第24話 ババアは自撮しなくてもいい
「えっへん! お姉さん、暦ちゃんがそういう台詞を口にするのは想定していたんだよ」
ババアが何やら策があると言いたげに、にんまりと微笑んだ。
「普通想定すると思うよ」
今まで散々断っているんだから想定していない方が頭がどうかしているような気も。
「お姉さんは暦ちゃんがマスターベーションをするのを推奨するんだよ。良いことづくめみたいだし、いいよね?」
「同意を求められても困るんだけど……。それに、僕が何気にマスターベーション大好き少年みたいに勘違いしていないかな?」
嫌いではない。
だが、好きだと断言されるのは些か困るよ。
「男の人はみんな好きだって検索ででてきたところに書いてあったよ。違うの?」
「宗教上の理由を除けば、嫌いな男はいないと思うんだけど……」
オンゲーとかでイライラしている時には、いじっているだけでそのイライラが解消できたりするし、心の安定を保つためにはいいものなのかもしれない。
「それをババアにどういう言われる筋合いはない……かな?」
けれども、それをババアに推奨されるのはあり得ないんじゃないかな。
「それはよく分かっているよ。だからね、お姉さんは暦ちゃんにおかずを提供しようと思うの。おかずって大事なんだよね? 書いてあったよ」
その言葉の意味が僕の頭では全然理解できなかった。
おかずを提供する。
つまり、このババアをおかずにしろ、というのかな?
そんなの無理だ。
冗談で言っているとは思えないけれども、僕には絶対にできない。
恋人候補にさえならない存在をどうしておかずにしないといけないのか。
「その提案は却下します」
「えええええっ!! 名案だと思ったのに。そうしたら、暦ちゃんがもっとお姉さんの事、好きになると思ったのに」
ババアがシュンとなってしまった。
僕に断られたのがそこまでショックだったのかな?
「仁奈さん、一つ忠告したいのですが……」
僕達のやり取りを見守っていた西念さんが口を挟んできた。
何を言うんだろう?
「男の人のおかずというものは、主にアダルトビデオなんですよ。家に帰ると兄がよく見ていましたから。そのようなものを仁奈さんは提供できるのですか?」
その一言で僕はちょっと引いてしまった。
やはり、闇があるんだね、西念さんには。
その事には触れないでおくのが一番なような気がする。
裸族な上、妹が見ているところでアダルトビデオを見ながら致している兄がいる家庭など闇そのものだ。
西念さんがちょっとぐいぐいと来るところなどは、闇のせいなのかもしれない。
「下着とか水着じゃ駄目なのかな?」
探るような視線で僕を見てくる。
「……どうだろうね」
そんなものは見てみないと分からないけれども、ババアが水着だとか下着だとかの写真が送られてきたら、きっと反応はしなくもないかもしれないが、その時の状況では、なくはなくもないかもしれない。
「仁奈さんの痴態を見せるのが一番効果的かもしれません。それができるのですか?」
平静そのものの西念さんがそう問いかける。
「……お姉さん、分からなくなって来ちゃった」
仁奈は苦笑をして、この場を誤魔化そうとし始めた。
逆にそれでいいんだよね。
ババアに毎日おかず用の自撮写真を送られてきても困るし。
「お姉さんは諦めきれないから今日の夜、一回送ってみるね。それで好評だったら、毎日は無理だけど定期的に送るっていうのはどうかな? お姉さんはアダルトには疎いので、健全なのしか遅れないけど……ダメかな?」
ババアが上目遣いで僕の心情を探るように見つめながら、そう提案してきた。
「一回だけならいいよ。それで気が済むのならば、ね」
僕がババアの自撮画像に反応などするはずがない。
来たのに『こんなものが使えるか! 女将を呼べ!』とかそんなふうな返信をすればいいだろうしね。
「絶対に送るね。だから、待っていてね、暦ちゃん」
「ああ」
というか、なんでババアは僕にここまでしてくれるんだろう?
好きだからという理由にしては弱すぎる。
もっと別な『何か』があるのかな?
それとも、ただ単にババアの頭が緩いだけで、考えなしだったりするのかな?
付き合いは長いはずなのに、僕はまだババアの事をよく知らないんだね。
女心と秋の空って奴なのかな?
それとも……別な何か?
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