調べるのは構わない……」


 こうして僕は、祖父への定期報告を入れる事を条件に、タケルの観察記録をつけることになった。



 この記録を基に数年後、マソドレイクと異なる性質を持つため、ニポソ産マソドラゴラと学名がつくようになる。

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