第5話 検事調べと10日拘留
検察室へ連行された祐介。そこには1人の年配の検事と、若くて可愛い見習い(?)検事がいた。机を挟み対面に座らされる。すると椅子に手錠から繋がっている紐が括り付けられた。手錠を外され、外された手錠は椅子にガチャリ、とはめられてしまった。
準備が出来たのか、見習い検事が机を挟んで横、祐介から見て右手側に座った。
「じゃあ宜しくお願いします。貴方には黙秘権があります。言いたくないことは言わなくていいからね」
と優しい口調で検事は言った。
調べを担当する検事と、裁判の時公判を担当する検事は違う場合がある。地方検察庁や地方裁判所等では一緒の人が担当する事もあるが、都心部など大きい所になると事件の数もそれだけ多くなり、分担することも多い。
この日調べを担当する検事は、関西弁が少し混じった、少し気さくな検事だった。
「宜しくお願いします」
お互いに挨拶を交わし、話し始める。
「まず初めに、貴方には黙秘権があります。これは警察でも聞いたね?それと、ここの会話は録音、録画をしてますので発言には気をつけてください。さて、今回貴方が逮捕された件についてこれは事実ですか?」
「はい間違いありません」
「では、警察で調書とってもらったと思うけどこの通りで調書作っても問題ないね?」
「はい」
そこからは警察署で話した内容をもう一度、そして簡潔に話し、それが文面に起こされた。そして同じように名前を書き、左手の人差し指で拇印を押し、終わった。
この検事調べは刑事に話したことの確認が主で、基本的にはすぐ終わる。刑事が印刷した調書を見ながら互いに話し、新たに検察官が調書を作成。その両方を裁判書類として仕上げそれを元に裁判は進められるのだ。
待合室(?)の檻に戻り、また数十分の時間が流れる。調べはものの10分程度で終わるのに、待つ時間は一時間以上。しかも夏もすぐそこなのに寒い。みんな震えながら耐えるしかなかった。
留置場に戻るともう既に昼。食べ終えている人さえいた。不思議なもので、ほとんど動かなくても腹は減ってくる。読書くらいしか楽しみがない分、祐介は夢中で弁当を食べ終えた。
昼からの調べも終わり、夕食を食べ終えゆっくりしていると、この日の担当のおやじが寄ってきて言った。
「明日は裁判所に行くから朝ごはん食べたらトイレとか済ましておいた方がいいよ」
「あ、はいわかりました」
【裁判所】
文字通り、犯罪を犯した人間を裁く場所である。もちろんそれだけでなく、離婚調停等の民事裁判も行ったりする。
なぜ祐介がこの時裁判所に行くかと言うと、裁判を受けるためではない。正確には『 まだ』ではあるが。
検事は容疑者を調べたあと、まだ色々と調べねばならない事がある、調べる余地があると判断した時、裁判所に【この容疑者をさらに調べたいので拘留する許可を下さい】と申請を出す。そして実際裁判官の資格を持つ人物が容疑者と対峙し、事実確認を行い拘留して調べを続行するべきかどうか決断する為に、裁判所に向かうのだ。
が、ここで許可が降りない事など基本的には無く、ほとんどが拘留を打たれる。そしてその拘留期間は最大で10日間、それを2回まで申請する事ができる。誰もがだいたい【10日】打たれることが多いため【10日拘留】を一区切りとする事が多かった。
裁判所に行く時も基本的に検察庁に行くのとなんら変わらなかった。数人で繋がれ、護送車で裁判所へ向かう。高速に乗り揺られる事およそ一時間。
裁判所は都心部にあり、とても大きい。裏に専用の出入口があり、そこから一斉に入る。そこで順番に呼ばれるので1人ずつ入っていく。
祐介が呼ばれ連れていかれると、部屋に入れられ椅子に座らされる。
そこで手錠は外されるが繋がっている紐は椅子に結ばれ、逃げることは出来ない。
そして裁判官が向かいのドアから現れる。裁判官はスーツに身を包み、テーブルを挟んで座る。そしてこう切り出した。
「それでは、貴方の氏名年齢等と事実確認を行って行きます。貴方の氏名と年齢を教えてください」
「熊谷祐介、36です」
「本籍地と住所は?」
それから淡々と本人確認を行っていく。
「それでは事実確認を行っていきます、あなたにかけられた容疑と、調書の内容に間違いはありませんか?」
「間違いありません」
「分かりました。それでは結構です」
というようなやり取りをし、ものの五分ほどで終わった。
それからはまた手錠をされ、護送車で帰ったのだった。この時の調べにより、裁判所は容疑者を拘留すべきかどうかを判断する。
基本拘留が認められないことはほとんどないのだが。
警察署に帰ってきた祐介。待っていたのは午前中の調べ。と言っても昼まであまり時間がなかった為、一時間程度しか無かった。だが午後からはまたみっちりあり、閉鎖空間ということもあり精神的に疲弊していく。容疑を否認している人ならなおさらだ。
何も出来ずただ座っているだけというのも不思議と疲れる。暇なのがこんなにも苦痛なものだとは、祐介は正直思っていなかった。
そしてこの日の調べも終わり、一日が終わる。
次の日、朝一で知らせが届いた。内容は、【10日拘留を認める】というものだった。
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