第13話 初公判

 10日の勾留が終わり、さらに10日打たれると覚悟していた祐介に、起訴猶予の知らせが届いた。

 警察は決定的な証拠を挙げることができず、自供も取れなかったのでこれ以上はムダだと判断したようたった。



 その5日後、遂に初公判の日がやって来た。同じように裁判所に連行されるメンバーと一緒に繋がれ護送車で裁判所へ向かう。


 裏から入り、時間が来るまで留置場より遥かに狭いところで3人ずつほど入り待たされる。

 かなりの時間待たされるので、中にはマンガ本などが置いてあった。



 祐介の番が回ってきてついに法廷に入る。中はドラマなどで見た事のある風景が広がっていた。

 弁護人側の傍聴席には祐介の家族が座り、心配そうに見ていたが、祐介はその顔をマトモに見ることが出来なかった。


 その他にも傍聴人が数名いたようだが、そこに被害者やほの家族がいたのかは分からない。

 そうでなくてもほんの数名しか座っていなかったが、その中にはS警察署の刑事も座って見ていた。


 

 「それでは開廷いたします。被告人は前に」


 【被告人】と【被疑者】【容疑者】の違いを説明すると、被疑者や被告人は事件に対する犯人であろう人物の事であり、まだ犯人であるかどうかは確定していない。

 しかし起訴され裁判をかけられる状態となると、犯人がその人物だと確定し、被告人へと名称が変わる。


 裁判長にそう言われ、祐介は被告人席へと向かう。


 「被告人の名前と生年月日を教えてください」


 「熊谷祐介です。1983年12月8日です」


 「では今から貴方にかけられた被疑事件について検察が読み上げますので良く聞いていてください」


 そう言うと裁判官に向かって左側にいる検察官が立ち上がりファイルを取り出した。

 この検察官、調べをした検察官とは別の人物で、頭は禿げ上がり、ひょろひょろとしたなんとも頼りなさそうな人物で、その後の裁判でもテキパキと出来ず、気まずい雰囲気が流れていた。


 検察官は1人ばたばた【冒頭陳述】に入った。


 冒頭陳述とは、事件についてどのような事実を証明しようとしているのかを明らかにすることである。

 冒頭陳述の直前の時点で、裁判官が把握しているのは、起訴状とそれに対する被告人・弁護士の意見のみ。

 この冒頭陳述によって初めて検察がどうしたいのかがはっきりするのです。


 まずは起訴状朗読。

 

 「被告人は―――」


 起訴状の朗読が終わり、裁判官は再び口を開いた。


 「被告人、貴方には黙秘権があります。従って、答えたくない質問には答える必要はありません。また、最初から黙っておくこともできます。今検察官が読み上げた事実について、間違いないですか?」


 「間違いありません」


 「弁護人、何かありますか?」


 「しかるべく」


 「では―――」


 こうして初公判はものの10分ほどで終わった。


 初公判は争う争わないに関わらずだいたいがこの認否確認のみで終わる。

 こうして初公判は終わり、祐介は警察署へ戻った。



 警察署へ戻ると家族が面会をしてくれた。差し入れも入れてくれて祐介はとても感謝した。

 


 

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