第19話 初めての年越しと正月
年末年始は刑務所は休みに入る。
中の人たちは受刑者を含めうきうきするイベントの1つ。
理由は、28日から1月の3日にかけて毎日何かしらのお菓子が出るからだ。
まだ受刑していない拘置所の人間は普段からお菓子を買うことは出来るのだが、受刑者になってからはなかなかそうはいかない。
そしてもう1つは大晦日は24時まで起きてて良いということ。
通常21時就寝が24時まで伸びることでさえ気持ちが上がるのに、しかもラジオで紅白歌合戦も聞ける一大イベント。
外にいる時は何気なかった事でもうきうきするイベントなのだ。
それ以外は休日の過ごし方と変わるところはないが浮ついた気持ちで気が緩み、なにかしらのしでかしをした人間が調査となり罰を受ける事も少なくない。
初めての年越しでどんなお菓子が出るかと言うと、棒有名ポテチやチョコレート類。
基本的に昼ごはんの時に配られ、その日の夕ご飯回収の時にゴミを出すか休みの最終日の夕方までにゴミを出さなければいけない。
それ以降ゴミでさえも持っていようものなら即調査懲罰。不正入手とみなされる。
「かーッキタキター!!やっぱシャバのお菓子は違うよねー!」
「お菓子は毎日食べてるだろ」
「いやいや、だって〇ーザックは買えないし」
「確かに。早く出て自由に食べたいもの食べたいよねー」
こういう時に限ったことではないが、旅行雑誌なんかを読んでいる人がいると決まってこういう時話になる。
「うわーここ行きたい!!旅行行こう旅行!」
「どこどこ??」
「台湾!韓国でも良いね!日帰りで行こうと思えば行けるし泊まりで豪遊もありだね!」
こうした話だけを飽きもせずただ繰り返す。
現実逃避の1つなのかもしれない。
大晦日の紅白が終わり除夜の鐘が鳴り響く頃、就寝時間となり眠りにつく。
久々のシャバにいる感覚が眠りを妨げる。
そしてつくづく、やってしまったことの大きさと後悔がそれぞれの胸を支配するのだった。
正月―――。
起床時間は休日と同じであり、7時20分。
布団をたたみ歯磨きなどを済ませ点呼の用意をする。
その後朝食をとるといういつもの生活。
ただ違うのは、昼ごはんはおせち料理が出る。
しかも、普通の昼食にプラスされる形で。コンビニ弁当のような容器ではあるが、それでも満足感は倍増する。
「やっほー白飯だぁ!!」
「唐揚げまじうまッ」
拘置所でのご飯は基本的に麦飯。あったかい白飯なんてまずない。
こういう所でもシャバでのありがたさを感じられるのは嬉しい。
もちろん昼食で全部食べれない人もいるので、夕方までにゴミは出せばよかった。
そして昼食後に待ちに待ったお菓子タイムが来る。
お菓子を頬張りながら将棋を指すのが多分いちばん多い過ごし方だろう。
これが、拘置所での年末年始の過ごし方である。
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