第12話 メイドはお好き?

 その子は当時彼氏がいたらしいのだが祐介はその事は知らず付き合いたいと思っていたし、向こうからキスを求めてきたりしていたので向こうもその気なのだろうと思っていた。

 が、実際は交際までには至らず。


 この女の子実はメイドリラクゼーションという祐介の行きつけの店にアルバイトで入ってきた事で知り合った。

 その源氏名は【織花】

 茶髪の入った今どきの高校生。見た目ギャル。その子は当時はまだメディアに出ていなかった滝沢カレンに似ていた。


 1ヶ月ほど働いていたが辞めることになった。

 その事を知った祐介は大胆にもその店で携帯を取りだしメッセージを打ちそれを見せた。ちょうど織花がキーボードを弾いている時で、客やその他のメイドからは見えなかった。


 『 この後ヒマだったらカラオケに行かない?』


 「行きたぁい」


 織花は小さな声で呟いた。祐介は、再び携帯にメッセージを打ち込んだ。


 『 向かいのパチンコ店の前で待ってる』


 そして携帯番号を紙に書いて手渡した。

 このメイド店、もちろん基本的にメイドと客の連絡先交換は禁止されている。

 が、裏方さんと呼ばれている店長は


 「わからないようにやって」


 というなんともユルい店だった。その事もあり、祐介は過去にもほかのメイドさんと連絡先交換したことがあるし付き合ったこともあった。

 がそれは祐介に限ったことではなく、ほかの客も連絡先交換したりはしていたらしい。

 最も、別のイベントで会った時等らしいが。


 もちろん全てのメイドさんが連絡先を教えてくれるとは限らない。と言うか教えてくれないほうがほとんどだろう。

 運良く織花の連絡先を交換できた祐介は店が終わる頃会計を済まし外に出た。そして約束の場所で待つ。


 しばらくすると織花が小走りにタッタッタッと寄ってきた。


 「ごめんなさい。今から送別会やってくれるみたいで……また今度でも良い??」


 と、可愛い顔で見上げてくる。


 「分かった、じゃあまた連絡するね」


 と言ってその日はわかれた。



 それから連絡を取り合い、カラオケに行ったりゲームセンターに行ったりとデートを楽しんできた。

 何回目のデートだったか、車の中で話をしていると急に織花が祐介にハグをしてきた。


 「ど、どうしたん??」


 と、聞いても


 「んーん」


 と答えるばかり。


 それからは早かった。直ぐにキスに発展していった。体の関係はもう少し後。

 付き合っているかどうかは祐介には分からなかったが、少なくともお互い好きあっているんかなとは感じていた。


 その事は調べの最中でも感じられた。この関係がしばらく続いた頃、祐介はホストになった。織花の友達に店を紹介してもらった。


 つけた源氏名は【魅夜】

 織花と出会う前、例のメイド店で出会い付き合った女の子の源氏名からとったものだった。

 織花はこれが気に入らなかったらしくこの当時ものすごく嫉妬していたと言っていたと刑事から聞いた。

 本人にその素振りは見受けられなかったのだが。




 半年ほどして祐介はホストを辞めた。ある程度お金も貯まり、ずっとやりたかったアパレルの仕事を見つけたからだ。

 そして互いに距離が遠かった事もあり、少しずつ連絡を取り合う回数が減り、疎遠となっていった。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る