第11話 誤認逮捕
S警察署へ移送された祐介。そこはかなり古く、作りも特殊だった。
オヤジのいる作業台を前にして扇形に檻が作られている。その作りのせいで部屋は狭かった。
出入口がまず狭く、扉1つ分しかない。そこから奥に進むに連れて広くなっているのだが、部屋の広さはトイレを含めても3畳半ほど。
そしてそこには強面の男が1人入っていた。
「お兄ちゃん何したの??」
お決まりのように聞いてきた。祐介はやはりホントのことを言うべきではないと判断し、ひったくりをしたと述べた。しかし、この地域でやってはいないと、そこはしっかり告げた。
そんな話をしていると、さっそく調べに呼ばれた。
留置場を出て入った部屋にはたくさんの刑事達が仕事に追われていた。その横を突っ切り奥に行くとC警察署よりも狭い取調室へ入れられた。
「考えは変わったかな?」
「いや、ほんとに自分じゃないです」
「ふーん。まぁいいや、じゃあこれ」
と出されたのは逮捕状。そして、再び取調が開始された。
「ほんとにこれでいいんだな?」
刑事が念を押してくる。結局作った調書は、この事件に対して身に覚えがなく自分ではありませんという内容。
そしてこれを検察に送り再び裁判所で拘留請求をする。
この日の調べが終わった時、弁護士が面会に来てくれた。
C警察署にいたときからちょくちょくと面会に来てくれた。中国出身であるが日本語は堪能でまっすぐな人柄。
今回の件は身に覚えがないと伝えると、
「これから毎日追求があると思うけど決して屈したらダメだよ。じゃないとさらに刑が重くなるからね」
「わかりました」
「やった事は素直に反省しないといけないけどやってない事までかぶる必要はないからね」
この言葉にどれたけ救われただろうか。この言葉があったからこそ、この誤認逮捕の件は乗り越えられたと出所した今でも祐介は思っている。
祐介の10日拘留が始まった。
「この日のこと覚えてる??待ち合わせでここに行ったんだろ?」
「はい確か、その日は女の子とカラオケに行く予定で迎えに行ったと思います。そして地元まで戻ってきて他の2人と合流した日だったんじゃ、ないかと思います」
「それ本当にかな??」
「その子を迎えに行ったのであればそうだったと思います」
「なんでそう思う??」
「朝から迎えに行ったのはその日くらいだったんじゃないかなと思うからです」
「もっかい考えてみて、よーく思い出して」
それから2時間ほど2人とも一言も発しなかった。
「ほんとにその日その時間に会ったんか?」
と刑事が口を開いた。
「そうだと思います」
と祐介は言った。
それから来る日も来る日も似たような問答が、繰り返された。が刑事も痺れを切らし、別のヒントを少しずつ与えるようになっていた。
そのヒントから、祐介は思い違いをしていた事に気づいた。そのヒントとは、祐介が呟いていたTwitter。
そのTwitterに祐介は、
「連絡しても繋がらない。まだ寝とるな」
「おーい早く起きろー」
などと呟いていた。
そして1番の勘違いは、その日はカラオケに行く約束だったのではなく、2人であるテーマパークに行く予定だったということ。
日にち自体全く違っていたのだ。
その事を刑事に告げると、
「ほらウソやったやないか」
と嘘つき呼ばわり。その日自体2年以上も前の事なのにどの日が何をした日なんかヒントもなしにはっきり分かるはずもない。
なのにこの言われよう。
(だったらお前も2年前の今日何してたか言ってみろ)
と祐介は心の中で思った。
そしてこの日、午前中には会うことが出来ずヒマを持て余していた祐介はドライブがてら車を適当に走らせていた事を思い出した。
道順は覚えていない。だって適当に走っていたのだから。
結局この日は帰ろうと車を走らせていた所にやっと連絡が来たので再度迎えに行き合流したのだった。
その女の子は18歳だったこともあり、そっちの方で逮捕されるんじゃないかと少し焦った事もあった。
現に刑事はその子の所に証言をもらいに行っていた事も後で聞かされる。
その時その女の子は、
「体の関係はありません」
と言ってくれたようだが、実際にはあった。
祐介が不利にならないようかばってくれたようだ。
そしてそれからも刑事の猛攻は続いた。
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